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社会人共がクトゥルフやった時のリプレイ

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Part.3

 さてさて、ホームルームを終えて今は5時限目……なんだが。
 あー、5時限目はな、本当は担任の数学の授業だったんだ。だけどその先生があの調子だろ? てなわけで5時限目は自習の時間になった。副担任の先生もいないからある程度自由に行動できるが、他の教室は授業中だ。外に出る場合は慎重に行動するようにした方がいいかもしれないねい?

「ちょうどいいわ。GM、この学校に図書室はあるわよね?」

 あるねい。別館の多目的ホールの地下室が図書室だ。渡り廊下から移動して別館内で階段を使うのが一番近いねい。

「中央階段まで向かう間に授業中の教室はありますか?」

 2年C組とD組の教室があるが、D組は体育の授業中だから無人だ。

「よし。じゃあ図書室に向かうわ」

「あ、ちょっと待ってくれ。GM、さっき先生が叩き付けた出席簿は俺の席の近くに落ちているんだよな?」

 ああ。誰も回収していないからそのまんまだねい。

「中身を確認する。文の名前を探すぞ。射命丸だからさ行だな。どうなっている?」

 射命丸文の名前はないねい? だけど代わりに予坂文の名前がある。

「やっぱりな。さっきの先生が混乱していたのはこれを見たからでもあるんだろう。文に見せたら《SAN》チェックがありそうだし、そっと閉じて教壇の中に放り込んでおこう」

「なにしてるの遊星。行くわよ」

「ああ、すまんな。今行く。GM、図書館行くのに屈んで歩けば見えないから《隠れる》はいらないな?」

 だねい。だが《忍び歩き》で判定はしてもらうよ。廊下はプラスチック製のタイル張りだから音は響くからな。

「《忍び歩き》か……全員初期値なんだよな」

「GM、上履きを脱いで歩くわ。これなら音は出ないでしょう?」

 お、それもそうだねい。んじゃあ上履きを脱いで歩けば《忍び歩き》は振らんでいい。

「よしじゃあ図書室に向かいましょう。私は2番目」

「先頭は私」

「最後尾は俺でいい。《SIZ》17あるから壁にはなるだろ」

 特に何事もなく図書館に辿り着いたな。鍵はかかっていない。

「静かに扉を開けて図書室に入るわ」

 図書館は無人だ。高校の図書館ということもあってそこそこ広いが、きちんとカテゴリーごとに分別されているから目的の本を数分もかからずに見つけ出すことができるだろう。
 少し奥に行けば備え付けのパソコンが3台置かれている。本の検索用に設置されたものだが、普通にインターネットに接続されているから調べ物もできる。ただし学校に置かれているパソコンだから閲覧できるページもかなり限定されている。

「卒業アルバムがあるのはどこかわかるかしら?」

 【○○高校】と書かれたコーナーの一角、【歴代卒業アルバム】と書かれたプレートの隣にずらりと並んでいる。学校設立当初からずっと保管され続けられたもんだから数も膨大だ。手当たり次第に探すとするならば《図書館》に成功したとしても時間いっぱいまでかかる。ある程度のあたりを付けてから探したり、上手く分割したりすれば時間をかけずに済む。

「流石に30年前とか、そんなに古くはないでしょう。新しい年代から手分けして探しましょう。一気に数冊抱えて分担すると時間がかかる可能性がありますし、1冊ずつ被らないように読んでは戻して読んでは戻してを繰り替えすのが一番早いですよ」

「確かにそれが一番早いけど、もし《図書館》に失敗した人のアルバムに目的の予坂さんが居たら目も当てられないわ。というわけでGM、文が提案した方法でかかる捜索時間とダイスの判定方法を聞かせなさい」

 えっとねい……ん? ちょっと待て。なんで捜索時間を訊く? おまえさん、もしかして捜索時間から逆算して目的のアルバムが何年前のものかを突きとめようとしてないかい?

「ちっ、バレたか」

 油断ならねえなまったく。とりあえず捜索時間は詳しくは伝えん。ただ一番早い方法だってことだけは教えておこう。
 判定としてはまず3人で《図書館》ロール。全員成功なら問題なし。失敗者が出ると3人で《幸運》判定。失敗者の人数より上の成功で情報を得られる。

「一番安全な方法は1人アルバムをチェックしたらそれを順番にチェックしていくことだ。そうすれば3人がかりでチェックが入るから失敗する確率は一番低い。ただ時間がかかりそうだな」

 だねい。その方法で探すならまぁ、誰かが《図書館》に成功したら情報をやるよ。どれくらい時間がかかるかはそうだな。順番を決めてもらって《図書館》に最初に成功したやつによって決定するとしよう。

「……どうする? 時間をかけて石橋を叩いて渡るか、時間を優先するか」

「私は《図書館》初期値なのよねぇ。流石にこればっかりは他の技能の応用とか利きそうにないし、カマかけるのに失敗したからロールプレイでカバーも出来ない。時間もまぁ、そんな切羽詰まってないから慎重に行くのが得策かしらね?」

「じゃあ遊星が提案した方法で行きましょう。順番は《図書館》技能が高い人からでいいですかね」

「そうだな。萩村は初期値、文は50くらいだから一番高いのは60の俺か。よし、卒業アルバムを漁るぞ」

 あー、面倒だから一気に判定しちゃっていいよ。

 遊星 《図書館》60 → 55 成功
 射命丸《図書館》54 → 42 成功
 萩村 《図書館》25 → 42 失敗

 お、遊星が成功だねい。んじゃあおまえさんたちは30分かけて、ようやく『予坂』と言う名の人物を見つけることができた。
 その人物が写っていたのは16年前の卒業アルバム。おまえさんたちが生まれて1年ほどしか経っていない時代の人物だった。
 名前は予坂梨世。少しだけ気の強そうな顔をした女子生徒だ。なんとなくだが、本当に、少しだけだがどこか射命丸の顔が彼女に似ているような、そうでないような気がする。本当に言われてみればまぁ……程度だけどな。
 個人の写真だけでなく卒業式の集合写真の中にもその姿を確認できるがどこか、この集合写真に違和感を覚える。

「あ、これは《写真術》で判定ですね。任せてください」

 射命丸《写真術》50 → 78 失敗

「はい、ダメでした」

「はぁ……。GM、《目星》と《アイデア》で代用できる?」

 いいだろう。両方成功で《写真術》と同じ情報をやるよ。

「だってさ。遊星、頼んだわ」

「ああおまえそういえば《目星》初期値だったな」

 遊星 《目星》65 → 60 成功
 遊星 《アイデア》65 → 42 成功

 じゃあ遊星はこの集合写真が合成写真であることに気が付いた。
 当時の技術ではこれが精いっぱいだったのだろう、明らかにこの写真に写っている予坂梨世の姿が浮いている。恐らく別の写真から引っ張って来た彼女に制服の画像と合成させて、さらにこの集合写真に取り入れたんだろう。

「よし、2人にもこのことを伝えよう。む……これは合成写真だな。彼女の所だけ僅かだが違和感がある」

「え?……あ、本当ですね。本当に少しだけだったので気付きませんでした」

「ふん……。ということは実際にはこの写真には写っていないってわけね。病欠したか、それとも他に理由があったのか。いずれにしてもこの写真だけじゃこれ以上の情報はないわね。16年前ってヒントも貰ったし、ネット検索しましょうか。丁度パソコンがあるし」

「そうだな。GM、パソコンで調べものだ。ここの高校に裏サイトってあるか?」

 あるねい。16年前のもばっちりある。

「よし。じゃあそこに行って何かヒントになるようなものがないかを捜そう」

 《図書館》か《コンピュータ》の2倍の数値で判定してくれ。

「お。それなら《コンピュータ》で判定だ。72パーセント」

 遊星 《コンピュータ》36×2 → 41 成功

 じゃあ遊星は16年前の裏サイトの書き込みから関連性のありそうなものをいくつか見つけることができた。内容を提示しよう。
 ・女子生徒Yは家にいないらしい。
 ・女子生徒Yは行方不明らしい。
 ・原因は担任の先生らしい。
 ・女子生徒Yには男がいたが、そいつは逃げたらしい。本当に酷い奴だ。
 ・学校は知らんぷり。
 ・あのさぁ、もうその女子生徒自殺してんじゃね?
 ・その担任学校辞めたってよ。ざまぁみろ。
 ・学校の近くでその教師見たんだけどさ、すっごいやつれてやんの。
 ・クソ教師、呪われろ。

「この女子生徒Yってほぼ完全に予坂さんのことですよね。それで担任の先生が学校をやめたと……じゃあ卒業アルバムの先生は新しい先生ってことですね」

「でもそれ以上の詳しい内容はないわね。当時の先生か、生徒だった人たちに訊くしかなさそうよ」

「ですが当時の生徒なんて簡単に見つけられませんし、確か学校の先生って5年くらいしたら異動になるのでは?」

「事務員の人とか清掃業者の人とか食堂のおばちゃんとかなら16年前からずっと働いていてもおかしくないわ。もう行動できる時間もないだろうし、続きは放課後ね」

「だな。GM、俺たちは教室に戻る」

 オッケー。特に何事もなく教室に戻った。時間を進めるよい?
 5時間目の自習が終わって今度は6時間目。特に何事もなく授業は進んで現在放課後。時間は4時前だ。

「あ、GM。副担任の先生に16年前から働いている人がいないかを訊きたい」

 副担任の先生は教壇の前で荷物を纏めているよ。職員室に戻る用意をしているんだろうねい。先生の周りには特に生徒とかはいないし、話しかけることは可能だろう。

「よし。じゃあ訊こう。先生、ちょっといいですか?」

「なんだね?」

 で、どんな感じで訊くんだい? まさかストレートに聞くわけじゃあんめい?

「私が行きます。先生、実は今度の新聞でこの学校についての特集を組みたいと思っていて、遊星さんとスズちゃんに手伝ってもらっているんですよ。そこでですね、昔からこの学校で働いている人をご存じですか? インタビューをしたいんです」

「おお、それは次の新聞部の記事が楽しみだ。そうだなぁ。確か、スクールカウンセラーの宮城先生が昔から働いていたはずだ」

「スクールカウンセラーの宮城先生ですか。ありがとうございます。新聞、楽しみにしていてくださいね。というわけで宮城先生のところへ行きます」

「当然私もついていく」

「俺も行こう」

 スクールカウンセラーは職員室の奥、カウンセリング室にいるよ。

「よし、じゃあ宮城先生に尋ねるわよ」

「ここは私が訊ねた方がいいでしょう。新聞部なの私だけですし。というわけでカウンセラー室の扉をノックします」

 「どうぞー」と部屋の中から女性の声が聞こえる。

「じゃあ失礼しますと言って部屋に入ります。そして声をかけます。宮城先生、少々お時間よろしいでしょうか?」

 それじゃあデスクについていた女性が立ちあがって笑顔でおまえたちを迎えてくれた。

「あらあら、どういたのかしら? まぁまぁ、そこに座って座って、ね?」

 と言っておまえたちをソファに促す。彼女こそスクールカウンセラーの宮城和喜子先生。柔和な顔立ちが特徴的な40代のカウンセラーだ。学校との付き合いは長く、これまで何人もの生徒たちの悩みを解決してきた実績もある。

「……GMがこういう風に説明してくれているということは、この人に嘘は通用しなさそうですね」

 その通り。宮城先生はおまえたちが嘘の証言、または《言いくるめ》をするたびに80パーセントの《心理学》判定を行う。失敗か、同じ《心理学》による対抗ロールに勝たないと一発で嘘だと看破されるぞ。

「下手に嘘ついたりして信用を失うのは困る。素直に話すか、《説得》して聞き出すかの2択か」

「普通に素直に話しましょう。とりあえず全員の自己紹介は済んだことにしておいてロールプレイよ。というわけでソファに座りつつ話題を切り出すわ。さりげなく話を逸らせながら情報を引き出す。宮城先生、今日私たちのクラス……2年D組でとある騒ぎがあったのをご存知ですか?」

「ええ、訊いたわ。岸和田先生が取り乱して女子生徒に掴みかかったって……もしかしてあなたが?」

「いえ、私でなく隣に座る彼女がその被害に」

「射命丸さんといったかしら? 大丈夫? 怖かったでしょうに」

「ああはい、私はもう大丈夫です」

「そう……でもおかしいわねぇ、岸和田先生はそんなことをするような先生じゃ決してないのに」

「ええ、そのことは先生が担任の私たちも存じていることです。ですから私たちもどうして先生があんなことをしてしまったのか、私たちも私たちなりに調べていたところなんです」

「そう……」

「ところで、先生は昼休みの騒動をご存知ですか?」

「ああ、放送室の……確か萩村さんもそこに駆け付けたんですってね。先生たちも話していたわ」

「ええ、中に入って見たら誰もいなくて、まったく奇妙な出来事でした。その放送なのですが覚えていますか? 犯人が予坂文という人物をしきりに呼び出していたことを」

「覚えているわ。……そういえば、放送で言ってたのって2年D組だったわね。萩村さんたちと同じクラスじゃない」

「ですが不思議なことに、予坂文なんて生徒はうちのクラスにはいないんですよ。うちのクラスはおろか、他の組にもそんな人間はいません。……代わりにここにいる射命丸文ならいるんですけどね」

「それって……」

 宮城先生は射命丸の方をちらりと見るよ。

「俯きながら返事をします。はい、私がこの騒動の中心にいるみたいなんです」

「心当たりはあるの?」

「それが全くなくて……。岸和田先生にも予坂って言われたり、友達の電話帳のアドレスも変わっていたり……本当に不安なんです」

「先生、単刀直入にお伺いします。放送室の騒動の件、先生はあの犯人の声に心当たりがあるのではございませんか?」

 そう萩村が訊ねると、宮城先生は黙りこくってしまうねい。

「当たりだな。畳みかけよう。先生。萩村が言ったように、俺たちなりに調べて『予坂』という名前の人物に1人アタリをつけたんです。……16年前、といえばわかりますか?」

「…………」

「……あの声の主は、16年前に辞めた男性教師に酷似していたんじゃありませんか?」

「…………」

「先生、私たちは文を助けたいんです。文は怖がっています。なんでかもわからずに名前を変えられて呼び出されたり、錯乱した先生に掴みかかれたり……お願いします先生。知っていることがあれば教えてください」

「お願いします、と俺は頭を下げる」

「私も頭を下げます、お願いします」

 あー、うん。そこまでロールプレイしてくれたんだから判定は良いわ。本当、おまえらはこういう重要な場面でダイスに頼ろうとしないのな。

「萩村がロールプレイ重視派だから、俺たちがダイスで判定する隙が全くないんだ。気が付いたら説得終ってるし」

「そういうあんたらだってロールプレイ重視派じゃない」

「いやいやスズちゃんほどじゃありませんよ? ある程度のところまで言ったらダイス振りますし」

「面倒くさがらずに徹していればいいのよ」

 そこまでロールプレイに徹底するのはおまえか咲夜の中の人くらいだよ。まぁいいや。《説得》は自動成功ってことで、宮城先生が神妙な表情でおまえさんたちに話すよ。

「……本人たちの名誉もあることだからこのことは多言無用よ? それだけは絶対にね?」

「はい」

「勿論です」

「真実が知りたいだけですから」

「ふぅ……あなた達も知っての通り、16年前にこの学園で事件が起きたのよ」

「事件、ですか?」

「ええ。この学園の生徒……予坂梨世さんがね、妊娠しちゃっていたのよ」

「え……まさかその相手って……」

「早とちりしないでね。そうじゃないのよ。相手は誰だかわからないわ。ただ相談相手が辞めた先生だったのよ。賀川康史先生っていう歴史学の先生でね、真面目な性格の先生だったわ。当時予坂さんのクラスの担任だった賀川先生は予坂さんからそのことを相談されたみたいでね。でも真面目で、物事を人一倍深く考える性格だった賀川先生は予坂さんに強く叱っちゃったのよ」

 悲しい表情で語るのを見るあたり、その賀川先生は悪い先生ではなかったことがわかる。まだまだ続くよい。

「でも先生の叱責がショックだったんでしょうね。相談した先生に心無い言葉で叱られて、予坂さんは登校拒否になって、家出してしまったの」

「家出、ですか」

「ええ……。それから間も置かずに予坂さんの家族は引っ越ししてしまって……もう今、あの家族がどうなっているのか、わからないわ。当時の生徒たちの間では予坂さんが自殺したとか、そんな噂が流れていたけれどその真相は今でもわからない。消息不明、と言うのが的確かしら」

「これは……割と重い話だな」

「そうですね……下手ないじめ事件よりも大変ですよこれ」

「このことを賀川先生は強く責任を感じてしまって……たしかに強い言葉を投げかけてしまったのかもしれないけど、賀川先生もきっと予坂さんを想ってのことだったのだと思うわ。本当に真面目な先生だったもの。自分の言葉のせいで予坂さんを傷つけてしまったこと、それから他の生徒たちや先生たちに白い目で見られるようになって、どんどん病んでいってしまって……遂には学校を辞めてしまったわ」

「……その後の賀川先生の行方はご存知ですか?」

「風の噂で、今も学校の近くのアパートで独り暮らしをしているって聞いたことがあるわ。……確かにあのときの放送の声は賀川先生のものに似ていたけど、この学校に侵入してきた挙句に放送室の鍵を盗ってあんな放送するような人じゃないわよ」

「用務員の人に成りすまして侵入した可能性はないんですか?」

「用務員さんの身元はしっかり管理しているし、それはないわ。大体賀川先生が犯人だったとしてその理由がわからないわ。なんで今になって動いたのか、どうして射命丸さんを標的にしたのか、理由がわからないもの」

「……話はここまでにしておいた方が良いわね」

「え? どうしてですか? 住所くらい教えてもらっても」

「住所訊いたところで教えてもらえるわけないでしょ。危ないことに首を突っ込もうとしていることがバレたりしたら間違いなく止められるし、宮城先生に訊くのは得策ではないわ」

「それもそうだな……じゃあどうするんだ? 重要な情報は手に入れたし、次にやることと言えば賀川先生か、予坂梨世さんに会うくらいだろう?」

「別の先生に訊くのが一番よ。親が世話になった先生に手紙を書きたいから住所を教えてって《言いくるめ》れば教えてくれるでしょ。それか深夜の学校に忍び込んで資料を盗み見る。こういう個人情報は、どんな会社でもずっと保存されているものだからね。当然学校も該当するわ。出来るわよね、GM」

 勿論。ただし盗み見る場合は《図書館》か《経理》で判定してもらうがな。

「《言いくるめ》70、《経理》65の私に任せなさい」

「一応俺も《言いくるめ》と《経理》は取ってある。マイナーな技能だけど便利だよな《経理》。成功すれば帳簿からどういう流れで金が動いているのかわかるし、資料を簡単に纏められるし」

「ええ、あると便利よ。というわけでもうここに用はないわ。変に探って、私たちが危険なところに行こうとしていることを宮城先生に感付かれる前に退散しましょう。貴重なお話ありがとうございました宮城先生、と言いながら立ち上がって頭を下げる」

「俺も続く。ありがとうございました」

「私もお礼を言います。ありがとうございました」

「いいのよ……気をつけてね」

 と言って宮城先生はおまえさんたちを見送ったねい。

「よし。じゃあ早速賀川先生の住所の聞き込みだな。GM、俺たちの知る限り一番温厚な先生のもとに向かう」

 いいよ、そこらへんは適当に。

「じゃあその先生に話しかけよう。先生、ちょっとよろしいですか?」

「おお、どうした不動くん」

「実は俺の母がこの学校の卒業生で、当時お世話になった先生に会いたくなったと言ってて。もしよろしければ教えてくれませんか? と言いつつ《信用》で判定する。言いくるめるんじゃなくて、普段の俺の素行で勝負だ。真面目な生徒と印象つけていれば、嘘を吐いていないと判断されてもおかしくないだろう?」

 そうだな、それでいいぞ。

 遊星 《信用》65 → 11 成功

「おお、そうか。それなら構わないよ」

「よし、賀川先生の住所を手に入れたぞ」

「でかしたわ遊星。これで突撃できるわ」

「ですね……あ、GM。今何時ですか?」

 ん。えっとねい……だいたい5時半くらいだな。1時間くらい経過しているよい。

「だったらもう帰る時間ですね。探索は明日にしましょう。正直私は今すぐにでも調べに行きたいですけど、親を心配させてしまいますし、1人で行動はしたくないですからね」

「それもそうね。私は夜に弱いし、毎日9時には眠気が来ちゃうからね」

「子供だな」

「元ネタの萩村スズもそういう設定だししょうがないじゃない」

 まぁ明日でも大丈夫だよ。明日は土曜日で半日授業だしな。比較的自由に探索できる。

「よし、それじゃあ今日の探索はこれで終わりだな。念のために文を家に送ってから帰るとしよう」

「私も同行するわ。文、帰りましょう。私たちが送ってあげるから」

「今日はもう遅い。明日になったらまた一緒に調べよう」

「はい……2人とも、私のためにありがとうございます」

 んじゃあこの日の行動は終わりだねい。時間をすっ飛ばして翌日に移行するよい。




     ――To be continued… 
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