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同行二人

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第四章

 線路に出た、富田はその線路を地図を見比べてすぐに言った。
「ああ、ここは」
「もうこれで大丈夫ですね」
「はい、道に戻れました」
 正しいそこにとだ、男は富田に答えた。
「無事に」
「それは何よりです。では」
「あっ、どちらに」
「拙僧もお遍路をしていますので」
 それでとだ、男は富田に笑顔で答えた。
「ですから」
「それでは」
「また機会があればお会いしましょう」
 これが男の返事だった。
「そうしましょう」
「この度は有り難うございます」
「いえいえ、これも当然のこと」
「当然ですか」
「拙僧にとっては」
 富田に穏やかな笑顔で言ってそうしてだった、男は富田に会釈をすると先に進んでいった。こうして富田は難を避けられてだった。
 またお遍路の道に戻ることが出来て無事に八十八ヶ所巡りを終えた、そうして家に戻ってからお遍路の手配をしてくれた住職がいる寺に行き。
 住職にこの話をすると彼は富田に言った。
「拙僧がお話をした通りでしたな」
「といいますと」
「おそらく狸の悪戯から助けてくれた方は」
 そのお遍路の男のことを言うのだった。
「あの方です」
「というとまさか」
「はい、大師様です」
 こう富田に答えた。
「あの方がです」
「わしを助けてくれたのか」
「そうかと」
 こう言うのだった。
「まさに」
「そうなんだな、いやまさかな」
「大師が本当にお遍路をされているとは」
「思わなかった、話は本当だったんだな」
「そうです、あれだけの徳と法の方です」
 日本の歴史に永遠に名を残す高僧だけあってというのだ。
「ですから」
「お遍路もしてくれていてか」
「今もそうされていて」
「お遍路に出ている人を助けて導いてくれているか」
「左様です」
「わかった、本当に今も生きている方ということもな」
 富田は住職に応えて述べた。
「よくわかったよ、わしも」
「わかって頂いたなら何よりです」
「それじゃあ四国の名物土産に買ってきたしな」
 ここで富田は話を変えた、そちらの話にだ。
「うどんに柚子に鰹節、ちくわをな」
「おお、それをこの寺にですか」
「土産にな、女房にも買ってきたし」 
 笑って話す富田だった。
「この寺でもな」
 要するに酒もだ。
「お遍路の詳しい話は食ってな」
「そうしながらですね」
「しようか」
「有り難い、では拙僧も出しましょう」
「何を出してくれるんだ?」
「般若湯を。ではこれから」
「ああ、飲んで食って話すか」
 富田は住職に明るく笑って応えた、そしてだった。
 それからは四国の名産を食べて般若湯つまり酒も飲みつつ住職と話した、彼にとってはまさかと思っていたことが本当だとわかりそして他にも得るべきものが全部得られたお遍路のそのことを話した。


同行二人   完


                 2018・6・14 
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