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戦国異伝供書

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第二十六話 検地と刀狩りその五

「雪斎達の話も聞いたうえでな」
「そうしてなのですな」
「江戸の街全体に結界を張る様にしておる」
 江戸城だけでなくだ。
「やがて江戸の鬼門、東北の方に大きな社も設けたい」
「江戸の東北にも」
「日光の辺りにな」
 場所はそこだというのだ。
「そこに大きな社を築いてな」
「江戸の鬼門の備えとしますか」
「どうも江戸の辺りは何かとある様じゃ」
 信長は江戸のことも話した。
「地震が多いというし何かと災厄が招かれるという」
「だからですか」
「江戸は城だけでなくな」
 それに加えてというのだ。
「多くの寺や社も設ける、そしてな」
「江戸におる魔をですか」
「封じてじゃ」 
 その様にしてというのだ。
「そしてじゃ」
「東国の政も安泰にしますか」
「そうしていく、よくわしは神仏を信じぬと言われておるが」
 巷で信長をそうした者だと言う者は多い、だが信長自身が言うにはだ。
「そもそも織田家は何じゃ」
「はい、越前の宮司です」
 丹羽は信長の今の問いにすぐに答えた。
「そのはじまりは」
「そうであるな」
「だからですな」
「神主の家でじゃ、これまで寺を築いたこともある」
「それならですな」
「神仏は信じておる、ただ他の者達と違う考え方じゃ」
 信長の神仏への考え方、それはというのだ。
「それだけじゃ」
「左様ですな、だからこそ」
「安土でも大坂でも江戸でもそうするのじゃ」
「そしてそのうえで」
「天下を護る」
「魔からもですな」
「そうしていく、ではな」
 ここまで話してだ、信長は丹羽に安土城を築かせた。勿論大坂城や江戸城もそうさせた。そうして
天下の政を進め。
 都も整えた、信長は今は都にいてその整いを見て言った。
「都に入る度にな」
「整ってきているとですな」
「見ておる」
 前田玄以に対して述べた言葉だ。
「有り難いことにな」
「ではこのまま」
「街の道を整えてな」
「鴨川の堤もですな」
「整えていくのじゃ、よいな」
「その様にしていきまする」
「してじゃ」
 さらにだった、信長は玄以に顔を向けて彼に問うた。今は二条城にいてそこで玄以達に対して語っているのだ。
「一つよいか」
「何でしょうか」
「うむ、金地院はどうなっておるか」 
 崇伝のいたそこはというのだ。
「あの寺は」
「あの者がいなくなりますと」
 玄以は信長に剣呑な顔で答えた。
「急にです」
「どす黒さはなくなったか」
「あの得体の知れぬ黒さが」
「そうか、そしてじゃな」
「天海めがいた寺も」
 そちらもとだ、今度は増田が信長に話した。
「今はです」
「奇麗なものか」
「そうなりました」
「そして二人の行方はじゃな」
「全くわかりませぬ」 
 幾ら探してもというのだ。 
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