戦国異伝供書
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第二十八話 天下の政その四
「裁きにはかけぬ」
「誰もですか」
「精々暫し謹慎じゃ」
その程度で収めるというのだ。
「あの者達についてはな」
「では」
「しかし備えとしてじゃ」
その島津家への、というのだ。
「肥後によい城を置くか」
「肥後となりますと」
そう聞いてだ、言ったのは黒田だった。
「熊本ですか」
「ふむ、お主はそう思うか」
「島津家を抑え肥後を治めるとすれば」
「熊本の地にか」
「確かな城を築くべきかと」
「そうじゃな、島津家の抑えとしてな」
「肥後を治めるとなりますと」
「あの地がよいな」
「それでは」
「その時はそうする」
熊本に城を築くというのだ。
「島津家を降したならな」
「それでは」
「その時の縄張りも定める」
その時にというのだ。
「必ずな、して虎之助よ」
「それがしですか」
「お主近頃城のことを学んでおるな」
加藤にこのことを問うたのだった。
「そうであるな」
「そうしていますが」
「それではその時にじゃ」
「熊本の城の縄張りをですか」
「考えておこう」
こう言うのだった。
「これからはな」
「わかりました、それでは」
「うむ、その様にな」
「今の九州で気になることは」
真木も言ってきた。
「大友殿の世捨てぶりと耶蘇教への贔屓が」
「前よりもな」
「酷くなっていますな」
「それじゃ、わしも文を書いて窘めているが」
信長とて懸念していてだ。
「それがじゃ」
「聞き入れられませぬか」
「その島津家と対してじゃ」
「竜造寺家もですな」
「あの家もあるのにな」
それがというのだ。
「ああしてじゃ」
「世に背を向けられて耶蘇教に傾かれると」
「よいことはない、島津家も強いが」
「竜造寺家もですな」
「あの家も強いのじゃ」
それ故にというのだ。
「今はそうなっていてはまずいがのう」
「ですな、確かに」
「公儀としての仕置きもな」
九州へのそれもというのだ。
「考えておる、その備えはしておくことじゃ」
「常に」
「そうじゃ、あと数年は領地や天下の仕組みの政に専念したいが」
それでもというのだ。
「九州が一つの家の手に落ちるならな」
「それよりも前にですな」
「動くこととする」
「わかり申した」
「その時の兵は二十五万は送り」
その九州にというのだ。
「わし自ら出陣する」
「二十五万ですか」
そう聞いてだ、驚いたのは堀だった。
「それはまた」
「多いな」
「それだけ多くの兵を一度に出すなぞは」
「本朝ではなかったな」
「これまでは、ですが」
「それをじゃ」
「あえてですか」
「送る、鉄砲もじゃ」
それもというのだ。
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