ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第11話:Recon Base Ruins
カメリーオがいるという森の前線基地へ来たルインは辺りを見回して表情を顰めた。
自分がカメリーオの相手をすることにしたのは個人的感情がある。
新人時代に新しいエネルギー体の実験をしたいからとそれの実験台にされたのだ。
あれは例えどれだけの年月を経ても忘れはしない。
カメリーオが差し出したエネルゲン水晶から抽出された透き通るような青いエネルギー体とは全く違う血を思わせる赤黒いエネルギー体。
それを飲まされ、稼働不能状態に陥ってエックス達に心配をかけてしまった。
優れた戦闘用であり、技術者であるカメリーオは以前からマッドサイエンティストな人格が問題視されており、因みに新人時代のエックスもカメリーオの被害に遭ってしまったらしい。
とにかくカメリーオはイレギュラースレスレの存在で何時イレギュラー化しても可笑しくない…既にイレギュラー化していたかもしれないが。
とにかくジャングルの中は敵だらけ、カメリーオの性格を考えれば罠だらけなのは間違いない。
メカニロイドとライドアーマーの軍勢でも特に厄介なのはライドアーマーだろう。
あの強固な装甲は破壊にやたら時間がかかる。
「まあ、そうは言ってられないんだけどね」
ルインはZXアーマーからパワー重視のFXアーマーに換装する。
堅牢な装甲を持つタイプの敵にはこのアーマーが一番効率がいい。
二丁のナックルバスターを構えると突撃するとメカニロイドがルインに襲い掛かってくる。
「メガトンクラッシュ!!」
ナックルバスターでのパンチと火炎弾をメットールに叩き込むとメットールは炎に包まれながら吹き飛ばされ、爆散した。
メットールのヘルメットは大抵の攻撃を防ぐがそれを無視して攻撃出来る。
敵の防御を無視して有効なダメージを与えられるFXアーマーはこういう時に便利だ。
「エディットバスター!!」
丸太を飛ばしてくるメカニロイドやアメンボ型メカニロイドもナックルバスターのショットで破壊し、向かってくるライドアーマーにもメガトンクラッシュを喰らわせ、僅かに吹き飛ばすと追撃で二丁のナックルバスターからショットを連射する。
そして耐久力を超えたダメージを受けたライドアーマーが爆散するのを確認して、更に奥に向かった。
途中で岩に擬態したレプリロイドやナウマンダーの工場地帯で見た緑色のレプリロイドもいたが、メガトンクラッシュで防御も装甲も無視して粉砕する。
途中でFXアーマーからHXアーマーに換装するのと同時にバーニアを展開し、エアダッシュと壁蹴りを駆使して岩壁を一気に越えた。
そこにはアメンボ型メカニロイドやライドアーマーが配置されており、近くにあるライドアーマーに乗り込むと汚泥を突き進む。
途中で妨害してくるメカニロイドや敵のライドアーマーはライドアーマーのパンチで沈めていくが、慣れない汚泥での操縦でライドアーマーを乱暴に扱い過ぎて敵の攻撃を受け続けたために壊れてしまった。
しかもライドアーマーが爆発した際、敵にぶつけていた。
確かに倒す為には合理的ではあるのだが……。
「ふう、危なかった~。あのライドアーマー、思ったより脆いね」
……全く悪びれていないと言うより気にしていない。
ルインは密林の前線基地のボスの情報を再び検索する。
幽林の妖撃手 スティング・カメリーオ
元第9レンジャー部隊副隊長であり、如何なる場所にも適応可能な保護色能力を持つ部隊きっての実力者だが、任務遂行のためには手段を選ばず、その行き過ぎた合理主義思想から卑怯者扱いを受けていた。
優秀な技術者でもあるのだが、マッドサイエンティストな性格もあり、却って嫌われていた。
シグマにその実力を純粋に買われ、協力を持ちかけられた事から、シグマの反乱軍へ身を投じる事となり、密林の前線基地の警備を担当している。
「カメリーオの電磁迷彩か…厄介だな……」
HXアーマーからZXアーマーに換装し、ZXバスターを構えながら奥へと進むと扉が開かれる。
そこにはスティング・カメリーオが嫌みたらしい笑みを浮かべていた。
「やあ、カメリーオ。久しぶりだね」
嫌悪感を隠さずに言うルインに対してカメリーオは陰湿な笑い声をあげる。
「にににに…そうだなあ。最後に会ったのはあの実験の時だったな」
「どうして君達はシグマに与するのか教えてもらえるかな?」
「さーな、中には人質に取られて仕方なくってのもいるかもしれねえがな。まあ俺としてはイレギュラーだろうがなんだろうが、のし上がれりゃそれでいいしな。そうなりゃ実験もやりたい放題だ」
「イレギュラーだね…正真正銘の…スティング・カメリーオ。あなたをイレギュラーとして処分します。」
バスターを構えてチャージショットを放ち、チャージショットがカメリーオを捉えたかに見えたが…。
「やった…なわけないよね!!」
背後に悪寒を感じて、飛び上がると緑色のレーザーが床に当たる。
「ににに…どうしたんだあ?俺を処分するんだろ?」
「不意を突いたつもりだったんだけど…あれを簡単に避けるなんて」
完全に不意を突いた一撃であったのにも関わらず、回避した上に反撃してきたカメリーオにルインは敵ながら感心してしまった。
「にににに…お楽しみはこれからだぜ」
カメリーオは電磁迷彩を使って姿を隠し、ルインはバスターからセイバーに切り替えて構える。
「(どこ…?どこから仕掛けてくるの…?)」
辺りを見回すルインだが、姿形も熱源すらも探知出来ない上に視界も狭いためにここはカメリーオの独壇場だ。
「(落ち着いて、ゼロに昔言われたように目やデータに頼っちゃ駄目……)」
全ての感覚を限界まで引き上げていき、僅かな物音も聞き逃さないようにする。
「っ………そこだ!!」
右斜め前方からした微かな音を頼りにチャージセイバーを叩き込む。
「なっ!?」
ルインが叩き斬ったのは電磁迷彩機能を装備させた鳥型メカニロイドだった。
「ににに!!甘えぜルイン!!」
ルインの背後に来ていたカメリーオのレーザーがセイバーを吹き飛ばし、カメリーオの舌がルインの腕に絡み付いて、壁に叩きつけられる。
「くっ…まさか、メカニロイドに電磁迷彩を搭載していたなんて…」
「にに…武器は使い物にならなくなっちまったな。それでどうやって戦うつもりだ?」
貫通力の高いレーザーを至近距離で受けたルインのセイバーは内部の機械が露出しており、切り替える機能は勿論、セイバーやバスターも機能しない。
「(確かにこれじゃあセイバーやバスターは使い物にならない…だけどどうすれば…この狭い空間じゃあHXアーマーもFXアーマーも使えない。)」
この狭い空間では例え換装したとしてもHXアーマーの機動力もFXアーマーのパワー性能を充分に活かせない。
特にプラズマサイクロン等の大技は自分を傷付けてしまうためにルインが素手で戦おうと決心した時。
『ルイン!!』
突然エイリアからルインに通信が入った。
「エイリア?」
『ゼロが入手したアーマー解除プログラムを転送するわ!!』
エイリアによって転送された解除プログラムチップを組み込むと、ヘッドパーツのクリスタルが光り、アーマーが新しく解除された。
直ぐさま新しいアーマーに換装し、光が収まった時には紫を基調としたアーマーを身に纏って仮面とマフラーのような装備を身につけたルインがいた。
「ににに…そいつが噂で聞いたアーマー換装システムか…」
油断なくルインを睨みつけ、再び電磁迷彩を使う。
ルインは姿を消したカメリーオを睨むと、このアーマーの能力であるレーダースコープを使う。
これを使えば例えどれ程高性能な電磁迷彩だろうと敵の位置を把握出来る。
「そこだ!!十字手裏剣!!」
PXアーマーのチャージショットとも言うべき大型手裏剣をアームパーツから出現させると投擲し、十字手裏剣は孤を描いて狙った場所へ向かっていく。
「にっ!?」
それは的確にカメリーオの舌を斬り落とした。
「て、てめえ…」
「……」
ルインは血走った目を向けるカメリーオに無言でアーマーの電磁迷彩を使い、景色と同化する。
「っ!?」
電磁迷彩を使ったルインにカメリーオは驚愕して辺りを見回すが、カメリーオの電磁迷彩同様に姿形も熱源すらも探知出来ない。
新しいアーマーのフットパーツの能力、サイレントの恩恵によって物音すらしない。
高いステルス性能を持つ新アーマーのPXアーマーはカメリーオの能力を上回り、四方八方からカメリーオに向けてクナイが降り注ぐ。
「にに…っ、死んでたまるかよ!!」
致命傷を避けながら離脱しようとするカメリーオを追い掛けようとするが、メカニロイドと予め仕掛けていたのか天井から針が降り注いで妨害してくる。
ルインは舌打ちしながら、降り注ぐ針をかわしながらメカニロイドにクナイを投擲する。
「くそ!!俺としたことが…!!」
カメリーオは脱出用の隠し通路に飛び込んで地下の洞窟へ向かう。
このまま逃げて傭兵かブローカーでも始めるか…。
ここまで失敗したとなるとエックス達を倒してもシグマに粛清されかねないからだ。
そんなことを考えながら隠し通路から抜けた時だった。
後ろから両手両足を撃ち抜かれ、何が起こったか分からないまま尾も吹き飛ばされた。
「おいおい、今まで散々でかい口を叩いておきながらこのザマかカメリーオ?」
右肩のキャノン砲をカメリーオに向けたままVAVAはその無様な姿を嘲笑う。
「あ、あんた…」
「お前の悪足掻きも楽しませてもらったがね。そろそろ飽きてきたぜ…ほらよ」
キャノン砲から放たれたフロントランナーの砲弾がカメリーオの頭部を吹き飛ばす。
「ギ、ガギャ、ギャ!!」
「お?まだ生きている上に少しだけ会話する能力が残ってんのか」
頭部を吹き飛ばされたのにも関わらず、生きており、その上会話をする能力がまだ残っているというカメリーオの生命力に心底感心した。
「頭を吹き飛ばされた気分はどうだカメリーオ?風穴が空いてすっきりしただろう?」
「ギ…ギギャギャ…」
VAVAは嘲笑いながらカメリーオの脇腹を蹴り上げ、木に叩きつける。
「さて…」
VAVAは僅かに痙攣するカメリーオの元まで行くと、カメリーオの腹部を引き裂いた。
「ギャヒ!?ひヒひひひ…」
どうやら今ので電子頭脳がイカれたらしい。
カメリーオの発狂などVAVAにとってはどうでもいいのか、気にせずに引き裂いた腹部に手を突っ込み電磁迷彩の機能を引っこ抜いた。
「さて、目当ての物は手に入った。お前にはもう用はない。死に果てろカメリーオ…」
脚部の兵装・バンピティブームをカメリーオに放ち、放たれたボムは爆発してカメリーオを鉄屑にした。
「VAVA!!」
メカニロイドを片付け、カメリーオを追い掛けてきたルインがVAVAを睨み据える。
「よう、ルイン。毎回毎回姿が変わるが、自分を着せ替え人形にする趣味でもあるのか?」
「君こそ毎回毎回嫌みったらしい奴だね君は…何ならここで殺り合う?」
「くはっ…面白いじゃねえか……だが、俺にはまだしなくてはならないことがある。機が熟した時、相手をしてやる。エックスやゼロともな。今回はこれで失礼させてもらうぜ。次に会う時が楽しみだ。その時にお前達と決着を付けるとしよう」
イーグリードのデータを参考にして造られたスピードデビルの恩恵だろうか…?
イレギュラーハンター最速を誇るクワンガーと互角かそれ以上の速度でこの場を後にした。
ルインはカメリーオの残骸と奇跡的に無事だったDNAデータを回収し、前線基地を後にしながら空を見上げると、雲一つない眩しいばかりに太陽が輝き、まるでエックスのアーマーのような蒼い空が広がっていた。
決着の時が近づいているのをルインは何となく感じていた。
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