戦国異伝供書
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第二十八話 天下の政その七
「それでは」
「その様にな。お主にとっては不本意だがな」
「不本意かと言われますと」
「そうであるな」
「私がこの国に来た理由はです」
フロイスは信長に自分の考えを素直に述べた。
「神の御教えを広める為で」
「やはりそうじゃな」
「それで来ましたので」
それ故にというのだ。
「ですから」
「それはわかる、しかしな」
「民を奴隷にせぬ」
「断じてな、その為にじゃ」
「我等の布教も自由な移動も」
「防ぐ、商いの相手の者達に布教してもじゃ」
そうして日本人の切支丹達を増やそうとしてもというのだ。
「その場合もじゃ」
「追放ですな」
「左様、そうした者は二度とじゃ」
「この国に来られぬ」
「そうする、わかったな」
「それでは」
「ただお主達自体はいてよくな」
耶蘇教の者達もというのだ。
「教会も置いてよい、そこでじゃ」
「我等が神に祈ることは」
「存分にせよ」
このことは許すというのだ。
「それはな」
「では」
「ではその様に」
「それでじゃが」
信長はさらに言った。
「話に聞いたが南蛮はエスパニアやポルトガルだけではないな」
「他にも国があるとですか」
「聞いておるが」
「はい、神聖ローマ帝国にフランスに」
フロイスも素直に述べた、欧州の他の国々のことを。
「イングランド、教皇領にヴェネツィア、フィレツェ等があります」
「多くの国があるのう」
「そうなっています」
「その国々のことを教えてくれるか」
信長はフロイスにこう申し出た。
「そうしてくれるか」
「欧州の全ての国々のことをですか」
「お主が知っている限りのな」
こう言うのだった。
「よいか」
「はい、それでは」
フロイスは信長に応え欧州の国々のことを話した、そしてそうした話も聞いて信長はフロイスにあらためて話した。
「この礼はする」
「左様ですか」
「お主が悪しきことをせぬ限りはな」
「この国にですか」
「置く、そして布教をせねばな」
このことは断じてというがだった。
「国の中を見てもよい」
「そのことも許して頂けますか」
「わしが許す」
信長自らの言葉だった。
「だからな」
「それで、ですか」
「わしにこれからもじゃ」
「欧州のことをですか」
「教えてもらう、よいな」
「それでは」
フロイスも応えてだ、信長に以後も欧州のことを伝えていった。そうして信長は欧州のことにも通じていった。
そうしてだ、家臣達にもこのことを話して言うのだった。
「欧州はまさにじゃ」
「殿が話された通りにですな」
「乱世ですな」
「むしろ本朝以上に」
「そうなっていますな」
「左様じゃ」
こう話すのだった。
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