レーヴァティン
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第八十六話 票田その三
「まずは」
「それですか」
「はい、例えばです」
こう言うのだった、目の前にある自分の為のカップを見つつ。そこにはコーヒーが入っている。老貴族が飲んでいるものと同じだ。
「このコーヒーにです」
「何が入っているか」
「毒が入っているか」
それを言うのだった。
「それがわかる位の要人がなければ」
「駄目だと言われますか」
「はい」
その通りという返事だった。
「そこはです」
「毒にかかる様では」
「その程度です」
やはりこう言うのだった。
「所詮は」
「だからこそ」
「私もです」
「そう言われますか」
「はい」
その通りと言うのだった。
「今の様に」
「そうなのですね」
「そして貴方はその用心をされている」
「それならばですか」
「及第です」
「及第といいますと」
「私は貴方を支持させてもらいます」
その及第という言葉の意味が何なのかもだ、老貴族は久志に話した。
「誠意を以て。政策もそうですが」
「それ以上にですか」
「毒にも警戒するところに」
「それだけ毒にかかることは」
「この島では愚かだとされています」
「毒にかかるのなら」
「貴方の様に指輪をされ」
毒に反応し色が変わる宝玉を点けているそれを嵌めるなりしてというのだ。
「そしてです」
「銀それもミスリル銀のですね」
「はい、それで造った食器をです」
それをというのだ。
「使われることもです」
「持てるならばですね」
「当然のことですから」
「こっちもそう思いまして」
それでとだ、久志は老貴族に答えて述べた。
「もう買っています」
「さらにいいことです」
「毒殺は常ですね」
「よくあることです、生き返ることが出来ても動きは止まる」
毒にやられて死ぬなり床に伏せることになってもだ、どちらにしてもその動きは止まるということである。
「そこで遅れを取ります」
「毒殺はその意味でも効果がありますね」
「そしてその様なものにかかるなぞ」
「失態ですね」
「侮られ軽く見られるに充分な」
「だから私の用心はですか」
「私もいいと思いまして」
それでというのだ。
「認めさせてもらいました」
「左様ですか」
「ではです」
あらためてだ、老貴族は久志に述べた。
「宜しくお願いします」
「それでは」
「はい、私に出来ることなら」
「万全のことをですね」
「させて頂きます」
こう話してだ、実際にだった。
老貴族は久志と握手をした、彼は笑顔で久志に絶対に支持を約束したがこの時み久志に対してこうしたことも言った。
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