知られていない活躍
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第二章
「私は今も生きていなかっただろう」
「そこまで、ですか」
「イオラオス殿はそこまでの方ですか」
「ヘラクレス殿にとって」
「私にとって最高の御者であり軍師であり戦友だ」
ヘラスレスは頬んで言い切った。
「この甥はな」
「まさかヘラクレス殿にその様な方がおられるとは」
「ではギリシア一の英雄もですか」
「イオラオス殿がおられてこそ」
「そうなのですか」
「その通りだ、私は彼がいてこそ戦えるのだ」
ヘラクレス自身も認めることだった、そうしてそのうえで今も戦うのだった。ヘラクレスの甥イオラオスへの信頼はとかく大きく絶対と言うべきものだった。
それでだ、オリンピックので戦車の競技でもだった。ヘラクレスはイオラオスを出して自信に満ちた笑みで言い切った。
「我が甥に勝てる者はいない」
「イオラオス殿に」
「そうなのですか」
「そうだ、このギリシアにはいない」
絶対にと言うのだった。
「一人もな、だからだ」
「イオラオス殿が優勝されますか」
「そうだというのですね」
「間違いなくな」
こう言い切った、そして実際にだった。
イオラオスは戦車の競技で優勝した。他の参加者達を寄せ付けずそのうえでの圧倒的な勝利だった。
ヘラクレスはこのことを我がことの様に喜んだ、そうして言うのだった。
「この通りだ、我が甥こそがだ」
「ギリシア一の戦車の御者ですか」
「そう言われますか」
「そうだ、これ以上の御者はいない。だからだ」
彼がそうした立派な御者であるからだというのだ。
「優勝も出来た。そしてこの甥がいるからだ」
「ヘラクレス殿も戦える」
「そうだというのですね」
「今も」
「そうだ、むしろ私なぞよりもだ」
遥かにというのだった。
「この甥は出来物だ、何故なら私は彼がいないと何も出来ないが」
「イオラオス殿は違う」
「そうなのですか」
「そうだ、彼は一人でも戦えるしことを果たせる」
ヘラクレスはこれ以上はないまでに強い声で言い切った。
「そしてそれは必ずだ」
「必ず?」
「必ずといいますと」
「ことを果たせる、何かあってもな」
「ヘラクレス殿がそう言われるとは」
皆ヘラクレスの言葉にここでも驚いた。
「ギリシア一の英雄が」
「そこまでの方が」
「イオラオス殿はそこまでの方なのですか」
「一人でもことを果たせるまでに」
「そのことはやがてわかる」
すぐにというのだった。
「我が甥はオリンピックでも優勝した、しかし」
「それに止まらない」
「そこまでの方だとですか」
「そうだ、やがてわかる」
ヘラクレスはこうまで言っていた、そうしてこの時は甥の栄誉を祝福した。彼の甥への信頼は死ぬ時まで変わらず。
死の床にあってもだ、彼に対して言った。
「では息子達のことをな」
「はい、お任せ下さい」
イオラオスも確かな声で応えた。
「後のことは」
「それではな」
イオラオスの確かな返事に微笑んでだ、彼は自分の息子達を任せた。そしてイオラオスもその返事通りにだった。
ヘラクレスの息子達の後見人として彼等を護り導き尽くした、その中である戦に参加したがこの時彼はもう老いていた。それでだった。
周りの者達はそのイオラオスにだ、心配そうに言った。
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