提督がワンピースの世界に着任しました
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第32話 多事多忙
「はぁ、面倒な仕事ばかり増えていきやがる」
マリンフォード「海軍本部」にある議事の間にて会議を終えた後の海軍元帥のセンゴクは、執務室に戻ってきて席に着くなり愚痴をこぼし、頭を抱えるぐらいに悩んでいた。
丸渕メガネをかけ直し、手元の資料を確認しながら思い返するは先程の部下から伝えられた報告の数々。
数週間前に実施された、ゴール・D・ロジャーの処刑。
「俺の財宝か? 欲しけりゃくれてやる。探せ! この世の全てをそこにおいてきた!」
彼が処刑される間際に放った最期の言葉。それを耳にした多くの若者たちが影響されて、海賊となって海へと出るようになってしまった。世間では、新たな海賊達の時代が始まったと騒がれている。
この出来事により海賊の数が爆発的に増えていって、海軍兵士の一人あたりの仕事が日に日に増え続けている。
しかし、稼働できる海軍兵士の数には限りがある。事件が発生しても、鎮圧のために十分な数の兵士を向かわせることが出来ずに海賊を取り逃がす事も増えてきていた。
だがしかし、所属や配置を移動させて現状を大きく変えることも出来ないし、監視体制や連絡網の強化も必要になってくる。圧倒的に現場に当たる人員が足りていない状況だった。
問題はそれだけでは無い。現在の海賊が増えて治安が乱れ混乱した情勢に乗じて、革命軍なる組織も立ち上がっていると聞く。彼らの目的は、世界政府を直接的に倒すことらしい。それを先導しているのが、世界最悪の犯罪者と言われているドラゴンという噂まである。一体、混乱した今の世の中でこれ以上に何を起こそうとしているのか。
おまけに、以前からずっと正体不明の集団について追っていたが、いまだに彼らの正体が判明していない。海軍の調査部隊に全力を上げて調べてもらったが、今のところ分かったのは彼らの組織名だけ。
どうやら、正体不明の連中は大日本帝国海軍などと名乗っているらしい。我々と同じ海軍という名を称しているみたいだが、もちろん我々海軍とは何の関係もない奴ら。その組織の大きさ、構成員、拠点、技術力やリーダーが誰なのか全貌がハッキリとしない。だが、彼らが確実に存在している事は掴んでいる。
あのバスターコールを発動させたオハラにて、大日本帝国海軍を名乗る者たちと接触したという報告を聞いていた。
オハラは一斉砲撃により瞬く間に焼け野原となり、現在は地図上からも存在を消された程の被害があった。接触したという大日本帝国海軍を名乗る連中は一斉砲撃に巻き込まれて死んだのか、それとも逃げおおせたのか詳細は不明。
また、最近ではシャボンディ諸島で商売をしている人間屋から商品を盗み出しているという報告もあった。商品を盗み出している者たちが、大日本帝国海軍を名乗る連中なのか定かではないが疑いが出ている。
そう。もう一つ面倒な問題が有った。人間オークションで商売をしている人間屋のお得意様である天竜人から、世界政府を経由して競売前の奴隷を「奪還」せよ、という要請が来ていた。暴れまわる海賊の捕縛や治安の維持よりも優先して、奪還の任務を遂行するようにと言われている。
本当に馬鹿らしい話である。しかし、この現状に異を唱えても事態は何も変わらないだろう。この件を全て解決するためには、海軍兵士を全員を動員したとしても難しいだろう。むしろ今は、混乱した世の中をこれ以上は乱さないようにしなければならない。
一つ一つの問題を片付けていく必要がある。海軍における最上位の階級である元帥と言っても自由には動けない。信じる正義はあるのに、今の立場に雁字搦めで窮屈さを感じていた。
「おい、センゴク! どういう事だ!」
「来たか、ガープ」
大声を上げてセンゴクの執務室にやって来たのは中将ガープ。難問の数々に顔をしかめるセンゴクとは別の種類の、苦虫をかみつぶしたような不機嫌そうな表情を浮かべて彼は執務室に入ってきた。
「この辞令は一体、どういう事だ!」
「お前の大将への昇進が決定した」
「なんだと。いや、俺は」
「聞けッ!」
怒りながら本題に入ったガープ。不満なのは、突然伝えられた昇進の辞令について。ガープは昇進の話を今回も断ろうとしたが、遮ってセンゴクは続ける。
「今までは、お前の要望を出来る限り聞いてきた。家族の事も理解している。しかし現状では、もうこれ以上にお前の昇進を先延ばしにすることは出来ない」
「……」
「海賊が日を追って増えているが、対抗するための兵士の数が圧倒的に足りない。そんな状況で、お前のような人材を遊ばせておくわけにはいかない」
ガープを中将から大将へと昇進させることで権限を増やし責任を負って働いてもらう。今までは昇進を断るガープの事情を色々と理解し、要望を可能な限り聞いてきた。だが時代の情勢が変わってしまい今回は、彼に昇進を受け入れてもらうしか道はない。ガープは、とうとう今回は断ることが出来ないと理解した。
「……わかった。昇進の辞令は受けよう。ただ、代わりと言ってはなんだが一つ願いがある」
「なんだ?」
「俺の後釜にクザンを。それと、何人か若手を昇進させてやってくれ」
「わかった」
現在の混乱した社会をこれ以上荒れないように動くことも大事だが、未来に向けて若手を育成しながら次世代に向けての準備も大事だとセンゴクは先を見据えていた。現場で働き続けてきたガープの言葉を信じれば、昇進させるのに実力は十分にあるのだろう。あっさりとガープの願いを聞き入れる。
こうして海軍のトップに立つ海軍元帥センゴクは、忙しい日々を送りながら正義の名のもとに治安維持に務める毎日であった。
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