戦国異伝供書
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第二十四話 奥羽仕置きその十四
「そして家にも縛られぬ、だからじゃ」
「それがしを雲を言われますか」
「そうじゃ、傾奇者の決まりには従っておるがな」
それは人の道だ、慶次は確かに傾いているが決して人の道は踏み外さない。そうした男であるのだ。
「外道はせぬな」
「外道は人の道ではありませぬ」
これが慶次の返事だった。
「そして傾奇者の道でもです」
「ないからか」
「それがし外道はです」
「せぬか」
「はい」
その通りだという返事だった。
「そうしています」
「雲は雲でも考えを以てじゃな」
「傾奇者のそれを以て」
「生きておるな」
「左様です」
慶次は信長に答えた。
「それがしは」
「そして生きるか」
「ただ殿はです」
慶次は信長に笑ってこうも話した。
「それがし深く感じるものがあり」
「忠義をか」
「誓っているつもりです」
「わしにはか」
「そして織田家に」
「織田家の家臣であることはか」
「絶対です」
雲の様な傾奇者でもというのだ。
「ですから若し殿に何かあれば」
「お主もじゃな」
「何もさせませぬ。例え魔物が出てです」
信長を襲ってもというのだ。
「ご安心下さい」
「そうか、ではな」
「朱槍を振るって戦いまする」
「お主の武勇は天下でも屈指じゃ」
その槍の腕はというのだ。
「お主程強い者は本朝の歴史でもそうはおらぬわ」
「そう言って頂けますか」
「悪源太にも勝るやも知れぬ」
源義朝の長男であり恐ろしいまでの武勇で平治の乱で活躍した、その強さはこの時代でも語り継がれている程度だ。
「それだけにな」
「だからですか」
「お主のその武勇もじゃ」
「頼りにしてくれますか」
「存分にな、ではこれからもな」
「それがしをですか」
「置いておく、ただ権六達をあまり怒らせるでない」
笑ってこのことは窘めた。
「それはよいな」
「悪戯によってですか」
「そこは程々にせよ」
笑って言う信長だった、そうしたことを話してだった。彼は岐阜に戻った。そうして天下の政に励むのだった。
第二十四話 完
2018・11・1
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