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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica31無限書庫の冒険~Question~

†††Sideヴィヴィオ†††

一般人の立ち入りが許可制の未整理区画という、無限書庫の本当の姿とも言える区画へとやって来た。無重力空間だから体がフワリと浮く。真っ先に聞こえてきたのは「うわっ!?」とか「ひゃあ!?」とか「おおう!?」っていう戸惑いの声。見れば番長さんが後ろ向きに連続宙返り中。あれは目が回りそう。

「わわっ、あわわっ」

「大丈夫ですか、ミウラさん?」

わたしは上手く体勢を整えられてないミウラさんを横抱きで助ける。ちなみに番長は、「どうぞ私に掴って下さい」イクスに助けられてた。ヴィクターさんとミカヤさんは、体幹バランスが良いようで助けは要らないみたい。

「空を飛び慣れてない子にとって無重力での活動は、ちょうキツイかもしれへんな~」

「ですわね・・・」

「私もなんとか体勢を維持していられる状態です」

ヴィクターさんとミカヤさん、よく見れば腕や足の振りで体勢を微調整してる。そんなお2人に「私たちがフォローします!」ってルールーとリヴィが側に寄った。

「では番長さんは引き続き私が付き添いますね♪」

「おう。世話んなるぜ、イクス!」

「イクスと番長は問題なし・・・。他に慣れてない方は・・・」

エルスさんは大丈夫かな?って見てみると、「なんだよメガネ。お前は余裕そうじゃねぇか」ってつまらなさそうに番長が言ったとおり、エルスさんはヴィクターさん達に比べてとても余裕みたい。

「飛行魔法は習得済みですので! この程度の環境なら問題ありません!」

眼鏡をクイッと上げて胸を張ったエルスさんは大丈夫そう。ならジークさんは?って思って見てみると、「大丈夫ですか?」ってアインハルトさんが助け舟を出してた。

「おおきにな~♪」

「い、いえ・・・」

アインハルトさんも無重力は初めてなはずなのに、割と普通に体勢を維持できてる、すごい。でもこれで無重力に不慣れなヴィクターさん達のフォロー役も決まったことで、「いざ! 無限書庫、未整理区画へ!」わたしは目的のエレミアの手記があるとされる古代ベルカ区画を目指す。

「あっ! 僕が先導するから!」

「フォルセティが? わたしが先導しても――」

「ぼ、く、が! 先に行くから!」

すいーっとわたし達の前に行くフォルセティ。はやてさんが小さく笑って、アインスさんが「すまない。先に行かせてやってくれ」って苦笑い。わたしの前を通り過ぎる際のフォルセティの顔がちょっと赤かったような・・・。

「・・・あっ!!」

無限書庫の未整理区画での絶対的なルールをここで思い出したわたしは、カッと顔が熱くなるのが判って、バシッとスカートの裾を押さえた。そんなわたしの様子を見たコロナもハッとしてスカートを押さえた。リオはちゃっかりショートパンツだから、「???」自分だけ助かったことに気付いてない。

「すいません、皆さん。教えておくのを忘れてました。無重力空間なので、スカートなどがフワリと捲れてしまいます。ですから・・・見放題状態です」

スカートを履いてるアインハルトさんとミウラさんとエルスさんが顔を赤くして「っ!」両手で前と後の裾を押さえる。ヴィクターさんはさほど慌ててじゃないけど軽めに押さえてた。

「あっはっは! 別に小学生にパンツ見られるくらい、どうってことねぇよ! そりゃあまぁ、覗き見てくるっていうんなら話は別だがよ。事故みたいなもんだろ? 構わねぇよ、フォルセティ。気にすんな!」

「します! ですので僕が先導します! えー、こほん。今僕たちが居るのは古代ベルカ区画で、その中でも後期・・・諸王時代辺りで、ベルカが滅亡する直前までにミッドチルダに運び込まれた書物の一部が納められてます。残りは聖王教会本部の図書館ですね」

あっけらかんとしてる番長の話にフォルセティは益々顔を赤くしたけど、すぐに気持ちを切り替えてガイドし始めた。周囲の棚に納められてる何千冊っていう書物のタイトルはみんな、古代ベルカ語で書かれてる。

「あ、今回の目的、エレミアの手記があるとされる書庫の入り口が見えてきました!」

フォルセティの指差す方には、高さ10m以上もある巨大な、細かな装飾が彫られた両開き扉がある。ベルカ諸王時代のとある王族が保有していた書庫をそのまま、この無限書庫へと納めたっていうとてもダイナミックな話だったりする。

「ユーノ・スクライア統合司書たちが行った一次調査では、特に危険物などは確認されなかったそうです」

「まぁ在ったら立ち入り許可なんて出ぇへんけどな」

「そんな書庫ですけど、ご覧の通り中は迷宮型となっています」

書庫へ通ずる重厚な扉は開閉魔法で起動する仕組み。わくわくが止まらずにわたしがフォルセティより先に開扉を行った。フォルセティより下に居るからスカートの中を見られる心配はなし。

「中は広大かつ迷宮ということもあり、さらに昨夜の事前調査でエレミアの手記があるかもしれない棚は、10箇所ほど候補があります」

「そういうわけで、手分けして探しに行こうって考えました!」

纏まって10箇所を探すより、分散して探した方が効率がいい。一応、今日と明日の2日間の探索期間は設けられてるけど、出来ることなら早めにフライハイト邸に帰った方がいいってフォルセティ達が提案してくれた。

「チーム分けの基準は、古代ベルカ語を読めて、検索魔法も使える人が各班に1人は居るって感じで」

古代ベルカ語を割と正確に読めるのは、わたし、フォルセティ、アインハルトさん、イクス、ルールー、ヴィクターさん、ジークさん、エルスさんの8人。古代ベルカ語を読めることと同じくらい重要になる検索魔法を使えるのはわたし、フォルセティ、コロナ、リオ、イクス、ルールー、リヴィ、エルスさん。それを踏まえて話し合った結果・・・

「ではA班は、わたしヴィヴィオ、イクス、アインハルトさん、ジークさん、ミウラさん!」

「B班! あたしリオと、ルーちゃん、ミカヤさん、エルスさん!」

「C班。わたしコロナと、リヴィちゃん、ヴィクターさん、番長!」

「僕は男なんで、単独で調査に入りま~す。お母さん、アインスお姉ちゃん、問題ないよね?」

フォルセティ以外の女の子だけチームを3つ組んだ。はやてさんはフォルセティからの確認に「まぁしょうがないな~」って苦笑した。3つの班にはスカートを履いた人が居るし、お互いに気が休まらないだろうから、はやてさんの言うように仕方ないかな~。

「迷宮で散開する前に、それぞれ入り口の位置情報データと、通信コードの交換を済ませておくようにね」

アインスさんにそう言われたわたし達は迷宮から無事に脱出できるように、そして探索中でも通信が出来るように、デバイスに登録をしておく。これで探検の準備は完了だ。

「あたしと八神司令は念のために、この入り口前で待機してるからな」

「無限書庫内では転移魔法も転移スキルも使えへんから、大隊の奇襲はまず無いと思てる。そやけど入り口から侵入されたら大事や」

「転移不可なんスか?」

「あ、えっと、未整理区画には売れば一生暮らせるような貴重な本というのが割とあるので、その盗難防止のための処置ですね」

はやてさんに代わってわたしが説明すると、番長は「1冊でか!? そいつはすげぇな!」って辺りをキョロキョロ。するとヴィクターさんが「やめなさい、局員志望」って呆れた。

「金目のものに目が眩んでのキョロキョロじゃねぇよ。もし何かあって、傷付けたりでもしたら、とんでもねぇ弁償金を支払わせるんじゃねぇかな・・・って、ビビっただけだ!」

何百年、何千年っていう歴史のある本もあるから、番長の不安は間違ってない。触れることにすらドキドキしちゃうし。

「それなら大丈夫です! そういった貴重な書物が収められた区画は、空間バックアップをスクライア司書長が取ってくれているので!」

「もし万が一があった場合でも、バックアップによって修復されるので基本的には問題なしです!」

コロナとリオがパチッとお互いの手の平を合わせた。わたしも最初は、空間そのものを複製する、っていう発想に驚いたのを思い出す。ヴィクターさん達も「すごい・・・!」って驚いていたけど、番長だけ首を傾げてた。

「そうやね。シャルちゃんから聞いてる例の一件のことも含めて、何かしらの理由で戦闘が起こっても別に構わへん。みんなは自分の身を守るのを最優先してな。さすがにわざと破損させたら器物損壊などで即逮捕やけどな♪・・・んじゃ、みんな。気を付けていってきてな~♪」

「危険物は無いからと油断はしないように」

「何かあったらすぐに呼べよ? アインスさんが駆けつけることになってっからな!」

はやてさんとアインスさんとノーヴェの見送りにわたし達は「いってきまーす!」と手を振って、書庫の扉を潜る。そしてここからは四手に分かれての探索になる。エレミアの手記のある棚の候補ポイントを表示させたマップを開いて、どのチームがどのポイントを探索するかを決める。

「それでは! 十分に気を付けて、無限書庫探検をしましょう!」

おー!とみんなで気合を入れて、それぞれの担当ポイントへ向かう。でもその前に「フォルセティ!」の右手を掴んで呼び止める。

「ん? どうしたの、ヴィヴィオ?」

「フォルセティ、独りで本当に大丈夫? フォルセティだって一応狙われてる側なんだよ?」

下着を見られるのは恥ずかしいけど、フォルセティを失うことに比べたらどうってことない。フォルセティは左手をわたしの右手に添えて、「僕は大丈夫。魔術師化っていう切り札もあるし」って笑った。

「ヴィヴィオの方も気を付けて。とは言っても、世界最強女子(ジークさん)が一緒だし、お母さん達が入り口を見てくれてるし、あんまり危ない事はないと思うけど・・・。ジークさん、アインハルトさん。ヴィヴィオとイクスの事よろしくお願いします。ミウラも、あまり無茶はしないように」

「ん、任せてな!」

「必ずお守りします」

「だ、大丈夫です! ボクも結構しっかりしてきましたから!」

「お気遣いありがとうございます。フォルセティもお気を付けて」

わたしはフォルセティの手を離して、「それじゃ後で!」手を振って離れてくフォルセティを、「うん」手を振り返しながら見送った。

「ヴィヴィちゃん、行こか?」

「あ、はい! えっと・・・こっちです!」

ここからはわたしが皆さんを先導する。ミウラさんの手を引いて無重力空間を進んで、最初の探索ポイントに到着。ジークさんが「おおう、これはまたすごいな~」って、膨大な数の本が収められてる棚を見てあんぐりと口を開けた。

「ここから1冊だけを探すんですね~・・・。よしっ、頑張りましょう!」

ミウラさんもポカーンとなっちゃったけど、すぐに「ヴィヴィオさん、どれから見ましょうか?」って聞いてくれたから、「じゃあ、この棚から見ていきましょう!」ってミウラさんと一緒に本棚に近寄る。

「では私たちも始めましょうか」

「うんっ!」「はい!」

わたし達に続いてイクス達もそれぞれ本棚に近付いて、適当に本を取り出してく。そして検索魔法で本の中に、エレミア、っていう単語が出てこないかを調べる。時間が無限にあるなら1冊1冊読んでみたいけど、残念ながらそんな猶予はない。

「ほぁ~、すごいですね・・・」

7冊同時に検索魔法を掛けていると、検索し終わった本を棚に戻しては新しい本を持ってきてくれるミウラさんがそう感嘆した。

「ボクより小さくて年下なのにしっかりしていて、しかも強くて。その、可愛いのにそれ以上に格好いいです!」

「ええ!? えっと、あの、ありがとうございます! あ、もう1つありがとうございます」

ミウラさんに褒めてもらえた事へのお礼と、「本局まで付き合ってもらって」のお礼もする。

「いえ! ボクが選んで付いて来たんですから! それに、ずっと以前からどんな形でもいいからヴィヴィオさん、それにコロナさんやリオさん達とも仲良くなりたいって思ってたんです」

ヴィータさんとザフィーラが開いてる八神道場に通うようになってから、フォルセティからわたし達の事を聞いていたと話すミウラさん。だから本当はもっと前から交友したかったとのことで。

「ですからこんな機会をいただけたことに感謝です♪ それに・・・」

ジークさんの方をチラリと見て、「チャンピオンを始め、番長さん達のような上位選手との練習というイベントもあって、とってもラッキーです!」ミウラさんは大興奮。それについてはわたしも同意だ。ヴィクターさんと番長も、魔法ありでの試合はダメだったけど、組手は付き合ってくれた。昨日はホント楽しかったな~。ジークさんとは、インターミドルが始まるまで期間、時間があるときは組手してくれるって言うし。幸せすぎる。

「あっ! ですから、その・・・トレーニング抜きでもいいので、どんな事でもご一緒できるような事があれば、また声を掛けていただけると嬉しいです!」

「はいっ! もちろんです!」

ミウラさんと笑顔を浮かべ合って友情を確かにした。で、問題の目的であるエレミアの手記は見つけられなかった。そういうわけで「次のポイントへ向かいましょう!」って移動を開始。ミウラさんも無重力化での移動も慣れたようで、わたしが手を繋いでなくても大丈夫みたい。

「ここもまた大きなところやね~」

「先ほどのホールとは違って、何か彫像が並んでますね。美術館みたいです」

「ここはどの国のものになるでしょうね」

「そうですね・・・。少なくともシュトゥラではないですね。華美な調度品はあまり好まない国でしたから。調度品にお金を使うくらいなら、民に使うのを善しとしていました」

「そうなんか~。うん、戦時中ならそれが正しい事やろね」

そんな彫像が並ぶホールの外壁に沿って設けられてる本棚の探索を開始。ミウラさんと一緒に十何冊と本を取り出して、検索魔法でエレミアの名前を探す。そんな中、『冥府の炎王の魔力波を感知』って、イクス達の方からしわがれた声が聞こえてきた。

「え、なんです・・・!?」

「アカン、イクス! その本貸して!」

イクスの検索魔法に掛けられてた本をジークさんが引っ手繰って、「なんか来るよ、みんな気を付けて!」ってイクスとアインハルトさんから離れた。直後、ジークさんの持ってる本からブワっと毒々しい紫色の煙が溢れ出してきて、それが収束していくと、鎧を纏った「巨人の上半身・・・!?」のようなものに実体化した。右手には剣、左手には盾を構えてる。

『冥府の炎王を討つべし!』

「「イクス!」」「「イクスさん!」」

狙いは冥府の炎王(イクス)らしくて、振り上げた剣をイクス目掛けて振り下ろそうとした。振り下ろされる剣をイクスは「えーい!」って横っ飛びすることで回避。

「クリス!」

「ティオ!」

「スターセイバー!」

「「「セットアップ!!」」」

「武装・・・!」

わたし達は防護服へと変身して巨人の迎撃に入ろうとしたら、後ろから『聖王オリヴィエの魔力波を感知』って、さっきまでわたしが検索魔法を掛けてた本からそんな声が発せられた。ミウラさんが「この本も・・・!?」煙を吐き出す本を閉じた上で遠くに蹴り飛ばした。そしてその本から溢れ出てた煙もまた、剣と盾を携えた上半身だけの巨人になった。

『殺せ、王を殺せ。そして我らがペルセポリス王、スレイマン陛下にベルカ統一王の座を』

まさかこんな形で戦闘体勢になっちゃうなんて、トホホ。

†††Sideヴィヴィオ⇒フォルセティ†††

ヴィヴィオ達を始めとしたスカートを履いてる女の子と一緒に行動しないよう、僕は単独でエレミアの手記の探索をただいま実行中。ひとりはちょっと寂しいけど、お互いにスカートの中が見えないようにいちいち注意を払うのも非効率だから、ひとりで頑張るのだ。

「でも、本を取って来ては検索して戻すをひとりで・・・。これはこれは効率が悪い気が・・・」

そんな独り言が零れてしまう。しかも静か過ぎるから余計に響いて空しさが際立つ。あぁ、早く見つけてみんなと合流したいな~、なんて考えていると・・・。

『魔神オーディンの魔力波を感知』

背後に配置して検索魔法を掛けてた本からそんな音声が発せられた。すぐさま検索魔法を中断して、その場から離れる。音声が発せられたと思しき本からは紫色の煙が溢れ出てきていた。

「これは緊急事態だよね。一次調査でも判らなかったトラップ・・・」

まさか特定の魔力反応で発動するなんて。これにはさすがのユーノ司書長でも気付けなかったんだな~。というか、オーディンのクローンでも魔力パターンは一緒なんだ。

「まさか、ヴィヴィオ達の方にも出てるかも・・・!」

ヴィヴィオ達の担当するポイントへ向かおうにも、煙は巨人の上半身という形に実体化して、『魔神オーディンを討つべし!』って携えてる剣を横薙ぎに振るってきた。巨体の割にはかなり動きが早い。だけどシグナムお姉ちゃんの斬撃に比べればなんてことない。

「戦うにしても逃げるにしても・・・! エマナティオ、エンゲージ!」

≪応! 防護甲冑、着装!≫

待機形態がクロス・フローリー型ペンダントの“エマナティオ”を手に取って起動させる。ウィングカラーシャツ、ラペルドベスト、スラックス、フード付ロングコート(袖に腕を通さずに羽織るだけ)、そして首にクラバットを巻き、腰にマガジンホルダーの付いたベルトを2つ巻いたスタイルの防護服に変身。

「エマナティオ! ドッペルトフォルム!』

双銃形態(ドッペルトフォルム)で起動≫

両手に拳銃型デバイスを携える。“エマナティオ”は、お父さんとすずかさんの合作インテリジェンスデバイスだ。デバイスを造ってもらえることになった時、どんな物がいいかってお母さんに聞かれた僕は、アリシアさんやティアさんが使うような拳銃型がいいって話した。

――銃か~。アレは一度ハマると、とことんカスタムにのめり込めるからな。そうだ、少し待っていてくれ――

そしたらお父さんが、地球産のモデルガンやアタッチメントをわざわざ取り寄せてくれて、僕が好きなようにカスタムしたモデルを、そのままデバイスの外見にしてくれるってことになった。その結果、基礎のシグザウエルP226に、ユニット内部にレーザーサイトを組み込んである10インチの大型ロングバレルユニットを装着。グリップも改造して、15発+1発のP226の装弾数を、P320のように17発+1発にしてみた。ロングマガジンって選択肢もあったけど、グリップからはみ出るのはちょっと嫌だった。

「コード・レヴォルヴァー!」

カートリッジをロードしない状態での魔力光線6連射(2挺で12発)を放つ。巨人は左手に持つ盾を構えて、魔力弾を全弾防御した。振り下ろされる剣をまた躱すけど、本棚がバッサリ両断された。

(あー! ごめんなさい、ユーノ司書長!)

いくらバックアップがあるといっても、貴重な本がズタズタにされるのは見ていられない。早期決着のためにも僕は「カートリッジロード!」って指示をして、“エマナティオ”が薬室内のカートリッジをロード。足元にベルカ魔法陣を展開して、ソレを足場として蹴る。そして巨人の真下を潜り抜けつつ、「コード・カノーネ!」双銃から砲撃2発を発射。巨人は大きくよろめいたけど、決定打にはなっていないみたい。

「この・・・!」

それから何度も振るわれる剣や盾の猛攻を掻い潜りながら攻撃を与えるけど、なかなか朽ちてくれない。とここで、「そうか、あの本を狙えばいいんだ」って察した。巨人の実体化の際に心臓付近に取り込まれたあの本を壊せば、きっと・・・。

「(ただの射砲撃じゃ巨人の体は撃ち抜けない・・・!)だったら! カートリッジ全ロード!」

≪応! カートリッジフルロード!≫

マガジン内のカートリッジを全弾で使い、攻撃を躱し切ったところで「コード・クーゲル:D!」双銃から魔力弾を1発ずつ発射。DはDurchbruch、突破っていう意味を持つ単語の頭文字で、魔力障壁貫通弾のことを指す。ミッド式のヴァリアブルシュートと同じようなものだけど、貫通性能はこっちの方が上だ。

「これでどうだ!」

僕の放った2発の魔力弾は巨人の心臓付近を貫通していた。それでも巨人は剣を振り上げたから失敗したと思った。でもすぐに実体化を維持できなくなったのか煙状に戻っていって、そのまま完全に消失。そんな中でど真ん中に穴の開いた本が現れた。

「・・・ふぅ。よっしゃー!」

ひとりで敵を倒せたことに喜んでいたところ、「エレミアの記した書、見つかった?」って女の子の声がした。今日、無限書庫に来たメンバーの声じゃない。バッと声のした方へと体を向けて、双銃の銃口を向ける。

――無限書庫に行く前に、みんなには伝えておきたいことがあるの――

――シャルちゃんから聞いてる例の一件のことも含めて、何かしらの理由で戦闘が起こっても別に構わへん――

「君が・・・魔女、ファビア・クロゼルグ・・・?」

今日、ここ無限書庫に訪れることになってるメンバー全員がシャルさんから聞いていた、ヴィヴィオやアインハルトさん達のことをこそこそと探っているっていう女の子が、僕の目の前に現れた。
 
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