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戦国異伝供書

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第二十八話 天下の政その三

「よいな」
「わかり申した」
「その罪断じて許せぬわ」
 民を他の国に売り飛ばし奴婢にさせることはというのだ。
「そして奴婢になった民達はすぐに買い戻せ」
「買い戻されますか」 
 今度は松井が問うた。
「すぐに」
「そうじゃ、放っておける筈がない」
 ここでも断じてと言う信長だった。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「銭はどれだけでも出せ」
「そうしてですな」
「奴婢にされた民達を全て買い戻すのじゃ」
「そうして本朝においてですか」
「また生きてもらう」
 その様にするというのだ。
「わかったな」
「わかり申した」
 明智は信長に強い声で応えた。
「その様に」
「フロイスは違うが伴天連の中には悪質な者もおるな」
「確かに」
「そうした者の悪さは仏教の坊主より酷いのう」
「坊主達は民達を売り飛ばしたりはしませぬな」
「流石にな、ましてや奴婢にするなぞもな」
 そうしたこともというのだ。
「せぬ」
「だからですな」
「それでじゃ」
 だからだというのだ。
「あの者達よりもな」
「伴天連の者達の方がですな」
「危ういやもな」
「では」
「今はよいが」
 それでもと言うのだった。
「やがてはじゃ」
「あの者達は」
「気をつけてじゃ」
 そうしてというのだ。
「手を打っていくぞ」
「そうしますか」
「むしろ仏教の坊主達よりもな、以前から言っておるが」
「今はよくとも」
「布教させることは考えていくか」
 このこと自体がというのだ。
「まさにな」
「それでは」
 明智はまた頷いた、そのうえで今度は彼から信長に申し出た。
「それで九州のことですが」
「どうした状況じゃ」
「はい、やはり島津家がです」
 この家がというのだ。
「大きくなっています」
「やはりそうか」
「あの家が九州を統一すれば」
「厄介じゃ」
 信長はすぐに答えた。
「あの家だけでなく他の家がそうすればな」
「大友家も竜造寺家も」
「だからじゃ」
「そうなる前にですな」
「兵を出す」
 そうするというのだ。
「九州もまた幾つかの家に分ける、そしてな」
「そのうえで」
「島津家は降すが残す」
 潰しはしないというのだ。
「他の家と同じくじゃ」
「ではその領地は」
「薩摩、大隅じゃ」 
 この二国だというのだ。
「その二国に定めぬ、また四兄弟の誰もじゃ」
 島津義久、主である彼を筆頭とする彼等はというのだ。 
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