戦国異伝供書
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第三十話 九州攻めに向けてその一
第三十話 九州攻めに向けて
信長は九州の動きを逐一聞いていた、その中で彼は時折眉を顰めさせてそうして家臣達に言うのだった。
「島津家が強過ぎる」
「ですな、薩摩と大隅だけでなくです」
「日向に肥後もです」
「そこから筑後や豊後にも進出し」
「そしてです」
「九州も統一せんとしている」
「その様な勢いですな」
「大友、龍造寺が負け過ぎた」
これは信長が予想していないことだった。
「まさかあそこまでとはな」
「両家共にです」
竹中が信長に言ってきた。
「これ以上はないまでに負けました」
「そうじゃな」
「はい、まずは大友家ですが」
竹中はこの家のことから話した。
「耳川で散々に敗れました」
「誘い出されて囲まれてな」
「そうしてです」
「多くの将兵を失った」
「それで今や大友家は」
かつてはこの家が九州の覇者になると言われ誰もがそう思っていたがだ。
「これ以上はないまでに傾き」
「そうしてな」
「はい、立花殿と高橋殿に」
立花道雪と高橋紹運、二人の名将達にというのだ。
「二人のお子である」
「高橋家から立花家に入った者がおるな」
「あの方と合わせて三人の方で、です」
「かろうじて持ち堪えておるな」
「そうした状況です」
「危ういな」
「かなり、そして龍造寺家も」
この家もというのだ。
「沖田畷の戦において」
「やはり誘い出されてな」
「囲まれて」
そうなってというのだ。
「そのうえで、です」
「散々に敗れたな」
「しかも総大将でありご当主殿まで」
龍造寺隆信、彼もというのだ。
「討ち取られ」
「多くの将兵を失ったうえでな」
「そこまで散々に敗れたので」
「あの家はさらに傾いておるな」
「大友家以上に」
「筆頭家老の鍋島が支えておるな」
「かろうじて」
そうした状況だというのだ。
「あの家も」
「それではな」
「最早大友家も龍造寺家も島津家の敵ではありませぬ」
到底というのだ。
「例え両家が手を結んでも」
「そうしてもな」
「あの家には勝てませぬ」
「そうじゃな、ではな」
「あの家に勝てるのは」
まさにというのだ。
「九州ではいなくなっています」
「島津家が九州を手に入れることは間違いないな」
「時間の問題です」
「殿、若しもです」
今度は生駒が言ってきた。
[島津家が九州を手に入れますと」
「力が大きくなり過ぎる」
「左様ですな」
「あの家はそこで止まる」
キュ州の統一、それだけではというのだ。
「わしの天下にも従う」
「そうなりますな」
「うむ、しかしな」
それでもというのだ。
「わしはそれは許さぬ」
「一つの家が大きくなり過ぎることは」
「だからじゃ」
それ故にというのだ。
「わしはじゃ」
「島津家の九州統一は許しませぬな」
「他の家もそうであったな」
「はい、どの家もです」
「残すがな」
それでもというのだ。
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