戦国異伝供書
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第二十五話 天下の政その六
「お主達二人、あと勘十郎の家もじゃ」
「その候補ですか」
「織田家の主を出す」
「この三家を定めておく、またじゃ」
信長はさらに言った。
「三つの家はどれも織田家の名の大名家とするが他の親藩はな」
「織田家の名を与えぬ」
「そうされるのですか」
「その様にお考えですか」
「津田の姓を与える」
織田家にとっては重要なこの姓をというのだ。
「そうすることとする」
「左様ですか」
「父上はその様にお考えですか」
「これからのことは」
「そうじゃ、あとこの岐阜城は奇妙に譲る」
信長はここでこのことも話した。
「やがてな、そしてわしはな」
「安土ですか」
「いよいよ築かれるとのことですが」
「あの城に入られますか」
「そう考えておる、それで奇妙よ」
また信長に声をかけた。
「お主はわしの跡を継ぐ」
「それで、ですな」
「万事抜かりのない様にな」
「わかり申した」
信忠は父に確かな声で応えた。
「その様にしていきまする」
「頼むぞ。当家の家臣達は優れた者が多い」
「あの者達の力で、ですか」
「わしの後を治めよ、どの者達も頼りになる」
そうした者達だからこそというのだ。
「あの者達の力を使ってじゃ」
「天下泰平の礎をさらにですな」
「固めよ、それはわしが今はじめておるが何十年とな」
「かけてこそ」
「定まるのじゃ」
そうしたものだというのだ。
「だからじゃ」
「ここは、ですな」
「わしの後はお主がせよ」
天下泰平を長きに渡って定める土台を築くことをというのだ。
「わかったな」
「その様に」
「頼むぞ、そこは定めておく」
「若し何かあってもですか」
「跡継ぎを決めておく、そしてじゃ」
さらに言う信長だった。
「主が幼い時はな」
「その時は」
すぐにだ、信忠がまた応えた。
「危ういですな」
「うむ、その時は織田家の者が周りを固めてじゃ」
「そうしてですか」
「治める必要があるが主が幼くともな」
「織田家が治める点かが揺るがない様にですか」
「治める仕組みを整えていく」
その様にしていくというのだ。
「確かに治める仕組みをな」
「そうしていきますか」
「これからはな、しかし幼い者が主となった時は」
まさにというのだ。
「織田家の危機、そうした時こそじゃ」
「織田家の者が、ですか」
「支えねばなりませぬか」
「そうじゃ」
信長は信雄と信孝にも答えた。
「そこはな、勘十郎もおるしな」
今は都を護っている信行のことも話に出した、彼の家からも直系が絶えた場合織田家の主を出すことも考えていることも踏まえてだ。
「あ奴の様な者に主の後見になってもらう」
「それでは、ですな」
信忠は父のその話を聞いて気付いた顔になって述べた。
「周の魯公の様な」
「ああした者を置いてな」
「後見としますか」
「うむ、勘十郎の様な者を置いてな」
そうしてとだ、信長も述べた。
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