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真ソードアート・オンライン もう一つの英雄譚

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第一部
幕間の物語
  その頃

 
前書き
長らくお待たせしましたが、今回は短いです…… 

 
「ハッ……ハッ……」

私は走っていた。
好意を寄せているある男の子を探しているのだ。

「ハッ……ハッ……」

11層の主街区《タフト》を飛び出して圏外の砂漠エリアを私ことコハルは辺りをはしりながら見回す。
しかし周りには《ナーガ》系のMobや《ワーム》系のMobばかりしか見当たらなかった。

「コハル!どうだ?」
「キリトさん……ダメです。ここにもアヤトは居ないみたいです……」
「そうか……」

11層の圏外エリアはコハルとキリトがアヤトを探していた。ここ3時間近く二人は走りまわっていたが、アヤトの姿形も見当たらなかった。
その他にもケイタとサチは《タフト》内を。
リズベット、ミスト、シリカ、アスナは他の層の町を。
クラインは風林火山の面子を呼んでしらみつぶしに各層の圏外をエギルと元アニキ軍団達やレジェンドブレイブスの人達と一緒に回ってくれている。

「まったくアヤトったら!どこに行っちゃったの……!」
「とりあえず一旦みんなで集まって捜索の結果を聞こう。もしかしたら誰かが何かしらの情報を掴んでいるかもしれない」
「そうですね……。キリトさん、本当にアヤトがご迷惑をお掛けしてすみません」
「何、コハルが気にすることないさ。元々はアヤトが何処かに行ってしまったのが原因だし、見つけたらアイツに美味い飯でも奢らせようぜ!」

キリトさんの冗談に私は少し元気をもらった。私たちは《タフト》にある『旧月夜の黒猫団ギルドホーム』に集まる。
全員が集まると、一人ずつ捜索結果を報告していった。が、やはりアヤトの行方を掴んだ人は居なかった。

「キリの字よぉ、もういっぺんアヤトが居なくなった時のコトを教えてくれねぇか?」
「ああ……あの時は朝早くでさ。タフト内は霧が濃くて遠くが見渡せないぐらいだったんだ。たまたま早く起きたから外の空気でも吸ってと思ったんだけど、そんな状態だったから戻ろうと思ったんだ。そうしたらアヤトが外にいてさ、俺に何だか変な事を訊いてきたんだ。その……俺にそっくりだけど白いコートを着たプレイヤーを知ってるかって」
「キリト君に似ていて白いコートを着たプレイヤー?そうアヤト君は言っていたの?」
「ああ。俺はそんなプレイヤーには会ったことなかったって言ったら何だかお互い少し気まずくなってさ、そうしたらメッセージでネズハから『ライト・コンダクター』のメンテナンスが終わったって来たから取りに行くって言ってた」
「はい。確かにあの時、アヤトさんに『ライト・コンダクター』のメンテナンスが丁度完了したのでメッセージを送りました。そうしたら『すぐ行く』ってメッセージが来て、待ってたんですけど一向に現れる気配が無くて……」

私はネズハさんから受け取ったアヤトの『ライト・コンダクター』を見つめながら話を聞いていた。

「私、この事を一度団長に話してみる!団長だったら何か知ってるかもしれないから!ちょっと行ってくる!」
「あ……待ってアスナ!私も一緒に行くよ!」

アスナと私はギルドホームを飛び出すと、55層の血盟騎士団の本部に向かう。本部の前に行くと、門番の団員が慌てて敬礼して私たちに道を開ける。団員達を手で制して中に入ると、団長室前に着くと、ドアをノックした。

「入りたまえ」

そう短く声がかかると、私たちはドアを開けて中に入った。

「お疲れ様ですヒースクリフ団長。突然ですが、ヒースクリフ団長にお聞きしたいことがあります」
「ふむ。アヤト君が行方不明になっていることと何か関係があるのかね?」
「!?なぜアヤトが行方不明になった事を知っているんですか!?」
「コハルくん。今はなぜ私がその事を知っているのかよりも、別に話し合うべき事があるのではないかね?」
「!!……はい。その通りです」

よろしい。と団長が言うと、私たち2人を見据える。

「たまたまアヤト君が行方不明になったという話を聞いてね。私の方でも部下を派遣して探させてみたのだが、見つける事が出来なかった」
「そうでしたか……お気遣いありがとうございます」

私達はぺこりと頭を下げる。

「アヤト君の事だからその可能性は無いとは思うが、第1層の『黒鉄宮』を見てくるといい。アヤト君の名前に線が引かれていれば残念ながらアヤト君は死んでしまっている」
「そう……ですよね。では失礼します」
「無事に見つかる事を祈っているよ」
「ありがとうございます」

私たちは団長室を出ると、2人の男性プレイヤーがやってきた。2人は私たちに気がつくと、

「これはこれはアスナ様にコハル隊長ではないですか!お疲れ様です!」
「ゴドフリーさんに……クラディール」

相変わらず暑苦しい感じのゴドフリーさんと先日の一件から1番隊からゴドフリー率いるの2番隊に転属されたクラディールと鉢合わせた。クラディールは何とも言えない表情でコクっと頭を下げる。

「たった今クラディールの面談を済ませてきたところでして、お二人は?」
「私たちも色々ありまして……」
「お先に失礼しますねゴドフリーさん」

早々に2人から立ち去ると、本部を飛び出して転移門に触れる。

「「転移《はじまりの街》」」

私たちの体が青白い光に包まれる。気がつくとはじまりの街に着いていた。辺りはもう暗くなってきており、出店のランプが点灯してほんのり明るい。

「行こう!」
「うん!」

私たちは明るい中心地とは逆にランプの付いていない黒鉄宮に向かう。中は薄暗く、少し肌寒い。先程までの中心地とは比べ物にならない程に無機質で冷たい場所だ。
ズンズン進んで行くと、《生命の碑》が見えてきた。あれ?誰かいる?

「お?2人とも来たな」
「「キリトさん(くん)!?」」

生命の碑の前に立っていたのはキリトさんだった。

「アヤトの名前ならあそこだぜ」

私たちはキリトさんの指していた所を見る。
そこにはアヤトの名前がしっかりくっきりと刻まれていた。それを見たコハルとアスナはへなへなと座り込んだ。

「これでアヤトが死んでない事は確かだな」
「そうですね……。ならアヤトは何処に……」
「今日はもう戻ろう。アヤトは生きてたんだ。あいつならそう簡単に死ぬようなタマじゃない……だろ?」
「……そうですね」

私達は頷き合うと、黒鉄宮からはじまりの街中央部へのゲートに進んだ。
ゲートを潜り抜けると、私はある事に気がついた。

「ここ……どこ?」

私は一言こぼした。視線の先に写っているのは温かい雰囲気だったはじまりの街ではなく、一面の原っぱ。 Mobのような物がいる事を考えると、ここって

「圏外……?うそ……」

振り向くと、先程まで一緒に居たキリトもアスナもいない。コハルは転移結晶を取り出すと、

「転移!《はじまりの街》」

伸ばした手の結晶は何も反応がない。他の街の名前を言っても同様だった。

「これはどういう事なの……」

ゾクっと私の中で震えが起こる。転移が出来ない謎の場所。ここで助けが来るかもわからない助けを待たなければならないのか。

「嫌だよ……助けてアヤト!」

ハッとその名前である事が頭によぎった。
もしかして、ここに私同様にアヤトが転移して戻れなくなっているのではないかと。薄暗いが、周りを見る限りこれまでの何処にもこんな場所はなかった事を踏まえると未知のエリアかシステムのバグか何かなのかもしれない。それなら辻褄が通った。

「アヤトを探してみよう」

私はこうして薄暗い森の中をアヤトを探しに行くのだった。 
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