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前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話

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りう"ぃら

「すごい…これがアンダーリゾート…」

見上げると、天蓋には水晶が煌めき、中央には泉と巨木がある。

そこから少し視線をずらせば高地に街が見える。

『世界で一番深い場所にある街』と呼ばれるリヴィラだ。

ギルドが放棄した物を冒険者が再建した物らしい。

「ふふ……」

ふと、後ろから笑い声が聞こえた。

見れば皆さんが笑っている。

「ゅ?」

「ああ、いや、すまんなベル。お前のリアクションが面白くてつい、な」

「むぅ……子供っぽくてわるかったですね」

「拗ねるなよ…ふふ…」

子供扱いされてる……。たしかにリヴェリアさんはハイエルフ…長命種だし実際長く生きてるんだろうけど…。

「んふふふー…可愛いねぇ兎君」

「ひゃひっ!?」

唐突に後ろから抱きつかれた。

ティオナさんだ。

「あっちょっ…ちょっ…まっ…あたっ…あたって…」

「当ててんのよ」

なぜそのセリフを!?

「おい、バカゾネス、そこら辺にしとけ」

「なぁにぃ? やっぱり妬いてるのベート?」

「ちげぇよ。ベルにその貧相な物おしつけんな。
せめて姉と同じくらいになってか「死ね」

気付けばティオナさんが僕から離れてベートさんに拳を放っていた。

「えーと……団長?」

「止めなくていいよ。いつもの事だ」

あ、そうなんだ…。

喧嘩は数分で終わり、リヴィラに向かう。

街に入るとなんかピリピリしてた。

これがリヴィラの街なのかと思ったが、団長曰く違うらしい。

僕とリヴェリアさんとレフィーヤ先輩は、広場で待ち、他の皆さんが聞き込みに行った。

「あのー、リヴェリアさん」

「どうしたベル?」

「さっきから『殺人』ってワードが聞こえるんですけど、よくあるんですか?」

「よくあったらこんなに騒ぐと思うか?」

「ですよねー」

ふと視線を感じると、レフィーヤ先輩から睨まれていた。

そちらに目をむけるとフイッと視線を反らされた。

まぁ…気まずいんだろうなぁ…。

前衛後衛の差はあれど、年下…というか新人に助けられてしまったら。

団長が戻ってきた。

どうやら宿屋で殺しがあったみたいだ。

いまから検分に行くらしい。

「この宿屋だな…ロキファミリアだ! 通して貰おうか!」

団長の声で人だかりが割れる。

その間を通り、宿屋に入る。

入った瞬間、むわっと血の臭いがした。

嫌な臭いだ。

アイズさんの後ろをついていくと、三人程が立っている部屋があった。

どうやら、ソコが犯行現場らしい。

アイズさんの後ろから中を覗こうとしたら後ろ襟を引っ張られた。

「ベル、レフィーヤ、見るな」

チラリと見えた部屋の中は赤かった。

きっと酷い有り様なのだろう。

僕とレフィーヤ先輩は宿屋の入り口に見張りとして立たされた。

戦力外通告だ。

レフィーヤ先輩は仏頂面だし周りの冒険者からは好機の目で見られるし…居心地最悪だ…

「おいテメェらそこで何してやがる!」

「ひゃひっ!?」

目の前に筋骨隆々で悪人面の男がいた。

眼帯をしていてノースリーブのバトルクロスを来ている。

「エルダー様ですね。ロキファミリアのレフィーヤ・ウィリディスとベル・クラネルです。
現在中では団長以下五名が検分中です」

こ、この人がボールス・エルダー…?

リヴィラのドン?

「チッ……まぁいい。通るぞ」

「どうぞ」

え? いいんですかレフィーヤ先輩?

エルダーさんが宿屋の中に入っていく。

「えと…入れて良かったんですか?」

「団長は誰もいれるなとは言ったけれど、ここでエルダーを入れないのは愚作よ。
それくらいわかりなさい」

「アッハイ」

「は?」

「わかりました熟慮します!」

「宜しい」

何故かドヤるレフィーヤ先輩。

あ、そう言うことか。

要するに、レフィーヤ先輩はお姉さんぶりたい年頃って訳だ。

なんというか、可愛い人だなぁ。

「何を見ているのですか」

「いえ、何も」

しばらくして団長達が出てきた。

封鎖したリヴィラで犯人探しだ。

「団長。ザートで封鎖しますか?」

「いや、ベルの力は極力さらしたくはない。普通に探そう」

耳打ちすると同じく耳打ちで返された。

そこから犯人は女だとか、脱げだの下品な輩が騒ぎだした。

アイズさん達が女性の身体検査をするらしい。

でも一部の人は団長の所に集まっている。

イケメンショタはモテるんだなぁ…。

僕も女顔じゃなかったらなぁ……。

そんな事をつらつらと考えていたせいで気づけなかった。

「ねぇ…キミぃ…」

気づけば、扇状に囲まれていた。

「な、なな、なんでしょーか?」

なぜか、僕の周りに女の人が集まっている。

「うふふふふ…わかるよぉ…わかっちゃうよぉ…」

「アマゾネスの嗅覚は誤魔化せないよ坊やぁ…」

助けてリヴェリアさん!

side out
















「ん? ベルはどうした?」

「見当たりませんね……まったくこんな時に何をしているのやら…」

レフィーヤがやれやれ、とジェスチャーをする。

不意に、ベルの声がした。

「ベルっ!」

リヴェリアが辺りを見渡す。

その瞳が人だかりを捉える。

「ほらほら! お姉さんと良いことしましょ!」「私が先よ!」「お姉さんのペットにならなーい?」「君何処の子?」

人だかりの隙間からチラリと見えた白髪。

リヴェリアが杖を握り締める。

こめかみに鋳型を浮かべ、怒気を漂わせる。

「レフィーヤ。ちょっと行ってくる」

「は、はい…………」

ブチキレたリヴェリアを前に、レフィーヤはさっと道を開けた。

人だかりに近付き、杖を一閃。

ケダモノが吹き飛ぶ。

「げぇ!? ナインヘル!?」「この子まさかロキファミリア!?」「やばい逃げなきゃ!」

リヴェリアが粗方ケダモノ共を蹴散らした。

ベルは中心でへたりこみ、涙目でエザンディスを抱いていた。

「ふぇぇぇ……リヴェリアさぁん……」

ベルがエザンディスを取り落とす。

「もう大丈夫だぞ、ベル」

リヴェリアはしゃがみこむと、ベルをだきしめた。

白髪を撫でる手つきは優しい。

「おい! あれ見ろ!」「ナインヘルが子供を…?」「本当に隠し子がいたのか!?」

ベートは騒ぐ外野を黙らせ、エザンディスを持ち上げた。

「リヴェリア。ベルを中に連れていけ」

「ああ、そうしよう」

ベルがぐずつきながら、リヴェリアに手を引かれて、宿屋の中に入っていった。

ベートはエザンディスを担ぎ、宿屋の前に陣取る。

「はぁ…メンドクセ…」

なんだかんだ言いつつ、面倒見のいいベートだった。
 
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