社会人共がクトゥルフやった時のリプレイ
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大神村の怪異
Part.2
導入です。
現代日本の夏のある日。あなた達は今、ホラーツアーの参加者としてマイクロバスに乗り合わせています。
「あ、GM」
はい?
「私軽い有名人だからさ、所持品にサングラス追加してもいい?」
それくらいならどうぞ。
「よし。じゃあサングラスを掛けてバスに乗っているわ」
「私も所持品に日傘を追加してよろしいでしょうか?」
どうぞ。
「おまえらのロールプレイ用の小道具なんてどうでもいいぜ。GM、バスには何人乗っているんだい?」
あなたたち5人、運転手、ツアーガイド、それからツアー客NPC6人の計13人です。それから1つ言うことがありますが、PC含め全員美形です。平均《APP》15以上です。
「ほほう」
「それはなかなかだな」
さて、人数が揃ったのでバスが出発しました。ここでツアーガイドのお姉さんがマイク片手に挨拶してきます。
「皆様、おはようございます。この度は【九頭竜会】主催の【大神村ホラーツアー】にご参加していただきありがとうございます。私はこれから2日間、皆様とご一緒させていただきますツアーガイドの内藤ほてみ19歳です。平仮名でほてみと書きます。何か、お困りのことがございましたならば、いつでもお申し付けください。安全第一で行程管理に努めさせていただきますので、2日間、どうぞよろしくお願いします」
と言って軽く会釈します。
「丁寧な挨拶ね。日本のバスガイドさんはこれだから好きよ。よろしくという気持ちを込めて拍手しましょう」
「では私も拍手します」
「俺も拍手しよう」
「私もな。よろしくお願いするよい!」
「俺も拍手しておこうか」
ではそんなあなたたちに感化されてか、他の参加者たちも拍手を内藤さんに送ります。内藤さんは綺麗に笑ってもう一度軽く会釈します。
「11名様のものとは思えない大きな拍手、ありがとうございます。それでは本日の行程を簡単にご案内します。東京駅を出発しましたこのバスはこれより高速道路に入り約1時間後、途中のサービスエリアにて休憩を行います。この休憩後、目的地である大神村まで休憩はございませんのでご注意ください。大神村到着は正午、12時頃を予定しております。到着後、夕食までは自由に行動していただいて結構です。夕食は村の中央会館にて全員参加でお願いいたします。そこで大神村村長村岡長介氏による村に伝わる怪談を披露していただく予定になっております。本日の行程は以上となっております。詳細につきましてはその都度ご案内させていただきます。明日の行程に関しましては、明日ご案内させていただきます」
「訊こうとしたことを全部先に言われちゃったわ」
「これは有能バスガイドだな」
私も楽ですよ。説明しないといけないこと全部ガイドさん喋ってますもん。あ、まだ挨拶は続きますよ。
「それから私より皆様に5つのご協力・ご理解のお願いがございます。1つ、時間厳守での行動をお願いします。1つ、車内は全面禁煙です。お煙草はご遠慮ください。1つ、走行中のシートベルトの着用をお願いいたします。1つ、貴重品は自己管理を、そして体調がもし優れないようでしたらすぐに申し上げてください。1つ、大神村は全域で携帯電話は圏外となっております。固定電話もございませんので、もしどこかに連絡が必要な場合は村に着く前に済ませていただくよう、よろしくお願いします」
「マジか。電波来てないのか」
ちなみにこれは事前にパンフレットを見て確認済みの情報です。PLに言っていませんでしたけど、PCは全員このことを知っています。
「陸の孤島か。クローズド系シナリオの定番だな」
「さて、ここで皆様、親交を少しでも深めるべく軽い自己紹介と参りましょう。それでは前席に座っている皆さんから順番にお願いします」
と内藤さんはあなた達に笑顔でお願いしてきます。
「あー、ここでPC全員が名前やらなんやらを知るのか」
「座り順はどうなっているのかしら?」
バスの席は左列が1人掛け、右列が2人掛けとなっています。
最前列左側に遊星、右側にレミリアと咲夜が、遊星の後ろに咏、レミリアの後ろに白夜が座っていますね。
「2人掛けなのに独占していていいのか?」
ええ、人数も少ないですし、ほとんどの人が初対面ですしね。レミリアと咲夜は仲良く一緒に座っていますが。
「ふーん」
「PC順か。なら俺から自己紹介しよう。バスは当然運転中だな?」
そうですね。ですから座ったままどうぞ。ただ顔が見えるように少し通路側に顔を出していただけると助かります。
「親交を深めるためだもんな。任せろ。じゃあ俺から挨拶をしよう。初めまして。俺は不動遊星、今年で43歳になった。公務員の仕事をしている。今回のツアーには気分転換のために参加させてもらった。オカルトとかホラーとか、仕事柄全く知識はないが、だからこそいい経験ができるんじゃないかと思っている。素人同然の身だが仲良くしてもらえると嬉しい。名前も下の名前で呼んでもらっていい。苗字だとまぁ、引っかかる人もいるだろうからな。以上だ」
「おーこいつやるねえ。誤魔化していたけど職業、年齢、ツアー参加の動機を全部言いやがった」
「これじゃあ続く私たちも同じ形式でやらざるを得ないわね。トップバッターがこんな丁寧な挨拶してきてくれたんですもの。まぁみんな疚しいことなんてないでしょうし、問題はないわよね。そうよね、咲夜」
「勿論でございます、お嬢様」
「だな。別に悪いことをするためにこのツアーに参加したわけじゃあないんだ。変に疑ったりしないで楽しもうぜ」
「まぁ、それもそうか」
「というわけで次は私ね。初めまして皆さん……おっと、サングラスしたままじゃ失礼ね。GM、私はサングラスを取り払ってにこりと笑うわ」
ええー……そうですね。遊星と咏ちゃんは《知識》ロールをどうぞ。咲夜は当然知っているから除外、白夜は自動成功とします。
遊星 《知識》80 → 81 失敗
咏 《知識》65 → 57 成功
「うお、失敗した。80パーセントあるのに」
では遊星は知りませんが、咏と白夜は彼女のことを知っていました。
サングラスの女性は稀代の占い師、レミリア・スカーレット。その的中率は他の占い師と一線を画すレベルの腕前で、4年前くらいからメディアにも頭角を現し、バラエティ番組にもよく出るくらいの人気タレントです。
「マジか、結構な有名人じゃないか。仕事のせいでテレビを見る余裕がなかったということにしよう」
「私は普通に驚いとくぜ。おいおい、まさか、あのレミリア・スカーレットか」
「その通りよ。私の名前はレミリア・スカーレット。知っている人もいるとは思うけど、占い業を営んでいるわ。あとたまにタレントとしてもテレビに出ているわね。細かいプロフィールは検索してみて頂戴ね。一応ホームページもあるから。私がこのツアーに参加したのはねぇ、ただ単純に面白そうだと思ったからよ。深い考えはないわ。有名人だからって緊張しなくていいから、気軽に話しかけてね。……あぁ、そうだ。うん、いいアイデアね」
「どうかしたんですか?」
「ここは親交を込めて、このツアーがどんなツアーになるのかを占ってみましょうか。GM、私は《芸術(占い)》を使用するわ。所持品にタロットカードがあるでしょ? それを取り出してワンカードオラクルの占いをするわ」
「う、占いだと?」
「うん、そうよ」
「へぇ、ところでワンカードオラクルってなんだ?」
「一番簡単な占いよ。シャッフルしたカードの束の中から適当に1枚選んでもらって、そのあとカードを反転させるかどうかを選んでもらう。その選んだカードが正位置逆位置で占うのよ」
「ああ……俺は2枚でやるやつしか知らないけど1枚でもできるんだな」
「ツーカードオラクルね。他にもいろんなやり方があるんだけど、今バスに乗っているし、ワンカードでいいかなってね。カードをシャッフルしている途中でストップって言ってもらって、その一番上のカードで占うわ。選んでもらうのは遊星さん、お願いできるかしら。これを機に、オカルトは面白いって思ってほしいのよ」
「ならやろう。断る理由がないし、せっかく振ってくれたんだ。応えるものだろう」
「ありがとう。じゃあ《芸術(占い)》でダイスを振るわ」
はーい。占い結果は公開しません。……が。読者の皆さんには公開します。《心理学》も公開しますよ。
レミリア《芸術(占い)》80 → 45 成功
えっと、結果はこれだからっと……では、遊星がストップを宣言し、正位置に選んだそのカードは大アルカナの18番、『月』の正位置でした。
「『月』の正位置ね……と声に出しつつ、私はそのカードを見て顔をしかめるわ」
「おいおい、どうしたんだ?」
「なにかその……ダメだったか?」
「うーん……うん、これはちゃんと言うべきね。ただしちゃんとフォローも入れて明るくなるようにロールプレイよ。遊星さんが選んでくださった『月』の正位置。その意味はサイキックな現象、嘘、変化、不安、曖昧、そして不誠実、よ」
「え?」
「ふふっ、どうやらこのツアー、私の占いじゃあ、平穏なものになることはないようね」
「マジか……」
「でもね、占い師の私が言うのもなんだけど占いは所詮占いよ。必ずその運命が待っているとは限らないし、もしその運命が待ち受けていたとしてもそれを変えられるだけの力が私たち人間にはあるわ。占いというのはその運命に導くために、また変えるためにどう行動するのかを今後の私たちに考えさせるための所謂1つの道標。危険な場所には絶対に行かない、単独行動をせずに団体行動を心がける、他人と揉めるような行動を起こさない、などのトラブル防止策をほんの少しでも頭の片隅に置いておく、または再認識することによって回避することだって可能よ。だから、この占いの結果を鵜呑みにしないで、この結果が出たから気をつけるようにしよう、そういう考えで受け取ってほしいわ。という感じで私の自己紹介終わり」
「次は私ですね。……あれ、私窓側にいるんですけど、どうやって顔を出しましょう」
偶然にも今バスは信号待ちですから停まっていますよ。
「おやタイミングがいい。ではお嬢様の自己紹介から引き継ぐ形でシートベルトを外して軽く立ち上がって。信号待ちですから手短に済ますとしましょう。皆さま初めまして。レミリアお嬢様にお仕えしている侍女の十六夜咲夜というものです。今回はお嬢様のサポートのために参加させていただきました。よろしくお願いします。以上です。席に座り直します」
わかりました。信号も丁度変わりましたのでバスが発進します。
さて、咲夜の挨拶が終わったところでレミリアを除く全員、《目星》をどうぞ。
遊星 《目星》55 → 38 成功
咏 《目星》65 → 31 成功
白夜 《目星》25 → 30 失敗
それでは遊星と咏ちゃんは咲夜の首元に緑色の石のペンダントがあることに気が付きます。
「どんな石かわかるか?」
《博物学》に成功したら情報が出ます。
「《博物学》か……取っていないな」
「一応初期値で振ってみるか。10パーセントもあるしな」
咏 《博物学》10 → 65 失敗
「まぁダメだよねい」
「俺も振っておこう。損はないはずだ」
遊星 《博物学》10 → 54 失敗
まぁ初期値じゃそんなもんですよね。とにかく、緑色の石の付いたペンダントを彼女が付けていた、ということだけ気が付きました。
「後で近づいてよく見てみよう。遠目だったからわからなかったのかもしれないからな」
「っと、次は私の紹介だねい。私は三尋木咏。麻雀プロだよ。知っている人は知ってんじゃね? 知らんけど。参加理由は不動……ああ、下の名前でよかったけな。えー、遊星さんと同じ、ただの気分転換だよ。短い間だけど、みんなよろしくねい」
「んじゃまぁ、俺の番か。夢幻の白夜という者だ。夢幻白夜ってのが本名なんだけどゴロが悪いからそう名乗っている。白夜って呼んでくれて構わないよ。生物学の研究者をやっているよ。このツアーに参加したのは、他のやつらと同じただの気分転換さ。論文やらなんやらから離れた日常を少しでも味わいたくてな。だからこんな非科学的なホラーツアーに参加したってこと。まぁ多少のオカルトの知識はあるから、今日明日は気楽に楽しんで行こうと思うよ。以上」
それでは次は皆さんと一緒にツアーに参加したNPC5人の自己紹介です。
「お、そいつらもするのか」
「NPCも重要なポジションなのかもしれないわね」
さぁそれはどうでしょうね。ではまずNPC1から。
NPC1は間違いなく美少女に該当するような高校生くらいの女の子です。良く言えば大人しそうな雰囲気、悪く言うならば自身がなさそうな感じの子です。
「えっと、水戸夏希です。高校2年生で、えっとえっと……私、ホラー好きでですね。ですからこのツアーに参加しました。意外と大人の人ばかりで緊張してますけど、なんとか頑張ります。よろしくお願いします」
と挨拶しました。
『ふーん、ねぇGM。彼女に対して《心理学》するわ。占いであの結果が出ちゃったし、PCはともかく、NPCがどんなことを考えているのかを知りたい』
はい、ここで読者の皆さんに説明があります。
今のレミリアさんのセリフ、カギカッコが通常の「」ではなく『』と表記されました。こう表記された場合のレミリアさんの言葉は他のPCには公開されていません。私ことGMとの個別チャットでの会話となりますので、他のPCでは知りえない情報を彼女は引き出そうとしています。
ちなみにこのとき、他のPC……というか全員、私に《心理学》ロールを要求してきました。PVPの可能性ありのシナリオと聞いて、みんな《心理学》をある程度用意してきたみたいです。考えることはみんな同じですね。
でもPVP要素のあるシナリオの《心理学》ってかなりリスクあるんですよね。成功失敗次第で与えられる情報は違いますし、しかも《心理学》の結果は非公開ですので成功したのか失敗したのかわからないですから。
さて、ここらでシナリオに戻りましょう。
わかりました。《心理学》の結果は公開しません。
レミリア《心理学》66 → 14 成功
レミリアは水戸のその態度が演技であると思いました。オドオドしているのはふりで、本来の彼女はあんな大人しい彼女じゃない。そう思いました。
『成功したのか失敗したのかはわからないけど良いわ。とりあえず不思議に思う程度にとどめておくわ』
さてはてお次はNPC2。NPC2は中年の大柄な男性です。スーツを着ていて、ダンディなお髭が特徴。おじさんというよりおじさまという感じの男性です。
「初めまして皆さん。私は美濃零。47歳のホラー作家だ。ネタ探しにこのツアーに参加したんだ。よろしくお願いするよ」
と言いながら笑って挨拶を終えました。
『美濃零にも《心理学》』
レミリア《心理学》66 → 65 成功
レミリアは彼の台詞がどこか決められたものであるかのように聞こえました。こう聞かれたらこう答えると、あらかじめ想定して用意していたもののようだと思いました。
『いろいろな意味にとれる答えね。多分これは成功したでしょう』
次はNPC3です。NPC3はタンクトップ一枚に短パン、筋肉隆々で活発そうなイメージの強いワイルドな男です。
「んじゃあオレだな! オレは狩生堂34歳! 山男をしているぜ。こう見えてホラーが大好きでな! この時期は毎回どこかのツアーに参加してんだ。今日明日って短ぇ間だけどよろしくな!」
『はいはい、《心理学》《心理学》』
レミリア《心理学》66 → 44 成功
レミリアは彼が嘘は吐いていないと思いました。
『あ、これは成功ね』
え? なんでわかるんですか?
『嘘はって言ったでしょ? 普通は嘘をって言うのに。こんな含みがあるような文法表現をしたってことは、嘘は言っていないものの本当のことも言っていないって情報をくれたんでしょ? だったら成功よ、間違いなく』
さぁ、それはあくまであなた個人の解釈ですからわからないですけど、与えられる情報はこれだけです。他にありません。
ではお次はNPC4です。NPC4は若い女性です。今をきらめく女子、という言葉を体現したかのような容姿ですね。元気いっぱい活動的な感じがします。
全員、《知識》ロールどうぞ。
遊星 《知識》80 → 38 成功
レミリア《知識》75 → 59 成功
咲夜 《知識》55 → 25 成功
咏 《知識》65 → 71 失敗
白夜 《知識》80 → 09 成功
あ。ではレミリアと咲夜は《幸運》どうぞ。
レミリア《幸運》55 → 63 失敗
咲夜 《幸運》45 → 71 失敗
オーケーです。では咏ちゃん以外の全員は彼女が誰か知っていました。
彼女は芸名、こころくるみ。アイドルグループ『グルグルミラクルガールズ』の不動のセンターです。まぁ《APP》が17もありますし当然でしょうね。
『グルグルミラクルガールズ』はもともと秋葉原で活動していた地下アイドルグループの1つにすぎませんでしたが、3年前から人気が急上昇し、今ではテレビに引っ張りだこの日本で一番知名度の高いアイドルユニットとして頂点に君臨しています。
「あー、じゃあ私はアイドルのことは興味ないから知らなかったってことにしておこうかねい。日本で一番有名ってんだからユニット名は知っているけど、メンバーまで知らないってことでいいかGM」
ですね、それが一番自然ですし、それで行きましょう。
「さっきの私とお嬢様の判定はなんですか?」
テレビや楽屋で共演、または遭遇していないかの確認です。失敗したので生の彼女と会うのは今日が初めてですね。
「じゃあ次は私ですね! 私は『グルグルミラクルガールズ』のメンバー、こころくるみ24歳でっす! 実は私これでもホラーやオカルトが大好きで、今日はテレビでトークするためのネタを作りに参加しました!」
「へぇ、あなたオカルトに興味があるの? って感じで介入するわ。ある種の同業者だし、私を見た彼女の反応を知りたい」
くるみはあなたに対してキラキラした目をしながら話しかけてきます。
「はい! スカーレット先生とも是非一度お会いしたいなと思っていたんです! お会いできて光栄です!」
『ここで《心理学》よ。このタイミングなら成功したか失敗したか判定しやすそうだしね』
レミリア《心理学》66 → 34 成功
あなたは彼女の目がちっとも笑っていないと思いました。彼女の言葉は上っ面だけで、あなたに会って光栄だなんて本心ではこれっぽっちも思っていないともいました。それどころか、あなたに対して強い敵意と警戒心を抱いていることに気が付きました。
『あー……成功したかどうかわからないわね。微妙に情報が多すぎるし、確信しているみたいな言い方してるし、露骨に敵ですアピールしているし。まぁいいわ。PCが思ったならそれで行動するしかないし、とりあえず社交辞令をしつつ彼女の言動に注目することにしましょう』
「そう。テレビに出たときに今日のこと喋るなら、私のことをネタにしてもいいからね。それから、もし今後私と共演することになったら、その時はその時でよろしくね」
「わぁ、ありがとうございます! 私の方こそ、共演できる日を楽しみにしていますね!」
『はい、ここでもう1回《心理学》よ』
え? 同じ技能はあんまり連続して使ってほしくないんですが……理由次第で許可します。どうしてですか?
『私と共演したいと思っていない理由を知りたいのよ。そう、例えば、このツアーであいつは死ぬんだから、共演することなんて絶対ない、みたいなね』
うん、許可しません。あまりにメタすぎです。あなたがこのツアー中に死ぬと思った根拠がないのに、その探りを入れるなんておかしいですからね。占いだって、あの結果だけで自分が死ぬなんて発想にはならないでしょうし。
『だよねぇ……』
ではNPC5の紹介です。NPC5は理知的な顔つきの男性です。メガネがトレードマークですね。
「僕は木場研二34歳。研究職に就いています。僕もまた、研究に行き詰まってしまって気分転換にね」
「あんたも研究職なのか。理由から何まで俺とお揃いだなって感じで割り込む」
「ははは、そうですね」
「ちなみに専攻はなんだい?」
「人類学を専攻しているよ」
「へぇ、人類学か。俺の知り合いにも同じ苗字の人類学者がいるんだけどさ、もしかしてあんたの兄弟とかかい?」
「そうなんですか。でも無関係だと思いますよ。僕は一人っ子ですからね」
「そうか。まぁ、そんなことはいいや。研究者同士、今後もいい付き合いになるようにしようじゃないか」
「そうだね。よろしく頼むよ」
『ナイスね、白夜。こいつには《心理学》はいらないわ。明らかに嘘吐いているから』
え? どうしてそんなことわかるんですか?
『研二って名前なんでしょ? 普通は次男に与えられる名前よ。なのに兄弟がいないって言ったわ。ということは名前か家族構成に嘘を吐いているってこと。間違いなく何かを隠しているわね』
(うわ、こんなところから情報引き出してる……これ設定そのままなのに。油断してたなぁ)ま、まぁありふれた名前ですし、そう付ける親もいるんじゃないですかね。ほら、父親が研一だとか。
『にしても長男に付ける名前じゃないわよ』
はいはい、シーン進めますよ。
最後、NPC6です。NPC6は長い黒髪が特徴的な少女です。結構な美人さんですね、《APP》が16あります。
「私がトリのようですね。私は大賀美保、大学1年生です。私も気晴らしで参加しました。よろしくお願いします」
『かなりシンプルな自己紹介ね。《心理学》よ』
レミリア《心理学》66 → 24 成功
彼女の仕草は自然で、ただ普通に挨拶をしただけだなと思いました。
『成功したんだかしてないんだかわからないわね』
それではあなたたちツアー客が全員自己紹介を終えたところで、内藤さんが笑顔でマイクを手に取ります。
「はい、皆様ありがとうございました。最後にドライバーさんの紹介をさせていただきます。本日安全運転に努めていただくドライバーさんは大東バス会社の室岡さんです。それでは2日間、皆さんの良い思い出となるよう精一杯務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
はい、というわけでここまで。次回は大神村に着いたところから始めていきますよ。
――To be continued…
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