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戦国異伝供書

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第二十六話 検地と刀狩りその八

「お主達真田は源平藤橘のどれでもないな」
「はい、別の出自です」
「山の民達か」
「実は」
 その生まれはというのだ。
「そちらになりまして」
「だから本朝の者達ではあってもな」
「その四つの家には入りませぬ」
「そうであったな」
「山の民はまた別です」
 平地にいる者達とはというのだ。
「忍も元はそうだったと思いますが」
「修験道やそうしたことにも通じるか」
「また別の者達で」
 それでというのだ。
「我等もです」
「今の様になるまではじゃな」
「山にいてです」
「山で暮らしていてか」
「言葉も違っていたでしょうし」
「山の民の言葉じゃな」
「あれはまた違うものです」
 この国の言葉とは別のものだというのだ。
「それを喋っていてです」
「全く別の者達であったか」
「はい、ですが」
「崇伝や天海といった者達はな」
「山の民とはまた違いますか」
「これはわしの思うことだが」
 こう前置きしてだ、信長は幸村に話した。
「かつて勘十郎を惑わした津々木という者と同じでな」
「その者も確か謎に包まれておりますな」
「今も全くわからぬ」
 その氏素性が全くわからないというのだ。
「まさに妖人じゃ」
「そしてその妖人とは」
「あの者達もじゃ」
 崇伝、空海も然りというのだ。
「まつろわぬな」
「そうした者達ですか」
「その様な気がする」
「古書に出ている」
「そうじゃ、本朝が生まれた時におったな」
 信長は神武帝の頃からの話をした。
「あの時朝廷は多くのまつろわぬ者達を降したが」
「そのまつろわぬ者達の生き残りですか」
「まさかと思うが」
 それでもというのだ。
「あの者達はな」
「まつろわぬ者達の末裔で」
「そうじゃ、あの者達はな」
 これが信長がまさかと思いつつも考えていることだった。
「そうした者達でないかとな」
「思われていますか」
「あくまで思っておるだけじゃがな」
「そうした異形の者達が天下にいますか」
「そうじゃ、だとすればじゃ」
「これは天下にとってどれだけ恐ろしいか」
「そうやも知れぬと思うからな」
 だからだというのだ。
「わしも十勇士達にも命じたい」
「何としても探し出せと」
「そういうことじゃ、しかし」
 それでもと言うのだった。
「こうは言ってもな」
「十勇士達でもですか」
「そして飛騨者達でもな」
「そう簡単にはですか」
「見つからぬわ、相手もじゃ」
 その崇伝、天海達もというのだ。
「何処に隠れておるかわからぬが」
「尻尾を出さぬ故に」
「中々見付からぬ」
 それでというのだ。
「だからじゃ」
「じっくりとですか」
「探させよ」
 まさにというのだ。
「よいな」
「それでは」
「それでじゃが」
 信長は幸村に十勇士達の命のことを伝えさせるとすぐにだった、あらためてこう言ったのだった。 
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