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おぢばにおかえり

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第四十九話 合格してからその十

 それなのにです、その歌のことを言ってきたのでびっくりしました。
「阿波野君が」
「前詰所で歌ってたじゃないですか」
「それって確か」
 そう言われると思い当たるふしがありました、ですがそれでもどうも違うと思って阿波野君に言いました。
「あれは十二下りじゃない」
「はい、よろづよ八首から歌われてましたよね」
「ええ、九月位にね」
 詰所の一回の広い畳のお部屋で歌いました、このことは本当のことです。
「子供達に教える為に」
「日曜でしたね」
「ええ、ただあれは」
「歌ですよね」
「歌は歌でも」
 それでもです。
「また違うでしょ」
「アイドルや歌手の曲じゃないですか」
「だからね」
 それで、です。
「そういうのじゃないですよ」
「そうですか?」
「そう思うけれど」
「歌は歌でも」
 それでもです。
「それはまた別でしょ」
「別じゃないですよ」
 阿波野君はきっぱりと言ってきました。
「全然」
「そうかしら」
「はい、それで僕思ったんですよ」
 笑いながらでしたがかなり真剣な言葉でした。
「先輩歌お上手だって、声だって」
「いいっていうの」
「凄く奇麗で可愛くて」
「可愛いはないでしょ」
「可愛いですよ、前から言ってるじゃないですか」
「声優さん出来るって?」
「そこまで可愛いですから」
 本気での言葉なのがわかりました。 
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