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名医の手で

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第四章

「ご安心下さい」
「それではな」
「では私は早速です」
 貂蝉も言ってきた、口調がこれまでとは違い堂々たるものだ。
「ことにあたります」
「そうしてくれるか」
「はい、そして必ずや」
「あの二人をだな」
「争わせそして」
 共倒れか片方を滅ぼしてみせるというのだ。
「そうします」
「まだ一人ならどうにかなる」
 董卓だけ、呂布だけならとだ。王允も述べた。
「ではな」
「これからのことを詳しくお話しましょう」
「是非な、して華佗殿」
 王允は貂蝉との話から華佗に顔を向けて言った。
「この度のこと礼を言わせてもらう」
「有り難きお言葉」
「そして礼も」
 王允は両手を叩いた、するとすぐに多くの銀を持って来た者達が来た。王允はその銀達を指し示して華佗に渡した。
「こちらに」
「私にですか」
「貰って欲しい」
「いえ、当然のことをしたまで」
 華佗は王允にこう返した。
「ここまではいりませぬ」
「天下を救ってくれるのだ、これ位は」
「私は必要なものを頂ければ」
 それでというのだ。
「これで」
「いいのか」
「これ位で」
 多少の銀を受け取った、それで言うのだった。
「宜しいです」
「そうなのか」
「はい、そして」
 そのうえでというのだ。
「また何かあれば」
「来てくれるか」
「そうさせて頂きます」
「それがそなたの考えか」
「医は仁術ですので」
「それ故にか」
「生きる分のものは頂きますが」
「余計にはいらぬか」
「はい、それでは」
 華佗は王允に礼儀正しく述べた。
「ご武運を」
「うむ、ことは必ず果たす」
「そう致します」
 王允だけでなく貂蝉も華佗に応えた、そうしてだった。
 二人で華佗を送りだ、貂蝉は王允に言った。
「では今より」
「どうしていくかな」
「お話しましょう」
 二人で話してだ、そしてだった。
 王允は呂布にも董卓にも貂蝉を紹介した、そうして貂蝉は無事に務めを果たし呂布に董卓を殺させた。全ては貂蝉が華佗から西施の顔と荊軻の胆を貰ったからだ。中国の民間伝承にある逸話の一つである。


名医の手で   完


                    2018・8・12 
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