| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

決着の裏で

「ん?おぉ!居なくなっとった偵察機が戻って来たのじゃ!……しかし、どこに行っておったのかのぅ」

「口調が爺臭ぇと思ったら、本格的に耄碌してやがんのか?利根」

 鎮守府へと引き揚げる最中、提督が不機嫌そうに唸る。

「そんな訳ではないのじゃ!それに、こやつさっきまで飛んでおったようじゃ」

「どれ?」

 触れてみると、確かにエンジン部分が熱い。その上、乗り込んでいた妖精さんが疲労困憊という顔をしてへたり込んでいる。

『darling、艦載機が!』

「あぁ、帰ってきたってんだろ?」

『……知ってたノ?』

「何となく察しは着いた。どうやら、俺達ゃあの性悪狐に弄ばれたらしい」

 ブルネイ艦隊の艦載機が全て消え失せるという怪現象。その原因はどうやら、あのネームレベルではなくニライカナイ艦隊の艦娘にあるらしい。

「こりゃあ是非とも、ウチにご招待してお話を聞かなきゃなぁ?」

「提督、お誂え向きの通信です」

 電文ではなく、通信。それは、『もう通信を妨害する存在は排除された』という口にされないメッセージだろう。

「内容は?」

「ニライカナイ艦隊全員の寄港要請です。」

「……そうか。なら、こう返してやれ」

“此方にも用がある、財布を握り締めて心して来い”ってな。

  


「さてと、そうと決まればウチも忙しくなるな……大淀!ウチに通信を繋げ」

「了解です」

『……提督?まさか緊急事態ですか?』

 聞こえてきたのは鳳翔の声。主力艦隊が出払っている時に留守を預けられる、数少ない人材の一人だ。

「あぁ、それも飛びっきりのな」

 通信機越しに緊張が走るのが解る。鳳翔もゴクリ、と生唾を飲み込む。

『……伺いましょう』

「作戦完了、帰投する。その際、ニライカナイ艦隊も同行。これを全力で饗応する……支度を頼む」

 途端、通信機越しにクスクスと笑い声が漏れる。鳳翔のツボにクリティカルヒットしたらしい。

『成る程……それは大変ですね。間宮さんや大鯨ちゃん達にも声を掛けておきますね?』

「あぁ。他にも手空きの連中には手伝わせろ。支払いはニライカナイ艦隊の連中にツケる、金に糸目は付けずにもてなしてやれ」

『ふふ、悪いお人』

「ダーティな男は嫌いか?」

『いいえ、それでこそ提督です。では祝勝会のじゅんびをして、お待ちしてますね?』

「あぁ、任せた」

 通信を切る。ふぅ……と息を吐き出した所で大淀が話しかけてくる。

「提督、ニライカナイ艦隊から再び通信が入っておりました」

「内容は?」

「『Bar Admiral』のキャパを知りたいそうです」

「何人入れるか?って事か。30人位までなら何とか入るが」

「では、そのように」

 大淀がニライカナイ艦隊に返信する為に通信室に向かう。さてと、後は……





「あ~、『ビッグボス』より『ビターメロン』。『ビッグボス』より『ビターメロン』応答されたし」

『こちらビターメロンでち。何か用でちか?』

「おま、だからその口癖は止めろって……。折角暗号使ってんのに口調で誰だかバレるだろが」

『今更バレたってどって事ないでち。ブルネイの王家にも繋がりある人に手出すバカはあんまりいないでち』

 全然いないって訳じゃない所が問題なんだよなぁ……なんてぼやきはともかく。

「ニライカナイの連中はウチに向かってるのか?」

『でち。でも誰かを待ってるみたいで、ゆっくり進んでるでち』

「ふ~ん……まぁ恐らくはあの性悪狐がまた何か画策してんだろ。それより、『例の物』は回収したか?」

『勿論でち。2週間の休暇と特別ボーナス、しっかりゲットしてきたでちよ』

「おま……そこはリバースド・ナインの死骸って言えよ」

『死骸って言うよりもボーナスの方が嬉しいでち』

 そりゃそうかもしれんが、死体がボーナスに見えるのはどうかと思う。

『それと、もう1隻も回収したでち』

「もう1隻?どういう事だ」

『リバースド・ナインが沈んだ少し後で、同じ地点から沈んできたでち。なんか此方の方をニライカナイの連中は狙ってたみたいでち』

「成る程……奴の不死身のカラクリはそれか」

 リバースド・ナイン不死身の秘密。何かしらのカラクリがあるとは睨んでいたが、まさかの操り人形だったとはな。そりゃ替えも利く訳だぜクソッタレが。

「よくやった、特別ボーナスも付けてやる」

『本当でちか!?なら、本土で温泉旅行がいいでち!』

「おう任せろ。旅館も高級な所を抑えてやる」

『了解でち!よっしゃ野郎共引き揚げるでちよ!』

『だからぁ、イク達は野郎じゃないのね~』

『そうだよ~、それに見つからないように行かないとダメだよぉ』

『だったら急いでコッソリ進むでち!』

『だからどっちなのよそれは!』

 無線の向こう側からぎゃあぎゃあと言い争う声が聞こえる。やれやれ、見た目通りにガキかあいつらは……。

「折角の希少なサンプルだ、回収しないなんて勿体ねぇ」

 こりゃあ淫乱ピンクが狂喜乱舞するな。まぁ、俺も利用させてもらうさ、存分にな……ククククク、今から楽しみだぜ。

 
 

 
後書き
『ビターメロン』は日本語で苦瓜の事でち(* ̄∇ ̄*)

一体誰の事なんだー(棒読み) 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧