| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝供書

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十七話 幸村と茶その九

「お主は変わらぬな」
「わしはわしじゃ」
「傾いて生きていくか」
「ずっとな」
「何処までも傾きおるか」
 前田は二人の話特に慶次の言葉を聞いて述べた。
「これからもこれまでも」
「左様です」
「相変わらずじゃな。それがお主の道か」
「傾奇者の道ですな」
「天下一の傾奇者になりか」
「死ぬまで傾いていきまする、そして」
 明るく笑ってだ、慶次は前田と奥村に話した。
「殿に何かあれば」
「朱槍を手にか」
「そのうえで戦うか」
「そうします、殿については」
 信長にはとだ、慶次は笑って話した。
「どうもそれがしは惚れ込んでしまいまして」
「そこは我等と同じじゃな」
「それは変わらぬな」
「はい、ですから」
 それ故にというのだ。
「忠義を捧げていきまする」
「そうするか」
「幾ら傾こうとも」
「その所存で。しかしどうも殿は」
 慶次はふと直観で感じて述べた、目もふと左の斜め上にやられていた。
「妙な者達に狙われておるやも知れませぬな」
「崇伝や天海か」
 前田もこの二人については妖しいものを感じている、そのうえでの言葉だ。
「あの者達、津々木といいじゃな」
「音羽の城戸といい」
「天下人ともなればな」
 それならとだ、前田は慶次に答えた。
「命を狙われることもな」
「多くなる」
「それだけではないか、と言いたいが」
「それでもですか」
「どうもわしもな」
 前田は慶次に話した。
「幾ら何でもと思いはじめておる」
「妙ですな」
「うむ、あの二人の妖僧といいな」
「何かとですな」
「比叡山、高野山、一向宗もな」
 寺との戦でもというのだ。
「おかしかったわ」
「本来の僧兵や門徒ではなく」
「別の者達の気がしたしのう」
「戦をした時から」
「雑賀衆は確かに多くの鉄砲を持っておる」
 本願寺に味方をした彼等はというのだ。
「しかし民から成る門徒達の多くがじゃ」
「我等と同じだけの鉄砲を持っていましたな」
「その様なことがあるか、具足もよかった」
 鉄砲が持っているだけでなくだ。
「刀等もな」
「そう考えますと」
「やはりおかしい」
「拙者もそう思いますので」
「殿は何か者かに狙われておるか」
「それも尾張一国の主だった時から」
 まさにその時からだというのだ。
「あの時から」
「うむ、ではな」
「叔父上もですな」
「用心しておこう、しかしわしは今や大名じゃ」
 それだけの身分になったとだ、前田は慶次に話した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧