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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第41話:親密となる方法

アルケニモン、マミーモンを逃がしてしまい、度々復興作業の妨害を受けるが、徹底的に叩きのめして(マミーモンはアンデッドのためにこちらにはパイルドラモンHMやサジタリモンSM、エンジェウーモンやホーリーエンジェモン、シャッコウモンとアンデッドに対して有効な戦力が充実しているのも原因であろう)逃げられる日々が続く。

しかし、彼らは小学生(例えそうは見えなくても)なので、たまにはゆっくりと過ごしたい時もある。

今回はアルケニモンとマミーモンも動けないのかデジタルワールドに異変は発見されなかったため、今回は英気を養うことにした。

「こういう風にのんびり出来るのは久しぶりだなあ」

「そうだね」

ヒカリが焼いてくれたのだろうクッキーをかじり、そしてコーヒーを飲む。

「美味い。ヒカリちゃん、また腕を上げたな」

「ふふ、ありがとう」

「ねえねえ、大輔君?ヒカリちゃん?」

「「?」」

タケルがニコニコと笑いながら爆弾発言をする。

「そろそろキスくらいした?」

その発言にヒカリはクッキーを落とし、大輔はコーヒーで咽せた。

因みにヒカリが落としたクッキーはブイモンが口でキャッチしてみせた。

「ま、まだしてねえ!!」

「“まだ”ってことはする予定なんだね?」

「タ…タケル君…」

「ふ、2人共、何時の間に…」

赤面する2人に京はマジマジと見つめる。

確かに最近仲が良すぎると思っていたが、まさかそんな仲にまで進展していたとは。

それを聞いていた伊織がタケルの服を引っ張る。

「どういう意味なんですか…?タケルさん…」

しかしタケルは伊織の問いには答えずに、にこにこしているだけだけであった。

こんな時のタケルには何を言っても無駄だと言うのは付き合いもそれなりに長くなってきた伊織には分かる。

「…このカップケーキ、甘さが控え目ね。私好みの味だわ」

「そのカップケーキは大輔が作ったんだ。ヒカリのクッキーもサクサクで美味いな」

「当たり前でしょ、私のパートナーよ?」

仲良くお菓子を食べるブイモンとテイルモンは並行世界の旅のおかげで大分仲良くなっている。

並行世界の大輔達が見たら羨ましがるだろう。

主に手間の関係で。

「とにかく、お前に俺達のことをとやかく言われる筋合いはないぜ?」

「まあ、そりゃあそうなんだけどさ…ヒカリちゃん泣かしたら…太一さん怒るよ?」

「まあ、確かにな…でも泣かせたりはしねえよ。ヒカリちゃんを守るために悲しませたら意味ねえだろうが」

「分かってるなら良いんだよ。それにしてもこのカップケーキ美味しいね、大輔君にこんな才能があったなんて意外」

「お前の尻を真っ赤に燃やしてやってもいいんだぜ?しばらく座れないように」

こめかみに青筋を浮かべながら笑みを浮かべる大輔。

「(ヤバい、からかい過ぎた…!!あの回し蹴りは勘弁だよ…!!)ごめんごめん……幸せになってよ2人共…君達の晴れ舞台には絶対出席するから」

「お前気が早過ぎだ」

「…………」

赤面する2人に伊織はここで全てを察した。

信じられない事だが…大輔とヒカリが付き合っていたことに。

「…タケルさん」

伊織はタケルを見遣ると、タケルはそれに気付いてクスリと笑う。

「伊織君、僕とヒカリちゃんは君が思うような関係じゃないよ。」

伊織にはどうしても信じる事が出来なかった。

てっきりヒカリはタケルを、タケルはヒカリを好きだと思っていた。

「人間関係って言うのはちょっとしたことで変わるんだよ。ヒカリちゃんの一番が大輔君になったようにね。いつか伊織君にも分かる日が来るよ。それにしてもこのカップケーキは美味しいね。いいなあヒカリちゃん、大輔君の愛情を貰えて」

「っ、まさか…まだしつこく大輔君の愛情を狙ってるのタケル君!?」

「ええええ!?タ、タケル君…そんな趣味が……」

「冗談だってばヒカリちゃん……京さんも本気にしないでよ……」

ヒカリと京の発言に引き攣り笑いを浮かべるタケル。

この日は伊織にとって分からないことが多い日だった。

まだまだ幼い伊織には分からなすぎることばかりで、そして学校を出ようとした時、大輔とヒカリと京の会話を3人には悪いと思いながらも立ち聞きしてしまった。

「ねえ、大輔とヒカリちゃんって賢君との付き合いが長いのよね?もし好きな物とかあったら教えてもらえないかな?」

「え?どうしたんですか京さん。」

「ほ、ほら…私、賢君に助けてもらってるし、そのお礼って言うか」

「ああ、そう言えばお前は賢に惚れてんだっけか?」

大輔の発言に京は赤面しながら大輔の胸倉を掴んだ。

「…何であんたがそんなこと知ってんのよ…?」

「いや、お前…あれでバレてないと思ってたのか?伊織やアルマジモン以外全員気付いてるぜ?」

「嘘ー!?」

赤面しながら驚愕する京に苦笑しながらヒカリは口を開いた。

「賢君、パソコンとかに興味あるし、話題も合うと思います。賢君嫌いな物は無かったよね?」

「ああ、あいつ結構菓子も好きだし、特に干し果物を沢山入れたケーキが好きだったな」

「干し果物…フルーツパウンドとかいいかな?」

「いいんじゃねえか?変に金かけた物よりも自分のために手間暇かけた菓子とか渡した方がずっと喜ぶぜあいつの場合?」

「そうですよ京さん」

「うん…私、頑張ってみる。大輔、ヒカリちゃん。手を貸して」

京も意を決してフルーツバウンド作りに励むことにして大輔とヒカリの手を借りることにした。

「お前は良い奴を好きになったよ京」

「うっさい」

赤面しながら言う京だが、満更ではなさそうだ。

それを見ていた伊織は少しだけ怖かった。

かつて賢が犯した過ちを、みんなが早くに忘れてしまう気がして。

そして京が賢に好意を抱き始めたことにも怒りを感じ始めた。

「(みんなはあの人がしたことを忘れたんですか…?)」

何時の間にかみんなが賢を仲間として受け入れており、タケルすら賢を受け入れてしまっていた。

「明日俺の家に来いよ。」

「分かった。ありがとう」

大輔達が別れたのを見て伊織はすぐに隠れると京がいなくなったのを見て、大輔が声をかけた。

「伊織、盗み聞きは感心しないぜ?」

「………」

大輔の声に伊織はゆっくりと出て来て何か言いたげな伊織に大輔もヒカリも苦笑している。

「あの、大輔さんとヒカリさんがお付き合いしてるのは本当なんですか?」

「ん…まあな」

「うん、そうだけど?」

少し照れ臭そうにしながら肯定する大輔とヒカリ。

「でも…こういう言い方は失礼かもしれませんが、ヒカリさんは大輔さんよりもタケルさんと仲が良かったじゃないですか?たった1年の冒険で簡単に…」

「伊織君からすればたった1年でも…私達からすれば色々気付かされる1年だったの…大輔君のこととか、賢君のこととかね」

ヒカリの口から賢の名前が出た瞬間、伊織の表情が変わる。

「どうして京さんを一乗寺賢の所へ行かせようとするんですか?」

「何ってあいつの力になってやろうとしているだけさ」

「京さんに何かあったらどうするんですか!!」

「何かあったらって…お前はまだ賢を疑ってんのか?あいつの行動を自分の目で見てもまだ信じらんねえのか?」

「当たり前です!僕はあいつを信じられない!!大輔さんもヒカリさんもどうして、あいつの事を信用出来るんですか?忘れちゃったんですか、あいつのやったことを!!」

「忘れてねえさ、でもあいつは俺とヒカリちゃんからすれば1年間苦楽を一緒にした仲間なんだよ。」

「自分のしたことも忘れて笑っているような人が仲間なんですか!?」

「それはどういう意味だ…」

それを聞いた大輔の声が低くなったが、伊織は怒りでそのことに気付かない。

「だってそうでしょう!?あんなことをして笑っているなんて、罪の意識がないに決まってます!!僕は大輔さん達のように過去に敵だった人とすぐに打ち解けられませんし、あの人も大輔さん達と比べて僕とあまり話そうとしない。僕があいつを信用していないのと同じように、あいつも僕達の中で一番僕を信用していないに決まっています!大体…」

「…伊織、お前そろそろ黙れ」

声が低く、冷たく伊織を見下ろす大輔に伊織は口を閉ざした。

「お前が賢と行動するのが嫌なのも、賢に助けられるのも悔しいのは分かる。デジモンカイザー時代のあいつのやったことに一番怒っていたのはお前だからな。それくらいは俺でも分かる。でもな、賢は自分のしたことを忘れたことなんて一度もない。今は精神的な余裕をある程度取り戻しただけで罪悪感から解放されたわけじゃないんだ。カイザー時代のやったことばかり見て、今の賢のことを見ようともしないであいつの気持ちを勝手に決めつけて否定するのは止めろ。賢がお前に話さないのも、お前が賢が歩み寄ろうとすればあからさまに嫌な顔をするからだろ。話して欲しいならお前のその態度から直せ。」

「な…っ?」

「あいつはあいつなりにタケル達やお前に歩み寄ろうとしてるんだ。それをお前の勝手な勘違いであいつの気持ちを踏みにじるのは止めろ。これ以上あいつを悪く言うなら俺はお前を見損なう。」

冷たく伊織を見据える大輔の視線に伊織は何も言えなくなる。

「なあ、伊織。俺はお前を信じてた。お前なら今の賢を見て今は無理でもいつかは分かってくれるって、それなのにお前はカイザーだった頃の賢の罪ばかり見て、今の賢を見ようともしないでそんなことを言う。正直残念だった」

大輔はヒカリと共にこの場を去り、俯いたままの伊織だけが残された。

そして翌日、京は本宮家に寄り、大輔とヒカリの協力を得て手作りフルーツパウンドを作って一乗寺家に。

「うう…緊張する……でも頑張れ私。逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ…」

「はい」

インターホンを鳴らすと、賢がいきなり出て来た。

まさかいきなり本人が出て来るとは思わなかった京は箱を落としてしまうが地面に激突する前に何とかキャッチ出来た。

「えっと、すいません。驚かせちゃったみたいで」

「へっ!?いやいやいやいや!!私も急に来ちゃってごめんね!!これ、いつも助けてもらってるお礼!!フルーツパウンドを作ったの!!ヒカリちゃん達から手伝ってもらったから味は……っ!!?」

箱を開くと、さっきの衝撃で形が崩れたフルーツパウンドが姿を見せた。

「(さっき落とした時の衝撃でー!!?)ご、ごめんね!?作り直して…ああー!?」

京が言い切るよりも先に賢は形の崩れたフルーツパウンドの一切れを手に取って一口。

「け、賢君!!無理して食べなくて良いからそんな形が悪い奴!!」

「別に無理なんかしてませんよ?とても美味しいです。ありがとうございます京さん」

飲み込んで京に向かって微笑む賢の優しさに思わずジン…っとなる。

「あ、ありがとう…次はちゃんとしたのを持ってくるから!!」

「え?ありがとうございます。」

そして京は一乗寺家でお茶をご馳走になり、賢が送ると言って井ノ上家にまで京について来てくれた。

「賢君、どうして伊達眼鏡なんかかけてるの?お洒落?」

「え、あ、違います。前よりマシになりましたけど、僕はまだまだ目立ちますから…」

新聞を読むとまだ賢のことは記事に出る“失われた天才”など今の賢を否定するような様々なことが記事に出ている。

「(デジモンカイザーだった頃の賢君より今の賢君の方が優しくて格好良いのに…)」

そう考えて、顔に熱が回る。

確かにデジモンカイザーだった頃の賢は能力的に優れていたが、今の賢の方が人として大事な物を沢山持っているというのに大人はそんなことも分からないのか。

「あ…」

帰りの途中に偶然、伊織と出会した賢と京。

「伊織、あんたどうしたの?」

「それは…」

伊織は賢に目を遣ると目を伏せた。

大輔との会話が脳裏を過ぎり、賢を見ることが出来なくなり、そのまま走り去ってしまった。

「ちょ、伊織!!あんた何なのその態度は!!戻って来なさーい!!!!」

京が怒声を上げるが、賢はそれを止めた。

「いいんです。僕がしたことを考えれば伊織君の態度は当然のことですよ」

少し寂しそうに笑う賢に京は胸の奥に痛みが走ったような感覚を覚えた。

「でも賢君は頑張ってるのにあいつは…賢君が話しかけようとしたら嫌そうにするし、本っ当に頑固ね!!はあ、明日大輔に相談してみよ…賢君、今日はありがとう」

「いえ、僕の方こそ。ご馳走様でした。とても美味しかったです。」

「いやいや…あれくらいで良ければいつだって賢君のために色んなお菓子を作ってあげるわよ!(って、これじゃあ告白みたいじゃなーい!!)」

言ってしまって後悔する京。

しかし言葉の意味に気付かなかった賢は普通に笑みを返した。

「ありがとうございます。明日もまた…頑張りましょう」

それだけ言うと、賢は去っていく。

京は去っていく賢の背中を見つめながら強敵だと確信した。

「(でも、だからこそやる気が出て来たわ!!自分を磨いて磨いて磨きまくっていつか賢君を振り向かせてみせるわ!!)」

闘志を燃やしながら空を見上げる恋する乙女、井ノ上京。

大輔とヒカリはまだまだこの2人の恋模様に巻き込まれそうである。 
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