| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

琵琶湖の人魚

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四章

「これがな」
「それで、ですか」
「そうじゃ、困っておる」
「揉めるつもりはないのですね」
「わし等もそんなつもりはない」
 毛頭とだ、鯰頭の長老は尾崎に言い切った。
「絶対にな」
「左様ですか」
「そうじゃ、どうにかならぬか」
「それは村の考えでしょうか」
「おおよそそうじゃ、折角いい国に来たというのに」
「それで揉めてはですね」
「どうにもならんわ」
 こう言ってだ、そのうえでだった。
 二人はここで二つの村を行き来して村人達の意見も聞いた、すると実際に二つの村人達は出来れば平和に共存したかった。
 このことを確かめてだ、尾崎は丘に上がってだった。
 安土の城下町にあるハイカラな珈琲屋でコーヒーを飲みつつ吉川に話した。
「道が見えてきたかと」
「そうなのか」
「こうしたことはよくある話ですね」
「そうだな、移民の問題だな」
「水産でも」
 彼が政府の中で携わっているこの政でもというのだ。
「よくあるので」
「そういえばな」
「はい、それにです」 
 尾崎は共にコーヒーを飲む吉川にさらに話した。
「環境問題ですね」
「外来魚だな、要するに」
「養殖しているうちはいいですが」
 それでもというのだ。
「その魚が逃げますと」
「厄介なことになるな」
「まあ放流するよりリスクは少ないですが」
「放流か」
「ブラックバスやブルーギルですね」
 具体的な例としてだ、尾崎はこうした魚達を挙げた。
「こうした魚みたいになるので」
「余計に厄介だな」
「はい、ですが」
「今回もだな」
「どう考えてもアマゾンの魚は琵琶湖にてはよくありません」
「生態系が乱れるな」
「そうなりますので」
 だからだというのだ。
「ここはです」
「折り合いをつけるか」
「別に村の風俗習慣はです」
 こちらはというと。
「相互交流で理解を深める」
「だからいいですね」
「これは問題がありません、ですが」
「魚や植物はな」
「移民側に止めてもらって」
 そしてというのだ。
「琵琶湖の魚の味に慣れてもらいましょう」
「そうしてもらうか」
「移民はいいですが環境は保護しなければ」
 こちらは守らなければというのだ。
「幾ら養殖でもです」
「それがいいな」
「はい、では」
「それではだな」
「これよりです」
「ことを進めるか」
「そうしましょう」
 尾崎は吉川に応えてだった。
 吉川と共にブラジルからの移民の村に行ってだ、そして鯰頭の長老に話した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧