クロスウォーズアドベンチャー
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第54話:皇帝竜復活
クリスマスの騒動から翌日の朝、姉の悲鳴を聞いて大輔は慌ててリビングに向かう。
「どうした姉貴!?何が…」
「昨夜BSフジ生放送中、突然現れた黒い塔に驚いた観客が大混乱を起こし、怪物を見たという奇怪な事件が発生しましたが、今日になって同じものと見られる黒い塔が、突如世界中に出現した事が分かりました……」
見慣れたダークタワーがパリに、ニューヨークに、香港に…世界中に当たり前のように建っていた。
「とんでもないことになったな、大輔」
「ああ…」
D-3Xの中からブイモンが話しかけてきた。
「くそ…っ、どいつもこいつも…どうして大人しく過ごせねえんだよ、くそったれ!!」
苛立たしげに叫ぶ大輔はニュースで日本でダークタワーとデジモンが現れたと言う田町に向かうことをヒカリのD-ターミナルにメールを送る。
「っ!?」
同じくニュースを見ていたヒカリはD-ターミナルに送信されたメールを読み上げた。
「ヒカリ、何してんだ?光子郎の所に行くぞ!!」
「うん、お兄ちゃん。大輔君は田町に行くって」
「田町って…こんな時にか!?」
「こんな時だからだよ。田町にもダークタワーとデジモンが現れて、1人だけだと危ないわ!!」
いくらワームモンが強かろうと1体だけでは多勢に無勢である。
「(大輔君、賢君をお願い!!)」
苦楽を共にした仲間の身を案じながらヒカリは太一と共に泉家に。
一方田町ではダークタワーが機能しているために優しさのデジメンタルでワームモンをアーマー進化させ、ダークタワーを破壊しようとした。
しかし、街で暴れているトリケラモンに阻まれてしまい、このままでは父と母が暮らす街が…。
「プラズマシュート!!」
街で暴れているトリケラモンに向けて放たれたプラズマ弾と誘導ミサイル。
威力を限りなく落としたために精々トリケラモンを怯ませるだけで終わった。
「待たせたな賢!!」
「遅いぞ大輔!!」
「これでも急いで来たんだけどなあ!!」
勢いよくプラズマ弾を投擲してダークタワーを粉砕した。
トリケラモンは雄叫びを上げながらマグナモンに突進してきた。
「チッ、興奮状態のせいか力の差が分からないようだな。」
舌打ちしながら片手を前に出すマグナモン。
トリケラモンが頭部の角を突き出して突進する。
トリケラモンの必殺技、トライホーンアタック…シンプル極まりない攻撃だが、トリケラモンのパワーを活かした必殺技だ。
「!?」
「悪いが眠ってもらうぞ。安心しろ、目が覚めた時にはデジタルワールドだ!!!」
片手でトリケラモンの突進を止めると、脳天に容赦のない殴打を叩き込んだ。
「くっ、流石に旗色が悪いね!!逃げるよマミーモン!!」
「お、おう!!」
「…何処へ逃げるつもりだ?」
「逃がさないんだから!!」
「「っ!!」」
マミーモンとアルケニモンが振り返るとブラックウォーグレイモンとなっちゃんがいた。
「ここに貴様らがいたのは好都合だ。いい加減目障りだったからな…ここで消えてもらうとしよう」
「あ、あんた!!誰があんたを作ってやったと…」
「安心しろ、苦しまないよう…一瞬で息の根を止めてやろう…!!」
ドラモンキラーを構えるブラックウォーグレイモンと槍を構え、力を解放して成長期でありながら並みの成熟期を上回る力を発して槍を構えるなっちゃん。
アルケニモンとマミーモンの顔色が真っ青になった…その時である。
「悪いが…そいつらに死なれたら困るんだ。まだまだ働いてもらわなければならないからね」
「ん?」
「誰…?」
「「ああ、ボス!?」」
ブラックウォーグレイモンとなっちゃんが振り返り、マミーモンとアルケニモンが安堵の表情を浮かべてボスと呼んだ。
青白い肌と痩せこけた体、尋常ではない危険な意志を孕んだ双貌。無造作に伸びた長髪、着込んだロングコートも相まって、どこか危険人物のような雰囲気を漂わせている。
「ーーーーっ!!?」
男の纏う異様な何かに恐怖を抱いてブラックウォーグレイモンの後ろに隠れる。
「貴様…何者だ?ただの人間ではないな…?」
「…及川悠紀夫…そいつらの創造主さ…ブラックウォーグレイモン…100本のダークタワーから生まれたデジモン…そしてそこにいる闇でありながら闇ではないデジモン…お前達の力…利用価値がありそうだな」
「何だと?」
ブラックウォーグレイモンが及川と言う男の発言に不快そうな表情を浮かべた。
「ブ、ブラック…」
「?…どうしたナツ?」
ブラックウォーグレイモンの背後に隠れて震えているなっちゃんの姿にブラックウォーグレイモンは目を見開く。
「あ、あの人…普通じゃないよ…!!」
「鋭いな…残念だ。時間があればその力は是非欲しかった…」
「「っ!?」」
及川の体から醜くどす黒い何かが現れ、及川が手を前に翳すと凄まじい闇の波動が放たれ、ブラックウォーグレイモンとなっちゃんを吹き飛ばした。
「うおおおお!?」
「きゃあああああ!?」
吹き飛ばされたブラックウォーグレイモンはなっちゃんを抱えると地上すれすれで体勢を立て直した。
「な、何だ今のは…あれが人間の持てる力か…!?」
ブラックウォーグレイモンは大量の汗を浮かべながら不敵な笑みを浮かべてアルケニモンとマミーモンを従えながら去っていく及川を見て目つきを鋭くさせる。
「ぐっ…」
「「ブラックウォーグレイモン!!なっちゃん!!」」
「ブラックウォーグレイモン、アルケニモンとマミーモンは!?」
「…すまん、逃した」
マグナモンの問いにブラックウォーグレイモンが悔しげに言う。
大輔は体を震わせるなっちゃんを何とか落ち着かせようと抱き締めていた。
「大輔、これからどうする?日本にあるダークタワーを破壊するだけなら今日中に出来るけど、世界中となると…」
マグナモンからブイモンに退化すると大輔に尋ねる。大輔が今最も頭を悩ませている問題である。
マグナモンとブラックウォーグレイモンをデジクロスさせてもとてもではないが1日でどうにか出来る問題ではない。
やはり一度泉家に向かうべきかと全員に指示を出そうとした時であった。
【ん!?】
天から伸びてきた光がブイモン、ワームモン、ブラックウォーグレイモン、なっちゃんに当たる。
「ん!?」
「これは…」
「何だこの光は…力が漲るだと…?」
「ん…何だか力が湧いて…シスタモン進化、シスタモン・ノワール!!」
なっちゃんが進化し、成熟期のシスタモン・ノワールに進化する。
「なっちゃんが成熟期に進化した?おまけにブラックウォーグレイモンの暗黒パワーが完全に漏れなくなっちまった。」
「ブイモン…」
「ああ、今なら出来るかもしれないなインペリアルドラモンに」
「っ、本当かい?ワームモン?」
もし本当なら世界中のダークタワーの破壊作業の効率が大幅に向上する。
インペリアルドラモンはそれだけ超高機動を誇るデジモンなのだ。
「やろう!!」
「ああ!!」
ブイモンとワームモンを成熟期に進化させ、D-3Xを構えた。
「エクスブイモン!!」
「スティングモン!!」
「「エヴォリューションクロス!!」」
「パイルドラモン!!…パイルドラモン進化、インペリアルドラモンDM!!」
大輔と賢は久しぶりに目にした。
巨大な体、黒と金の装甲、そして紅い翼を持つ皇帝竜の名を冠するデジモンを。
そしてその姿は泉家にいるヒカリ達も見ていた。
「大変です!ただいま、眩い光に包まれて、怪獣が更に大きく姿を変えました!!」
パソコンの画面で興奮気味に喋るニュースキャスターとその背後のビルの間から姿を見せたインペリアルドラモンDMを見て、思わず呟いた。
「インペリアルドラモン…DM…」
「ヒカリちゃん、あれがそうなの?」
「うん、今までどんなに練習しても出来なかったのに…」
「恐らく並行世界の未来では進化を失ってしまった年月が長かったためにエネルギーが満ちていたのだ。だから大輔達とブイモン達が条件を満たせば容易に進化出来た。」
ヒカリの隣にいる青年が説明してくれた。
チンロンモン復活のお陰で、今の姿に戻れたゲンナイが。
「何で未来のことを知ってるの?もしかしてこの世界のホメオスタシス?私達のことをこっそり調べていたのね…悪趣味だわ」
テイルモンが苦々しげに言うと、ゲンナイは苦笑した。
「まあ、そう言うな。お前達もチンロンモンの光を浴びた…今ならデジクロスの力を借りなくても容易に完全体になれるはずだ」
「…完全体…私達もようやく本領を発揮出来そうだわ」
「でも、インペリアルドラモンDMに進化出来たのは良いんだけど…FMにモードチェンジ出来るのかな…?」
ヒカリは思わず呟いた。
インペリアルドラモンDMは確かに強力ではあるが、インペリアルドラモンと言うデジモンが真価を発揮するのはモードチェンジしたインペリアルドラモンFMの方だ。
ヒカリのその疑問にはゲンナイが渋い表情を浮かべて顔を横に振る。
「残念ながら、チンロンモンのデジコア1つではインペリアルドラモンDMへの進化を促すだけで精一杯らしい。伝説のロイヤルナイツの始祖の片割れの力を引き出すのは四聖獣の力を持ってしても困難だということだろう…だが、既にロイヤルナイツの守りの要への進化とブラックウォーグレイモンまでいるのだから充分インペリアルドラモンFMの穴埋めは出来るだろう」
実はホメオスタシスはチンロンモンのデジコア提供のことでかなり悩んだのである。
既に戦力は未来世界で得た力で大幅な強化がされている。
ロイヤルナイツの守りの要と100本のダークタワーで出来たダークタワーデジモンまでいるというのにこれ以上の強化はデジタルワールドのパワーバランスを崩しかねないのではないのかと、しかし世界中を回るにはインペリアルドラモンDMの力が必要不可欠であるためにホメオスタシスは了承した。
「そうですか…」
ヒカリは少し残念そうに画面に映るインペリアルドラモンDMを見つめていた。
そして田町の大輔達はインペリアルドラモンDMに乗り込んで日本中のダークタワーを粉砕した。
「なあ、インペリアルドラモン?お前、ダークタワーの探知能力なんかあったか?」
「いや、あの光を浴びたことでダークタワー探知能力を得たようだ。」
「ふん、話している暇があるのか?デジモン達をデジタルワールドに帰さねばならんだろう?」
「私も進化しちゃったから張り切っちゃうよ~!!」
「うん、なっちゃん。成熟期に進化出来て嬉しいのは分かるけど抱きつかないでくれるかな?」
「大輔、君…顔が真っ赤…」
「賢、それ以上言ったら殴る」
現実世界に現れたデジモン達をデジタルワールドに強制送還させた後、ブラックウォーグレイモンはブラックアグモンに、なっちゃんはシスタモン・ブランに退化し、泉家に到着するとヒカリ達と合流した。
「予想以上の速さだ…」
予想よりも早く終わったことにゲンナイは目を見開いている。
「大輔君、賢君。無事で良かった…」
「ありがとうヒカリさん。心配かけたね」
ヒカリに笑みを浮かべながら言う賢。
「それにしてもインペリアルドラモンは相変わらず圧倒的ね」
テイルモンが相変わらず圧倒的な力を誇るインペリアルドラモンDMの巨体を見上げながら呟く。
「大輔達だけに任せるのではない。お前達にも、役割はある」
全ての選ばれし子供達が力を合わせる時が来たのだ。
「……教えて下さい。ゲンナイさんは、今まで何をしていたんですか?」
伊織の疑問に、ゲンナイはすぐに答えてくれた。
「3年前、デジタルワールドが現実世界に異常接近したのを覚えているかな?」
「はい、覚えています」
「あの事件の後、世界中の人達が目撃したアポカリモンとの最終決戦…それ以来、各国の軍の研究所や各情報機関で秘密裏にデジモンとデジタルワールドの研究が行われてきたのだ。下手にデジモンが公になれば、何に悪用されるか分からない…。私達は、それとなくデジタルワールドやデジモンの存在を否定するようにデータを組み替えていたのだ」
「それってゲンナイさんにも仲間がいるんですか?」
“達”と言う単語が気になった京がゲンナイに質問をする。
ゲンナイはその問いに頷くと、京に笑みを向けた。
「ああ、今、私の仲間は世界中の選ばれし子供達と行動を共にしている」
「それよりもゲンナイさん、ダークタワーが現れた場所を教えてくれないか?」
大輔が尋ねるとゲンナイは頷く。
ゲンナイが画面に手を翳すと、何も操作していないにも関わらず、画面には世界地図が現れる。
「これが現実世界にあるダークタワーか…?」
「ニューヨーク、香港、モスクワ、メキシコ、パリ、シドニー…か…」
大輔と賢が世界地図を見つめながら呟く。
「この6カ所…デジタルワールドはD-3でなければ開けない。そこでお前達はインペリアルドラモンでその世界の6カ所に飛び、現地の選ばれし子供達と力を合わせてデジモン達をデジタルワールドに追い返して欲しいんだ」
「ああ、インペリアルドラモンDMに進化出来たことで世界一周も何とか出来そうだ。今日中に終わらせられそうだぜ」
「インペリアルドラモンだと世界を回るのに30分とかからないだろう……現地では私の仲間が待っている、行け!選ばれし子供達よ」
そう言うとゲンナイは消えた。
恐らく自分の任務に戻ったのだろう。
「ああ…ゲンナイさん…」
「消えた…」
「きっとまた、自分の任務に戻ったのでしょう」
「よーし!俺達も行こうぜ、世界へ!!」
「光子郎…」
太一の言葉に頷いた子供達の後ろから、光子郎を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、光子郎の母の佳恵が何か大きな包みを持って立っていた。
光子郎は佳恵の元へと駆け寄っていく。
「お母さん…心配しないでください、その…なるべく、早く、帰ってきますから…」
光子郎の言葉に、佳恵は微笑んで手元の包みを光子郎に差し出す。
「これは…?」
「何か…みんなが出かけるような気がして…おにぎり、作ってきたの…」
光子郎は大切そうにその包みを受け取ると、佳恵を見上げた。
「ありがとう、お母さん」
光子郎の感謝の言葉に佳恵は嬉しそうに微笑む。
「それじゃあ行きますよ。出来るだけ時間短縮したいんで…ヒカリちゃん、賢。行くぞ!!」
「「分かった」」
大輔、ヒカリ、賢がD-3Xを構えた。
「「「オールデジモンズ…アンノウンクロス!!!」」」
インペリアルドラモンDMに京達と太一達のパートナーが融合していく。
「インペリアルドラモンXDM(イクスドラゴンモード)!!!」
見た目はインペリアルドラモンHDMとあまり変わらないが、仲間達の力を1つにしたので大幅にパワーアップしている。
インペリアルドラモンXDMは凄まじいスピードで世界中を駆け巡るのであった。
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