戦国異伝供書
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第二十七話 幸村と茶その十一
「三つの家が大きいですな」
「大友、竜造寺とな」
「そして島津ですな」
「特に今は島津じゃな」
「あの家ですな」
「あの家が大きくなるやもな」
これは前田だけが見ていることではない。
「柴田殿や猿もじゃ」
「その様にですか」
「話が出ておる」
そうだというのだ。
「その様にな」
「左様ですか」
「だからあの家が九州を統一する前にじゃ」
「当家としては」
「動く」
「そうなりますか、では」
戦と聞いてだ、慶次は逸った。
「その時は思う存分働き」
「それまではじゃな」
「遊んでいましょう」
「それか殿のお傍にじゃな」
「おります」
「そして殿をお守りせよ。しかしな」
前田は慶次に忠告した、その忠告はというと。
「わかっておると思うが」
「殿に悪戯は、ですな」
「わしや権六殿なら殴り飛ばして終わりじゃが」
実際にそうしてきた、特に柴田は慶次が幼い頃から最も彼の悪戯の標的になっていて悪戯を仕掛けられる度に彼の頭を瘤だらけにしている。
「殿にはするでないぞ」
「というか殿に悪戯を仕掛けても」
「見破られてしまうか」
「はい、殿がそれがしの悪戯にかかることは」
このことはというと。
「一度もありませんでした」
「だからか」
「はい、幾度仕掛けようとしても」
慶次の悪戯好きは信長にも向けられていた、だが彼に悪戯を仕掛けてもなのだ。
「一度もです」
「かかったことはないか」
「左様です」
「そうか、しかし殿に悪戯を仕掛けるとは」
「なりませぬか」
「この不届き者が、覚悟は出来ておるか」
前田は慶次の話を聞いて怒った、そのうえで言うのだった。
「これから気が済むまで殴ってやるわ」
「おっと、そうはいきませぬぞ」
慶次は前田のその言葉を聞いて慌てて席を立った、そうして逃げようとするが。
勿論前田も逃がすつもりはない、それで逃げる慶次を追いかけて彼も席を立つのだった。戦がない間も織田家は政に励んでいたがそれ以外でも忙しかった。
第二十七話 完
2018・11・23
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