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吸血鬼になったエミヤ

作者:炎の剣製
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030話 日常編 語られるネギの過去

 
前書き
更新します。 

 


シホ達が冬木の地から帰って来るといつの間にやらネギとアスナは仲直りしていた。
それを聞いてシホはよかったわねと言った。
そして数日が過ぎ、ネギは現在ダイオラマ球のエヴァの別荘で修行していた。
シホとタマモは、エヴァ・茶々丸・チャチャゼロに3対1で修行をつけられている光景を見学していた。

シホの視線の先ではネギがエヴァの拳に吹き飛ばされ、茶々丸とチャチャゼロが追撃をしそれをネギは『風花・風障壁』で防ぐが魔法の効果が切れた後、二人に押さえつけられてそこで対決は終了。
対戦時間は12秒というタイムである。

「まぁまだ近接での修行を始めたばかりだから時間が少ないのはしょうがないけどね…」
「にしては魔法も使っているんですからもう少し伸びないものですかねー」
「ま、これから修行していけば時間も伸びていくでしょう」

そこに『雷の斧』をネギ先生に叩き込んでいるエヴァがシホの目に映った。

(あれを教えているという事はネギ先生はすぐに習得するのだろう。少しでも才能を分けてもらいたいものね…)

「よし! 次は…っと」

エヴァは次に移ろうとしたが立ち眩みを起こしていた。

「ちっ…少しハリキリすぎたようだ。ぼーや、約束どおり今日も授業料を払ってもらうぞ」

そう言いネギに迫るエヴァ。
事情を知らないものが見ればいけない光景に映るだろう。
しかし実際は、

「んー…」
「うう…」

エヴァがネギ先生の血を吸っているという光景だった。
それでシホも血が欲しくなり待機させておいた輸血パックにストローを刺してそれを飲んでいたり。

「うん、うまい…!」
「やっぱりシホさんも吸血鬼なんですよね…今更ですけど」
「普段の行動を見てると忘れちまうよなー」
「まったく未だにそんなものに頼って情けないぞ?」
「シホ様、可愛いです♪」

一部変な事が聞こえたと思ったが無視するシホだった。


場所は変わり学園長室。
そこでは電話越しで学園長が詠春と話をしていた。

『実は問題がありまして。それほど心配はないと思うのですが』
「ふむふむ、何? 脱走じゃと?」

何かが起こりそうな事件が裏で発生していた。




◆◇―――――――――◇◆




その夜、ネギはフラフラになりながらもアスナ達の部屋に帰って来る。

「ただいま~」
「おかえり~ネギ君」
「おふぁえりー」

挨拶の言葉を交わすがアスナはネギがフラフラなことに気づき問い詰めるが、ネギは「大丈夫」とのことだが、途中で力尽き(眠りにつき)このかに寝かされていた。

「怪しいわね。何か隠してないでしょうね」
「何も隠してねぇって」

カモの頬を引っ張りながらもアスナは気にかけるのだった。
翌日、ネギは…疲れを通り越してやつれていた。
それでクラスの生徒達は心配になっていた。
授業が終わり出て行く時も何度もどこかにぶつかったりしていて怪しさ全開である。

「たった2、3時間の練習であんなになっちゃうなんて絶対おかしいわよ。何やってるかつきとめてやる」

真相を知ろうと着けようとするアスナ。
それに便乗してのどか、夕映、古菲、朝倉が着いてきて、途中でこのかと刹那も合流してネギを尾行する。
見ていたら途中でエヴァとシホ、アヤメと合流していた。

「エヴァちゃんはともかくシホ達も?」
「なにがあるんでしょうか?」

とりあえずつけていく一行。
そして着いた場所はエヴァのログハウス。
中で修行?
疑問に感じ一同は中に入っていき地下の道を発見し降りていくとジオラマ球を発見する。
それに近づくと一同はその場から次々と消えていった。

そして最後にアスナが消えて次に目をあけたらそこはなんとジオラマ球の中だった。
中は二つの塔が手すりのない細い橋で繋がれていて、周りを見回せば海が広がり気温は南国のように暖かい。

「な…ど、どどど、どこなのよここーーーーッ!?」

思わずアスナはファンタジー(と読んで非常識)な光景に叫びを上げた。
唯一残っていた夕映によればすでに30分は時間が経っていたという。
そして移動した塔の中ではネギとエヴァのなにやら怪しい会話が聞こえてきて全員顔を赤くする。
たまらずアスナは「子供相手に何やってんのよーーーっ!!」と飛び込んでいくが実際はただエヴァがネギの血を吸っているだけの光景に呆気に取られる。
それからしばらくして、

「―――ここは私が造った『別荘』だ。シホの足が治る少し前にリハビリのために掘り出していたものをそのままぼーやの修行に使っている」
「ここで私も戦闘面でのリハビリをしていたっけ」

エヴァがいうにはここは日本昔話の『浦島太郎』の逆でここで一日過ごしても外では一時間しか経過していない。
これを利用してネギに丸一日たっぷり修行を受けてもらっているというもの。
実はシホの足らない魔法知識もここで全部覚えさせられたという事があったが、まぁ言わない方がいいだろうという事になった。

「……てことはネギ君、1日 先生の仕事した後、もう1日ここで修行してたってコト?」
「教職の合間にちまちま修行しててもラチがあかないからな」
「てコトはネギ坊主、1日が2日アルか!?」
「大変過ぎやーーーーーっ!」
「ネギ、アンタまたそんな無理して…………」
「大丈夫ですよアスナさん。それにまた修学旅行みたいなことがあったら困りますし、強くなるためにこんなことでへこたれてなんていられませんよ!!」
「……………」

ネギの無理はしていない、大丈夫という言葉にアスナは黙るしか出来ないでいた。




◆◇―――――――――◇◆




また場所は変わり同時刻。
那波千鶴と村上夏美は黒い犬を拾って部屋で怪我の手当てをしていたら犬の姿がなく、いつの間にか裸の男の子の姿があって困惑していた。

「あらあら…」
「な、何で男の子が…」
「さっきのワンちゃんがこの子になっちゃたのかしらねぇ?」
「まさかー…でもどうするちづ姉?」
「まって…」

千鶴は男の子の額に触った。

「まあ大変、スゴイ熱よ?」

それでお医者さんに電話する話になり千鶴が電話をかけようとした途端、受話器は男の子が投げたスプーンを投げつけ割り近くにいた夏美を押さえつけて、

「…やめろ、誰にも連絡するんやない」
「あ、あの! あなた誰…? 一体何の…」
「黙れ!」
「うひゃいっ!?」

男の子は夏美の首に爪を突きつけて黙らした。

「そ……そこの姉ちゃん、何か……俺が着るものと食い物を持ってきてくれ」

千鶴は少し黙り込んで口を開いた。

「あなた……名前は? どこから来たの? 教えてくれないかしら? 私達が何か協力できるかもしれないわ」

怯えのない声で千鶴は話しかける。それはいつも保育園で子供と相手をしているが故の一種の慣れなのだろう。

「な、何やて……名前……? 俺の名前? ……あれ、誰やったっけ俺……? 違う。俺、あいつに会わな……」
「『あいつ』って誰かしら?」
「!? ち、近寄るなっ!」

男の子はそのままの勢いで千鶴の肩を切るが、だが千鶴は気にせずその胸に包み込み、

「……ダメよ、そんなに動いては、また倒れてしまうわ。40度近くも熱があるのよあなた」
「え……ぅあ……?」
「ね? 腕の傷の手当てもしなくちゃ」

まるで母親のように男の子を落ち着かせてしまい、男の子は気が抜けたのか気絶してしまった。

「ど、どどどうしたの?」
「大丈夫。また気を失っただけみたいよ」
「うーん…さっすがちず姉! 保母さんを目指してるだけあるね」
「毎日ボランティアで学園の悪ガキを相手にしてますので」
「でも、ホントに何なんだろうねこの子…?」
「ただの家出少年じゃないことは確かね」
「って、きゃあああ~~~!? ちづ姉、血!! 血!!!」
「あら大変ね」

最後まで千鶴はマイペースに事を進めているのだった。




◆◇―――――――――◇◆




しばらく騒いで時間は夕暮れ時、シホと茶々丸が調理した料理を一同が食べている中、夕映がエヴァに、

「私に魔法を教えてくれませんか?」
「何…? 魔法を?」
「はいです」
「めんどくさい。向こうに先生がいるんだからそっちに教えてもらえ」
「そうですか…」
「夕映、魔法と関わるという事の私の出した問題の答えは出たの?」
「答えですか? いえ、まだ出ていませんが…」
「そう。それじゃもう一つヒントよ、魔法世界にも表の世界と同じように現実がある。今回はこれね」
「現実ですか…。ちなみに聞き返しますがシホさんの現実はどうだったのですか?」
「ん。まぁ色々とあったけど…―――半分以上は■■だったわ」
「え…今、なんと…」

夕映は一瞬無表情になってシホが発した言葉をうまく聞き取れなかったが確かに聞こえた。

(地獄だった―――…シホさん。あなたは一体なにを見たというのですか?)

夕映の疑問は尽きなかったが皆がネギに魔法の杖を貸してもらえ自分もやるですといった時にはシホに対する疑問はまた心の底に入っていった。

「くくくっ…現実を知らない小娘には過ぎた助言ではないか?シホ。まだあいつらでは想像もつかないだろう…―――お前が受けてきた屈辱は」

エヴァの言葉に一瞬また頭痛がしたがすぐに薬を取り出して一飲みし自身を落ち着かせるシホ。
それを見てエヴァは内心で(まだ時間が必要か…)と思っていた。



そして夜になり皆が寝静まる頃、ネギはアスナと話をしていた。

「………アスナさん。ちょっとお話いいですか?」
「………何?」
「話しておいた方がいいと思うんです。“パートナー”のアスナさんには」

…そして始まろうとしているネギの過去の話。
それからしばらくしてのどかがお手洗いを探していると、偶然ネギとアスナが意識をシンクロさせる魔法をする光景を目撃してさらに背後にシホとエヴァ達が立ち、

(ふむ、アレは意識シンクロの魔法だな)
(うひゃいぃっ!? エ、エヴァンジェリンひゃんっ!?)
(ケケ)
(お前アレ持ってたろ、『他人の表層意識を探れるアーティファクト』。ちょっと貸せ、ぼーやの心をウォッチする)
(ええ~~~~~!? ダ、ダメですよそんなの………!!)
(どうやらぼーやの昔話のようだぞ、聞きたくないのか? 好きな男の過去を知っておくことは何かと有利だと思うがな)
(はう!? なぜそれをー)
(ぼーやは他のみんなにも話すと言っていた。だから大丈夫だ。師匠の私には聞く権利がある)

ギュピィィンと目を光らせのどかを誘惑させていく。
その光景にシホは(悪だなー)と言い、タマモは(ちょろいですねー)と笑みを浮かべている。

(あのぼーやの姉貴面をした神楽坂明日菜だけに聞かれては(あう、その…)色々と先を越されてしまうかもしれんぞ? いいのか? ん?(色々って…)ホラ? どうする宮崎のどか?)
(その、私ー………ちょ、ちょ……ちょっとだけなら――………)
(よし、いい子だ)
(ガキハ陥トシ易イナ。ケケケ…)




「―――で、両手を合わせておでこをピッタリとくっつけます」
「ちょっと、こんなので本当にあんたの記憶を体験できるの?」
「はい。この方が話すよりも簡単ですから。……どうかしました?」
「べ、別に…」

明日菜は自分の頬が赤くなっているのを感じ、

(って、おでこくらいで何動揺してるのよ私! 最近ちょっとおかしいわね私…)

「いいですか?」
「いいわよ」
「では。ムーサ達の母ムネーモシュネーよ。おのがもとへと我らを誘え」


ネギとアスナは気づかない。いつの間にかのどかの『いどの絵日記』で全員が見ている事を。




◆◇―――――――――◇◆




そして一同は見た。ネギの過去を…



それは純粋な父への憧れ…ピンチになれば助けに来てくれるという子供ながらの小さい願い…。
だが突如として悪魔の軍勢によって小さい村は襲われた。
村が燃え、ほとんどのものが石化されてしまい、それは自分の願いのせいだと後悔に陥るネギ。
そして脅威はネギにも降りかかりその犠牲になりかけた時、颯爽と登場した一人の青年。
青年はネギがいつも持っている杖を持ちながら悪魔の軍勢を次々と強力な魔法で一掃していきすべてを薙ぎ払った。
ネギは青年の手によって救われたが、ネギは一種の恐怖からその場を後にしてしまう。
しかしまだ残っていた悪魔がネギに襲い掛かったが、すんでのところで老魔法使いと義姉の手により命を救われる。
…しかし悪魔の放った光は防ぎきることは出来なったために義姉は足が石化し途中で崩れて割れてしまい、老魔法使いはそれよりひどくほぼ半身が石化していながらもなんとか悪魔とその従者達を小瓶に封印することに成功。
だが代償は自身の石化…最後に「逃げてくれ…」という言葉を残し老魔法使い…いや、スタンは完全に石化した。
脅威は去ったが生き残った自分はともかく姉の石化を解くものは誰もおらず声をかける事しか出来ないネギに、ふと影が差した。
そこには先ほどよりボロボロになりながらも青年が立っていた。
そして燃えていない坂の上まで移動させられたところで、

「すまない…来るのが、遅すぎた…」

と、青年から後悔の念がこもった声が漏れたが、その時のネギは恐怖しか感じなかったため持っていた練習杖をかざして義姉を必死に守ろうとする。
だが、青年はなにかに気づいたのか、「そうか、お前がネギか…」と言う言葉とともにネギの頭を優しく撫でて、

「大きくなったな…」

と、いう言葉でネギ君は呆気にとられたのか無言になり、その間にも青年は話を進めていく。

「…お、そうだ。お前にこの杖をやろう。俺の形見だ…」
「…お、お父さん…?」

そこで真実に至ったのか青年の正体が父であり、サウザンドマスターとも言われた『ナギ・スプリングフィールド』だと気づき頭が真っ白になったのか呆然としている。
そう、ネギの願いは皮肉にも悪魔襲撃という形で叶うことになってしまった。

「もう、時間がない…」
「え…?」
「ネカネは大丈夫だ。あとでゆっくりと直してもらえ…」

ナギ・スプリングフィールドはそれを伝えた後、空へとゆっくりと浮遊しだして、ネギは必死に父の名を呼びながら追いかけていく。
だが、彼はどんどん離れていってしまう。
最後に、

「悪ぃな、お前にはなにもしてやれなくて…こんな事いえた義理じゃねぇが…元気に育て、幸せにな!」

ネギが足を踏み外して転げた後、顔を上げたらすでに彼の姿はなかった。
そして父の名を叫びネギは大泣きした。
それが父との雪の日の最初の出逢いとそして最初の別れであった。




◆◇―――――――――◇◆




「私に、似ている…」

その呟きは小さいながらもシホから発せられた。
それにエヴァとタマモは気づき「記憶を思い出したのか…?」と聞いたがシホは無意識で言っていたらしい。
もう忘れていた。
そしてそれすらにも気づかない一同はネギに寄っていき口々に「探すの手伝う」と言って聞かなかった。
ネギはエヴァに助けを求めるも「まぁ、私も協力してやっても構わん」とグズッと鼻を啜っていた。
そして夜にまた宴会騒ぎになった。

シホはこれを冷めた目で見て「余計魔法に足を突っ込む要素を増やしてしまったわね…」と誰にも聞こえない呟きをしていた。



 
 

 
後書き
この後、30分後に没カットを更新します。 
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