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人徳?いいえモフ徳です。

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三十二匹目

 
前書き
 

 
どうやら僕は魔法関連で言えばサラブレッドらしい。

お父様はハイエルフという魔法に特化した種族だ。

お母様は妖仙玉藻の娘で仙術など自然系魔法の素養が高い。

そんな二人の間に生まれた僕が魔法が苦手な訳ない!

で、そんな僕が今何をしているかと言えば…

「その調子です御坊っちゃま。大分当たるようになりましたね」

ナイフを投げていた。

執事のメッサーがナイフ投げをしているのを見掛けたので、教えて貰っていたのだ。

「ところ御坊っちゃま。どうしてナイフ投げを教えて欲しい等と?」

「ん? ナイフたくさん持ってるからね」

魔力というのは使えば使うほど総量が増える。

まるで筋肉のように。

だから僕は魔力に余裕がある日は寝る前にディアマンタイトナイフを錬成する事にした。

さいきんはほぼ毎日錬成しているので、かなりの本数になっている。

そして、ディアマンタイトナイフ一本でだいたい僕の魔力は空になる。

魔力を空にし、ベッドに潜り込めば翌日には全快している。

子供の回復力ってすごいって改めて思う。

「そうなのですか?」

「うん。寝る前に錬成するの」

的になっている木に向かってナイフを投げた。

今投げているのはメッサーから借りた物だ。

「すごく今さらだけど、木にナイフ投げていいの?」

「タマモ様とブライ様から許可は頂いております。この木は随分昔に枯れた物の、退かすのも面倒との事です」

言われてみればもう夏だというのに葉がない。

ナイフを投げるとトスッと木に刺さった。

昔…前世の頃から物覚えはいい方だったけど、この体は以前にも増して物覚えがいい。

もはやチートだ。

投げたナイフを回収して、投擲位置に戻る。

「メッサー、これ返すね」

「もう宜しいのですか?」

メッサーがちょっとだけ寂しそうな顔をした。

「んーん。コツは掴んだからさ。自分で創ったナイフでやってみようかなって思ったんだ」

「ほう。御坊っちゃまの魔法を視れるとは」

「そんな大した物じゃないよ。
ジェネレートアイスナイフ」

氷のナイフを生成し、木に投げる。

木に当たりはしたけどパキャン…と音を発てて割れた。

「んー………」

「御坊っちゃま? 如何されましたか?」

「んー…。なんでもない」

今度はもっと力を込めてナイフを作ろう。

「ジェネレートウォータライトナイフ」

温度もかなり低い。氷は温度が低ければ低いほど結合力が強い。

まぁ、これは物質全般に言える事なんだけどね。

「いけっ!」

今度は刺さった。

「メルト」

投げたナイフを構成する水への支配権を行使して、氷を融かす。

これで的が空いた。

「ジェネレートウォータライトナイフ」

二本目を創って投げる。

金属のナイフとの違いはだいたい掴めたと思う。

あとは距離と正確性を伸ばせばいい。

毎日練習したら上手くなれるかな…?








「ジェネレートウォータライトスター」

暫く氷鉱短剣を投げる練習をしたあと手裏剣を創ってみた。

十字のでっぱりを斜めに切ったアレである。

「変わった形のブーメランですね」

メッサーが面白い物を見る目をしている。

「スローイングスターっていうんだ」

鋒の一つを持ち、縦に構える。

スナップを利かせて手裏剣を打ってみると、木に刺さりはしたが根元の方に刺さった。

「うーん……」

二枚目を打つと、横のズレはないけれども今度は上の方にささる。

「御坊っちゃま、少々離れて投げてみては?」

「うん…その方が軌道がわかるかもね」

十歩下がって構えてみる。

氷鉱手裏剣を投げると、それは微妙なカーブを描いて木に到達した。

「これは当たらないわけだ」

そう、さっきメッサーもブーメランって言ってたじゃないか。

じゃぁ曲がり方でも調べようかな。

その後何枚も何枚も氷鉱手裏剣を打って、100枚を越えた頃には好きところに打てるようになった。

手裏剣は曲がりはするけど、回転によって安定するからスローイングナイフよりは簡単だ。

でも氷ばかりで手が痛くなったので、水晶で手裏剣を創ってみようと思う。

材料は足元にたくさんある。

土から水晶を錬成するのはもう僕の十八番と言ってもいいんじゃないかってくらいやった。

家に貴族のお客さん(だいたいお婆様に用事)が来たときに見せるとウケがいい。

前は分解/整形/結合など数ステップの詠唱が必要だったけど、今ではジェネレートの詠唱だけで一発錬成できる。

「ジェネレートクリスタルスター」

水晶手裏剣を投げると、キラキラと陽光を反射して、本物の流星みたいに綺麗な画になった。

本来の暗器としては使えない気がするけど、パフォーマンスとしてはいいかもしれない。

やってるこっちも綺麗だって思えるし。

「ジェネレートトリプルクリスタルスター」

三枚創って指の間に挟む。

「トライスターショット!」

カカカ! と三枚とも木に刺さる。

「よっし!」

本当に忍者みたいだ!

あ、いや、これじゃ忍者じゃなくてNINJAか。

本物の忍者ってもっと地味だったはず。

でもいいよね! NINJA格好いいよねNINJA!

「ジェネレート! ジャイアントクリスタルスター!」

直径一メートルくらいの水晶手裏剣を創ってみた。

創ったはいいが問題が一つ。

「メッサー。これどうやってなげよう」

地面にデン! と置かれたでっかい手裏剣。

「私に聞かれましても…」

しょうがない。刃を潰そう。

一ヶ所刃を潰して、ソコを両手で持つ。

「ふぬぬぬ………うきゅ…おもい……。魔力強化」

全身に魔力を行き渡らせて無理矢理筋力を上げる。

「御坊っちゃま。無理をなされない方が…」

「大丈夫余裕余裕」

両手で大型手裏剣をぶん投げた。

が、重さで斜めになってしまった。

「あ、まずい!」

あらぬ方向へ飛んでいく手裏剣。

このままではお婆様の盆栽が!

と思った瞬間だった。

「これ、はしゃぎすぎじゃ阿呆」

という声が後ろから聞こえた。

パチン! と指パッチンの軽い音がしたかと思えば、お婆様が手裏剣を掴んで僕の後ろに立っていた。

「お、お婆様? い、いつから?」

気配はまったくしなかったのに!

「お主が手裏剣ではしゃぎ始めたときからかのぅ」

かなり最初じゃん‼

「まったく…盆栽の近くで暴れおってからに…。
儂が盆栽を心配していたら案の定じゃったな」

「タマモ様がご心配されていたのはおぼっ…あだだだだ!?いたっ痛いですタマモ様っ! っていうか当たってます当たってます!」

何か言いかけたメッサーがお婆様にヘッドロックされている。

うらやまけしからん。

あ、でもお婆様だったら胸より尻尾かも。

「ええい! お主もお主じゃメッサー! 何で止めぬのじゃ!」

「タマモ様照れ隠しならやめっ…」

「シラヌイ!」

「は、はい!」

「手裏剣をやるのは良いがきちんとコントロールしろ! よいな!」

「はい!」

お婆様はメッサーをヘッドロックしながら何処かへつれていった。

「……………寝よ」

side out















シラヌイが昼寝から起き、廊下に出るとメッサーとばったりあった。

「やくとくだったなメッサー!」

「酷い眼にあいました…」

「エナジードレイン?」

「ええ…まぁ…」

「ヘッドロックのまま?」

「はい…」

「んー…。でも精力は増えたでしょ?」

「御坊っちゃま!」

「メッサーがおこったー! きゃははは!」

とたとたとたとた、とシラヌイが駆けていく。

メッサーはシラヌイの言った事を思い出した。

「…………………………………………やわらかかった」 
 

 
後書き
手裏剣を書きたかった。
オチは二分で考えた。 
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