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五徳猫

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第二章

「実物を見たのははじめてよ」
「そうだな、じゃあな」
「じゃあっていうと」
「実はおいらは今宿なしなんだよ」
「そうなの」
「おいらを飼ってた一人暮らしのヤクザ屋さんが喧嘩で殺されたんだよ」
「それはまたヘビーね」
 この話には麻紀も多少引いた、あくまで多少である。
「それで飼い主さんがいなくなったの」
「ああ、それも家で殺されてな」
「自宅を襲われて」
「おいら丁度外に遊びに出ててな」
「帰ったらだったのね」
「蜂の巣だったんだよ。まあヤクザ屋さんの最後なんてな」
 五徳猫は立っ関する感じで述べた。
「そんなものだよ」
「殺し殺されてなのね」
「ああ、前のご主人もわかってただろうな」
「ヤクザ屋さんがどうなるかは」
「だから仕方ねえさ、ヤクザ屋さんなんてな」
 それこそというのだ。
「末路はいいものじゃねえさ、実際ご主人も悪いこと散々やってたしな」
「仕方ないっていうのね」
「ああ、それで今宿なしでな」
「それじゃあこのマンション動物オッケーだから」
 ペットを飼えるマンションんだからだとだ、麻紀は猫に自分から話した。
「よかったらね」
「おっ、入れてくれるのか」
「セクハラ竹刀でおトイレちゃんとしたらね」
「トイレと砂は持ってきたぜ」
 猫が前足をポンと人間の様な仕草で打ち合わせると出て来た、猫用のトイレと砂の袋がしっかりとである。
 ついでにキャットフードもあって言うのだった。
「とりあえずの飯もな」
「用意がいいわね」
「前の家から持ってきたんだよ」
「じゃあ今すぐにも」
「住めるぜ、トイレの処理も出来るしな」
「後はご飯だけね」
「飯はキャットフードな」
 それでいいと言うのだった。
「それだと何でもいいぜ」
「色々現代的な猫ね」
「明治生まれだけれどな」
「しかも私より年上ね」
「ずっとな、化け猫だからな」
 それで長生きしているというのだ。
「あとセクウハラもしねえからな」
「そのこともなのね」
「安心しろよ、じゃあな」
「今からね」
「宜しくな」
 こうして麻紀は五徳猫と共に暮らすことになった、五徳猫の名前は彼が言うには諭吉といった。言うまでもなくお札の人の名前だ。最初の飼い主が大坂時代のその人と付き合いがあって名付けたのだという。
 諭吉は口は悪いがよく気がつき何かと麻紀にアドバイスをした、明治生まれだけあって人生いや猫生経験が豊富でそのアドバイスはいつも的確だった。
 そしてだ、麻紀がその日またしても彼の返事が思わしいものではなくマンションに帰って好きな日本酒をホッケを焼いて飲んだくれていると尋ねたのだった。 
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