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前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話

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はじめまして

 
前書き
「たんてい」の翌日の話です。 

 
「べぇ~るぅぅ~くぅぅぅ~ん?」

「ひゃひぃっ!?」

ギルドの換金所。

魔石の入った袋を渡し、お金を受け取った所で背後からエイナさんに肩を捕まれた。

「これはどういう事なのかなー?」

エイナさんが指差すのは、今日の稼ぎの入った袋だ。

総額7万ヴァリス。

エイナさんは僕に袋を握らせると、手を引いて指導室に連れ込んだ。

フードと外套を脱いで、バックパックを下ろす。

中は防刃布のワンピースに兎鎧なので、鎧を一部外す。

「説明してもらいましょうか」

僕の隣に座ったエイナさんが言った。

「えーと……なにをですか?」

「ベル君が今日どこまで潜ったのかを聞かせてもらえるかな? どうやってこの額を稼いだかもね」

「14階層付近でヘルハウンドとかミノタウロスとかを狩ってました」

「へー…14階層かぁ…」

エイナさんにが笑顔だ…。

「なに考えてるのよ君はぁ!?」

エイナさんが僕の肩に手を回し、締め上げる。

あんまり痛くない。っていうか当たってる!

「エイナさんエイナさん! 当たってます当たってます!」

「反省しなさい!」

「いやですからそんなにいたくないんですってば! 僕もうLev2なんですから!」

「……………は!?」

驚いて固まったエイナさんの腕から抜け出す。

「この前のリヴィラ壊滅事件。その時の戦いに参加して、上位モンスターを倒したんです」

という風にギルドには報告する手筈になっている。

僕のレベルアップは、幹部陣のおこぼれ、という形にしておかないといけない。

ロキ達が申し訳無さそうに言ってた。

そうしなきゃいけない理由は理解している。

それに、アイズさん、ベートさん、リヴェリアさん、団長、ティオネさんティオナさん…皆が僕の事を知ってくれている。

僕はそれだけで満足だ。

だいたいlevなんて技でひっくり返されうる物だ。

「ベル君…ファルナもらってどのくらい?」

「二週間と少しですかね」

「………………ふぅ」

なんかエイナさんが物凄く疲れたようなため息を吐いた。

「ランクアップの心当たりは?」

「毎日アイズさんにぼこぼこにしてもらってましたね。あと幹部陣からは一通り扱いてもらいましたよ。ティオネさんが意外と容赦ないんですよねぇ…」

「だ、第一級冒険者と連日模擬戦ですってぇ!?」

「はい。そうですよ」

「よ、よく生きてたわね…」

「じぶんでもそう思いますよ」

そのあとは色々と確認した。

お咎めは無しだった。

「あんまり、無茶したらダメだからね」

別れ際のエイナさんの言葉は、本当に僕を心配してくれているんだと、実感した。














ギルドからの帰りがけ、裏路地の方から慌ただしい足音と、剣呑な雰囲気がした。

「何事…?」

少し気になったので裏路地に入ってみる。

無論、何時だって鞘に納めたバルグレンを抜けるようにしてからだ。

裏路地から、さらに別れる小道に入ろうとした時だった。

「あぅっ!」

「ひゃっ!?」

だれかとぶつかった。

女の子だ。

僕よりも幾分小さい体。パルゥムだ。

団長より小さい。多分子供。

「見つけたぞ糞パルゥムが!」

なんかヤバそーなオッサンが女の子を追いかけていたみたいだ。

「君! ごめんよ!」

パルゥムの女の子を横抱きにする。

「ちょ!?」

「大丈夫! 直ぐに安全圏まで連れていってあげよう!」

女の子を抱いたまま、大きく飛び上がる。

「きゃぁぁぁぁぁ!?」

「黙って! 舌噛んじゃうと危ないよ!」

「ななななな何考えてるんですか貴女!? 初対面ですよ!?」

トン、と屋根の上に着地する。

「可愛い女の子とむさ苦しいオッサンなら可愛い女の子を取る! 可愛いは正義!」

「かっかわっ!? はわわわ…」

何この子可愛い。

からかいたい気持ちもあったけど、そんな場合じゃ無さそうだったので、取り敢えず二つ隣のメインストリートを目指す。

「アリファール!」

腰の空の鞘にアリファールを召喚する。

まず一つ目のメインストリートの端の屋根から飛ぶ。

「ヴェルニー!」

女の子を抱えたまま、風を纏って滑空。

ふわりと着地して、また屋根の上を駆ける。

そしてまたメインストリートを越える。

少しだけ屋根の上を行き、メインストリートとメインストリートのちょうど中間で地上に降りる。

「ここまで来れば安心だよ」

「へ? あ、はい」

女の子をおろす。

「僕はベル。縁があったら、また会おうよ」

もし縁があったなら、今度は、もっと平和な場所で。

「ヴェルニー」












黄昏の館に戻ると、もうご飯時だった。

「あ、ベートさん」

「おう。帰ったかベル」

食堂に直行すると、ベートさんに会った。

「あの、ベートさん。聞いてもいいですか?」

「なんだ」

「ロキファミリアって、上納金ってあるんですか?」

「特にねぇな。ただ、時々ファミリアが対象のクエストを受けなきゃなんねぇ。その時も注文のドロップアイテム以外は貰っていい決まりだしな。他と比べたら、そこら辺緩いぞ」

へー。そうなってたんだ…。

「で? なんでいきなりそんな話したんだ?」

「いえ…今日の稼ぎがかなりよかったのでファミリアに納めた方がいいのかと…」

「幾らだ」

「七万三千ヴァリスです」

「まぁ、いいんじゃねぇの? アイズ達ならその数倍は余裕で稼ぐからな」

「ふーん……」

その晩はベートさんの尻尾をもふもふしてたら寝落ちしてて、気づいたらベートさんの抱き枕にされてた。

めちゃくちゃビビった。













翌朝、朝食の余りを入れてもらったバスケットを持って黄昏の館を出る。

皆さんが『がんばれよー』とか言ってくれる。

嬉しいけど、子供扱いされてる気もしないでもない。

僕の考えすぎだろうか。

ダンジョン前の広場に行くと、朝早くから色んな人がいる。

これからギルドに出勤するであろう人や、僕のようにダンジョンアタックに向かう人。

その他にも冒険者向けにポーションの移動販売をする人や日雇いのサポーター。

「お嬢さんお嬢さん」

色んな人が居るものだなぁ。

「もうっ! 貴女ですよお嬢さん!」

ん?

振り返ると、赤いフーデッドローブを被った女の子が居た。

「あれ…? 君は昨日の…?」

「なんの話ですか? リリと貴女は初対面ですよ?」

でも、君は昨日のパルゥム…。

「どうしました?」

「えっと…君って昨日のパルゥムじゃないの?」

「パルゥム? リリはシアンスロープですよ?」

リリと名乗った女の子がフードを取ると、たしかに耳があった。

触ってみる。

「ふぁっ!? ひゃぅっ…」

「うん。本物だ」

「だからシアンスロープだっていってるじゃないですか!」

「ごめんごめん。で何の用?」

「あ、はい。サポーターを雇いませんか?」

「サポーター?」

「はい」

サポーターかぁ……うーん…悩ましいなぁ。

他の派閥の人の前では竜具を入れ替えられない。

でも、エザンディス無しでもサポーターが居たら…それに魔石の回収も…。

「うん。試しにやってみようかな。宜しくね。
所で、君の名前は?」

「はいっ! リリはリリルカ・アーデといいます! 宜しくお願いしますベル様!」






いや君隠す気ゼロじゃん……。 
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