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魔王、時々勇者

作者:夢狐
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勇者代理

「貴様が魔王だな!」
「その通りだ、勇者よ。よく来たな、褒めてやろう」
「貴様を倒して大陸に平穏を!!」

言葉の掛け合いが終わり、まさに勇者が魔王に襲い掛かる緊迫のシーン、しかしここで思わぬ事態が起こる。

バン!

勢いよく開かれた扉に勇者も魔王もついそちらの方を見た。入って来たのは最近魔王が採用した通信係の子だった。

「ご報告があります!」
「ちょいちょい新人クーン…新人だからミスが多いのは仕方ないとして、これはないよ。よく見てよ、今から俺が勇者をボコボコにするシーンなのに台無しじゃないか」
「す、すいません…」

魔王の言葉に勇者が額に血管を浮かばせるが、それよりも読め込めないこの状況の整理が先だと、一先ず成り行きを見守る事にした。

「で?報告って?」
「は、はい!リグーナ大陸より魔王様への勇者要請です!」
「…またぁ?」

勇者要請とは、この魔王が採用した新システムで他大陸の魔王を討伐する為の勇者が居なくなった際にこの魔王が勇者代理として魔王を討伐する為の要請である。勇者が来てくれずに暇してた時にこの魔王が全大陸に公布したのだ。それからというもの各大陸から時折勇者要請が来ていた。

「リグーナ大陸はこないだ魔王討伐したばっかじゃん」
「それが…想定より早く魔王が復活したようで勇者の育成が全然間に合わなかったそうです…」
「まじぃー?…はぁ、仕方ないなぁ…リグーナ大陸は報酬恵んでくれるし、行くか」
「では許諾の知らせを送っておきます」
「よろー、あ、勇者くんさ、悪いんだけど帰ってもらうね。うーん…まぁ、一週間後位にまた来てよ!」
「な!ふざーー」シュン!!

魔王のふざけたセリフに言い返そうとした勇者の言葉を最後まで聞くことなく、魔王は勇者を勇者の故郷である始まりの村へと送り返した。ちなみに始まりの村から魔王城まではどんなに急いでも一年はかかるので、さっきの勇者が魔王城へ再登場するのは恐らく一年後だろう。

「みんな待っててねー…さて、行くかね」シュン!

手早く支度を済ませた魔王は今までの報酬の一部で手に入れた側室達に挨拶をしてからリグーナ大陸へと転移で向かった。側室達は魔王の居なくなった場所を名残惜しそうに見ている。全員が魔王にゾッコンラブのようだ。まじリア充爆ぜ…ゲフンゲフン…魔王が転移した先はリグーナ大陸南西部に位置する街ロンクルだった。今までもリグーナ大陸に転移する時はここだった。

「お、おい皆!ユディス様がいらしたぞォ!!!」
「「「「おおおおおぉぉぉ!!!」」」」

ここで唐突に判明する魔王の名前、〝ユディス〟、元々襲ってきた勇者の名前だったのを当時名前のなかった魔王が勝手に貰ったのだった。街の人間がユディスが現れたことに歓喜し、騒ぎ出す。ユディスはその間に街を見回す。今回の報酬の一部として頂いて帰る女性の選別を行っているのだ。

「ユディス様、ようこそいらっしゃいました。魔王討伐よろしくお願いします」
「…まかせろ、時に長老…あんたの後ろの娘っ子は…?」
「こちらは今回ユディス様に報酬の一つとして如何かと街のもので選りすぐった娘でございます。如何でしょうか?」
「…長老、素晴らしい!」

何故かユディスは手を叩き涙を流し始める。

「俺の趣味嗜好にぴったりの美しい女子だ…お前名は?」
「エリナと申します、ユディス様の側室になれる事とても嬉しく思っております」

エリナはうっとりした表情でユディスに対して答えた。もう心はユディスの側室の事でいっぱいなのだろう。(・д・)チッ…おっと失礼。

「うむうむ、ではサクッと魔王倒してエリナと他の報酬貰って帰るかな」
「よろしくお願いします!!」
「うむ、まかせよー」

長老の嘆願に軽く答えたユディスは魔王がいるケルマ山の頂上へと転移した。そして魔王と魔王、いや勇者代理と魔王の対決が始まるのだった… 
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