| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝供書

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十七話 幸村と茶その七

「ぼた餅ですか、よいですな」
「甘いものはやはりいいですな」
「それも皆で食べるとなると」
「よいですな」
「余計に美味しいです」
「そう思って作らせた」
 そのぼた餅をとだ、幸村も話した。
「それではな」
「これよりですな」
 穴山が応えた。
「共に」
「殿が煎れられた茶を飲み」
 由利も言う。
「そしてぼた餅も喰らう」
「久し振りに十一人でそうしますな」
 見れば望月は笑顔になっている。
「飲み食いを」
「やはりこうして集まって飲み食いするのが一番よいな」
 海野も笑っている。
「一人はどうにもいかぬ」
「うむ、一人で食うとどの様な馳走も限度がある」
 根津が続いた、
「美味さにな」
「それよりもこうして共に食うと美味い」
 筧はそのぼた餅を見ている。
「十一人全員でだと」
「殿も我等も揃えば」
 伊佐も微笑んでいる。
「どの様なものも最高の馳走になります」
「全くじゃ、我等十一人生きるも死ぬも同じ」
 清海は強い声で言い切った。
「ならばな」
「こうして共に飲み食いすれば最高の馳走となる」
 霧隠の言葉は冷静だ。
「ましてや殿が出されたならば」
「ではその茶を」
 最後に猿飛が言った。
「共に」
「飲んでくれ、そしてな」
 幸村はさらに言った。
「お主達に聞きたいことがある」
「何でしょうか」
「それは」
「一対」
「松永殿のことじゃ」
 彼のことだというのだ。
「あの御仁についてじゃがどう思う」
「悪党かと」
「それもこれ以上ないまでの」
「まさに天下の奸悪」
「そういうしかありませぬ」
 これが十勇士の見方だった。
「何といいましても」
「あれだけの悪人はいませぬぞ」
「宇喜多殿は実は違いますが」
「あの御仁は違いまする」
「どう見ても聞いても根っからの悪人」
「油断出来ませぬ」
「殿も近寄ってはなりませぬ」 
 こう口々に言うのだった。
「そのこと申し上げておきまする」
「若し殿に何かしようものなら」
「我等がお守りします」
「そしてあの御仁の首取ります」
「そうします」
 さらに言うのだった。
「ですから」
「あの御仁には近寄らず」
「そしてです」
「信用されぬ様に」
 これが十勇士達の言葉だった。
「殿には指一本触れさせませんし」
「何かしようとすれば即座にです」
「我らがあの御仁の首を取ります」
「そうします」
「ううむ、わしは一度お会いしてと思うが」
 そして話をしようというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧