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戦国異伝供書

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第三十話 九州攻めに向けてその十一

「左様か」
「はい、そうした名です」
「神に仕える者達の軍か」
「そうなのですが」
「何かあるか」
「その文献を献上して宜しいでしょうか」
「うむ」
 信長は利休によしと答えた。
「それではな」
「では今すぐにです」
「その書をじゃな」
「お渡しします」
「ではな」
「どうも私もまた充分に読んでいませぬが」
 信長にこうも述べた。
「これがです」
「それでもか」
「わかる限りを読みましたが」
 利休自身がというのだ。
「どうにもです」
「伴天連の僧達の様か」
「より酷いです」
「そうなのか」
「本朝では考えもしなかった様なことが」
 当然利休もだ、彼も考え様もなかったことがだったのだ。
「多々ありました」
「恐ろしいものがあるか」
「魔王よりもです」
 天下を乱すという彼等よりもというのだ。
「遥かに恐ろしい」
「そうしたものか」
「ですから」
「読む時はじゃな」
「ご用心を」
「あれか。異朝の書には信じられぬことが多々書かれておる」 
 信長は明のことを話した。
「古きよりな」
「史記等で、ですな」
「四十万の兵を生き埋めにしただの人豚だのな」
「確かに異朝にはそうした話もありますな」
「あの様なことか」
「そこに何か狂ったものすらです」
「あるのは」
「そのことを感じました」
 十字軍について書かれた書を読んでというのだ。
「それで、です」
「わしもじゃな」
「読まれる時はです」
「覚悟してか」
「そうされて下さい」
「わかった、ではな」
 信長は頷きその書を受け取った、そして読んでだった。
 後日再び利休の茶を飲んだ、その時に彼に述べた。
「読んだぞ」
「して思われたことは」
「冥府魔道じゃな」
 信長は利休に真剣な顔で述べた。
「悪鬼羅刹、外道の所業じゃ」
「左様ですな」
「坊主が子供を騙して奴婢として売り飛ばすとはな」
「そうしたこともありましたし」
「同じ耶蘇教の者でも殺すとはな」
「恐ろしいことですな」
「ましてや人を喰らうなぞ」
 信長は十字軍のその所業についても述べた。
「おぞましきことじゃ」
「異朝にもそうした話はありますが」
「そのことはわしも知っておるが」
「それでもですな」
「異朝で人を喰らうなぞ気ぶれか相当に餓えた時じゃ」
「そうでもないとですな」
「人は喰わぬ」
「十字軍の様に喰らうことは」
「なかった筈じゃ、そして特に酷いのはな」
 信長は十字軍の所業でも特にこう言った。 
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