クロスウォーズアドベンチャー
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第47話:見守る者
ブラックウォーグレイモンとの激闘を終えてスカウトに成功した大輔達は現実世界でダークタワーを破壊、復興作業を繰り返す日々を送っていた。
時たまブラックウォーグレイモンを交えて特訓(マグナモンの状態で)をしていたりする。
「ふう…今日も疲れたな。ブラックウォーグレイモン、傷は治ったか?」
「問題ない、この中では傷の修復速度が早まるようだな」
100本のダークタワーデジモンのブラックウォーグレイモンは外に出ると相当の影響を与えてしまうようだが、D-3X内なら世界に影響を与えないで済むので現実世界では基本的にD-3X内…まあこれはブイモン達にも言えることではあるが。
「ブラックウォーグレイモン、お前からすれば現実世界ってどういう世界に見える?やっぱりお前から見てもデジタルワールドに比べれば不思議な世界なのか?」
「………分からん。ただ、平和で衣食住に恵まれているが、そこに住んでる人間はどこか満足しておらず、何か不安を抱えているような奴が多かったな」
大輔の問いにブラックウォーグレイモンは少しの間を置いた後に答えてくれた。
「うーん、やっぱりお前もそう思うか。そりゃあ人間は俺みたいに簡単に何でも割り切れたりする奴ばかりじゃない。色々失敗して、何が起こるのか分からない明日に不安を抱えてる奴が多いのかもな」
「不安か…生きるために邪魔になるならばそんな物など感じなければいい。何故一々不安を感じなければならない?」
「うーん、でも多分俺達がデジタルワールドで危険な目に遭っても生きていられんのはその不安とか怖さを感じることが出来る心があるからじゃないか?」
「?」
疑問符を浮かべるブラックウォーグレイモンに大輔は言葉を紡いでいく。
「何て言うかな…不安とか怖いとか感じることが出来ないと…俺が言うのもあれだけど、後先考えないで無茶ばかりする命知らずの無鉄砲な奴ばかりになっちまう。そう言う無鉄砲さにブレーキをかけるために不安とか怖さを感じることが出来る心があるんじゃないか?お前もそうだろブラックウォーグレイモン?戦いの最中、危機感を感じて無意識に心に体が引っ張られることってないか?」
「…まあ、無くはないな」
戦いの最中に危機感を感じて無意識に体が動くこともたまにある。
「だが、俺は100本のダークタワーから生まれた無機物だ…無機物である俺に何故心があるのだろうな…」
ブラックウォーグレイモンの疑問に大輔は少し頭を悩ませた。
「うーん、100本のダークタワーが融合してブラックウォーグレイモンになる途中に何か起きたとか色々考えられるけどさ、取り敢えずあるんだからそれで良いんじゃないか?寧ろ心があってラッキーなんじゃないかお前?」
「何故だ?」
「よーく考えてみろよ心がないってことは他のダークタワーデジモンと同じようにアルケニモンの操り人形みたいなもんだ。お前からすればアルケニモンの操り人形なんて嫌だろ?」
「当然だ」
「心がないとお前の好きな戦いが何の面白味もないただの作業に成り下がるんだぜ?」
「………む…う……しかし、心があって他に何が得られる?」
唸るブラックウォーグレイモンだが、他にも疑問があるのか大輔に尋ねる。
「うーん、仲間とかライバルとか…こういうのは俺じゃなくてデジモンの方が良さそうだ。明日聞いてみるか?」
「そうしよう」
翌日、デジタルワールドに到着してD-3Xから出されたブラックウォーグレイモンはいきなり質問した。
「心とは何だ?心があって何が得られるのだ?」
【へ?】
いきなり質問された賢達は目をパチパチさせた。
「いきなり聞かれてもさっぱりだろ。実はな…かくかくしかじかのほにゃららなんだ」
「それじゃあ分かりませ…」
「「ああ、成る程…ダークタワーデジモンであるブラックウォーグレイモンに何故自分に心があるのかを疑問に思って、取り敢えずあるならそれでいいってことで落ち着いたけど、心があって何が得られるのかを知りたくなったんだね?」」
意味不明な説明法に伊織が顔を顰めるが、賢とヒカリはあっさりと内容を理解して説明してくれた。
これが付き合いの長さと深さか。
「「何で分かるの?」」
「「いや、何となく」」
タケルと京の当然の疑問に賢とヒカリは何となくで済ませた。
こればかりは付き合いの長さと深さの問題だ。
そしてブラックウォーグレイモンの疑問に頭を悩ませる一同。
「心があればうみゃー食い物に感動出来るだぎゃあ!!」
「あんた食べ物ばっかりね。えっと…仲間とか…」
「それは昨日俺が言った」
アルマジモンの言葉に呆れながらテイルモンが頭を悩ませながら言うが残念ながら先に言われていた。
「うーん…例えば私の場合は1人でケーキ」
「心があれば、色々なことを感じることが出来ますよ。例えば、平和な街を見て穏やかな気持ちになったりとか、友達と一緒にいて楽しいと思えたりとか。もしかしたら未知の物を見聞きして触れた時の感動とか」
京の1人でこっそりケーキを沢山食べた時の感動を説明しようとしたが、伊織がそれを遮ってブラックウォーグレイモンに言う。
「未知の物とは?」
「え?えっと…」
「君は生まれたばかりだからデジタルワールドの全てを知ってるわけじゃないでしょ?見たことない物とか場所なんて沢山あるはずだよ」
タケルが言うとブラックウォーグレイモンは確かにと頷いた。
今までは強い相手を捜していたため、周りのことなど気にかけていなかった。
「とにかく戦うことばかりが楽しいことじゃないと思うの。例えば…はい」
ヒカリが箱から焼き菓子をブラックウォーグレイモンに差し出す。
「それは?」
「カップケーキ。ブラックウォーグレイモンは食べ物を食べたことないでしょ?」
「…?別に食物の摂取など不要…」
「ちょっと口に入れてみろよ。もしかしたら食えるかもしれないじゃないか」
「…………」
促され、渋々と口の中にカップケーキを放り込むと不思議な感覚が口内を満たす。
「ど、どう…?」
無言のブラックウォーグレイモンにドキドキするヒカリ。
一体どんな答えが彼から飛び出るのだろうか?
「…不思議な…悪くない感覚だ。」
「え?」
「口の中に入れた途端、今まで感じたことのない感覚を覚えた。悪くない…この感覚はなんなのだ?」
「多分、美味い…だろうな」
「美味い?」
「ヒカリちゃんのカップケーキ…と言うかお菓子は美味いからな。食った瞬間嬉しくなるって言うか…」
「美味い…この感覚が美味いということなのか…」
「因みに口に入れて不快になったら不味いだ」
「うむ、分かった」
究極体と言えど生まれたばかりのブラックウォーグレイモンは分からないことが多い。
本日もダークタワーを破壊して特訓の後ブイモンと会話していた。
「お前は何故強い?どうやってそれ程の力を得たのだ?」
「んー、俺だけの力はそんなに強くないぞ。俺の力はみんなの力があるから強いんだ。」
実際ブイモンの強さは仲間の力があっての物なので、単体の力はどうしても劣ってしまう。
「やっぱりさ、1人だけの力じゃどうしても限界があるんだ。でもみんなの力を合わせれば1人じゃ倒せない敵や出来ないことを乗り越えることが出来るんだよ。お前もいればきっとどんなムカつく奴からもみんなを守りながら倒せるようになるんだろうな。」
「…不思議な奴だな貴様は………」
ブラックウォーグレイモンはブイモンを見つめながら呟く。ブイモンは疑問符を浮かべた。
「そうかあ?」
「ああ、そうだ。」
ブイモンとブラックウォーグレイモンの様子を大輔とヒカリは静かに見守っていた。
「どうやら上手くやれてるようだな。正直みんながまだ苦手意識持ってるなら色々手を回さなきゃいけないところだったけど。」
「次からはブラックウォーグレイモンのためにカップケーキを多めに焼かないとね」
あまり表情には出さなかったが、カップケーキを気に入ってくれたらしいブラックウォーグレイモンにヒカリは笑みを浮かべながら言う。
「その時は俺も手伝うよ。」
大輔も笑顔を浮かべながら言うと、ヒカリと共にブイモンとブラックウォーグレイモンの元に向かうのであった。
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