戦国異伝供書
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第二十五話 天下の政その五
「己が正しいと思えばな」
「一本気過ぎて」
「それでしくじる者じゃ」
「人と人とのことで」
「腹の中は奇麗じゃ」
石田はこのことでも有名だ、清廉潔白で人を貶める様なことも底意地の悪いことも一切しない。そうした意味ではよき者なのだ。
「だがそれ故にな」
「かえってですな」
「生きにくい、それがじゃ」
「宇喜多家のですか」
「あ奴にも感じられる」
秀家にもとだ、信長はまた言った。
「だからな」
「そこをですか」
「何とかしていきたいと考えておる」
「そうなのですか」
「よき者だけにな」
見込んでいるだけあってというのだ。
「そうしたい、だが焦らぬ」
「じっくりとですな」
「言っていく、佐吉にもそうしているしな」
「それだけに」
「進めていく、まあ佐吉は爺の後釜になるか」
信長は笑って平手にも言った。
「口煩くてずけずけと言ってくる」
「それがしあそこまで頑固ではありませんぞ」
「どうであろうな」
やはり笑って言う信長だった。
「それは」
「確かにそれがし殿に諫言しますが」
「せねばならぬ時だけでじゃな」
「はい、あの様にずけずけと遠慮なく言わず」
「人との折り合いもじゃな」
「ずっとましだと思いまする」
時分ではそう考えている、実際に。
「違いますか」
「それを言うとな、流石に爺でもな」
「佐吉程ではありませぬな」
「うむ、だがわしは諫言はよい」
「喜んで受けられますな」
「わしだけでは気付かぬところもある」
だからだというのだ。
「間違っていると言われると有り難い」
「かえってですな」
「そこを正せるからな」
「子路ですな」
平手は孔子の弟子であったこの者の名を出した。
「過ちを指摘され喜んだとなると」
「それを正せるならばな」
「まさに子路ですな」
「そうじゃな、ではこれからもな」
「諫言を喜んで受けて」
「天下を治めていく」
新たに手に入れた国々もというだ、こう言って実際にだった。
信長は天下の政を行った、新たに手に入れた多くの国々も治めていった。そうしてだった。
国を富まし天下泰平の土台作りも進めていった、そこで彼は信忠と信雄、信孝達を集めて言っていた。
「家督は奇妙に譲り奇妙の血筋の嫡子をじゃ」
「織田家代々の主としますか」
「うむ、しかし血は時として絶える」
そうなるからとだ、信長は信忠に答えた。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「その時に備えてその際主を出す家を考えておく」
それを置くというのだ。
「若し奇妙の血筋、直径が絶えたらな」
「その時は、ですな」
「我等の家からですか」
「織田家の主、即ち天下人を出す」
その様に定めるとだ、今度は信雄と信孝に話した。
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