衛宮士郎の新たなる道
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第4話 忘れた筈の悪夢 その三
シーマは今日もマスターである士郎の指示で、マスター本人と別行動をしている。冬馬達の護衛だ。
「すみませんねシーマさん。今日も護衛してもらって」
「ホントはシロ兄の護衛すべきなんでしょ?」
「そうだが、シロウにとっても余にとってもお前達は大切な存在。お前達に何かあれば我らにとっても大打撃には違いないのでな。お前達を守る事こそ自分達を守る事に相違ないのだ」
「「「シーマ(さん)・・・!」」」
シーマの言葉に感動する3人。
だがシーマ本人は、今口にしたことは紛れもなく本心だったが、此処に来てなおも自分の身を疎かにするマスターたる士郎に対して呆れや憤慨を通り越して大した剛毅さだと内心で評価していた。
そこへ、あずみの引く人力車登校でやって来た英雄がシーマ達に近づいて来た。
「おおぉ、我が友トーマとその仲間たちよ。今日も変わらぬな」
「英雄こそ宜しいのですか?今は警戒してリムジンの方に一時的に変えなくても」
「確かにそれも考えはしたが、父上の留守を預かる今、九鬼極東本部の長は我なのでな。あまり警戒しすぎても民たちに伝播して、いたずらに不安や混乱に繋げてしまう行為は避けるべきだと判断して何時も通りよ」
「その英雄の決断は非常に尊いモノですが、少しは自信を労わる事も大切ですよ?」
「なに、そこは士郎にも指摘されたから大丈夫だ。だがそれでも我が友からの心配は嬉しく思うぞ」
その2人の会話から離れてシーマはあずみの横に着く。
「それで実際どうなのだ?一応、そなた以外にも護衛が陰に居るようだが?」
「やっぱりわかるか。流石にな」
「だが少なくないか?英雄の護衛の人数・・・・・・」
「それはアタイもそうしたいが、九鬼従者部隊もこの件のみに人員を裂くのも限度があってな。九鬼極東本部にいる武力を持たない重鎮への護衛も考えれば、この辺りが限界なのさ」
「なるほど・・・。そう言えば件の襲撃犯の虚無僧笠の下手人について義経達には伝えたのか?」
「その当たりも英雄様交えて他の数人共話し合ったんだが、今だあの襲撃された件は義経達も尾を引いているからな。これ以上メンタル面に追い打ちをかけるべきでは無いと言う事でまだ伝えていない。いざとなれば与一のサーヴァント、ルーラーもいるしな」
「そうか・・・」
そこで周囲に士郎達がいない事に気付くあずみ。
「あれ?衛宮にレオナルド様方は何所だ?」
「少々遅れて来る」
「良かったのか?」
「仕方あるまい。士郎は何度言っても聞きやしないのだから」
そこへ噂をすればと、士郎が追いついて来た。ただし空から。
「よっと」
無事舞い降りた士郎の首には腕を撒きつかせて後ろから抱き付いていたリザと、お姫様抱っこの状態で運搬されてきたレオナルドの姿もあった。
「やっと追いつけました」
「もう追いついて来たのか。早くないか?」
「そこは士郎さんですから。徒歩で駅まで行って此処まで来るよりも早いのでね」
「慣性力とか大丈夫でしたか?」
「一応、もしもの時の対策はありますし、そこは士郎さんですから。急激な加速により慣性力が発生しない様にかつ最速で効率よく跳躍してくれましたから」
「そう言う事だ。と言うか、いい加減離れろリザ!」
「え~、あとちょっと位いいだろう?クンクン」
そこへリザは士郎の耳の裏の匂いを嗅いできた。
「あ、こら!そんな所の匂い嗅ぐな!と言うか臭いだろ?」
「士郎が臭い訳無いし、士郎の匂いなら俺は全然構わないぞ?あ~む」
「っ、こ、今度は耳たぶを咥えるな、って!レオもスマホを取り出して撮影しようとするな!全く西欧財閥の教育はどうなってるんだっ」
「いや~、すみません。後学のためにと、つい」
一体何に生かす気なんだと頭を押さえる士郎。
それを少し後方から来ていた風間ファミリーの中に居る自他ともに認める美少女が、思わず歯噛みする。士郎とリザのイチャツキぶりを見ての感情の昂ぶりだ。
「っ!」
だから百代は気付かないフリをするが、自分では認めず判別できない感情の淀みが無意識的に淀み続けるのだった。
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