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永遠の謎

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77部分:第五話 喜びて我等はその十五


第五話 喜びて我等はその十五

「バイエルン、ひいてはミュンヘンにな」
「あの方を理解し助けられる方が」
「そうした方がミュンヘンに」
「若しいれば」
 その時はどうするか。ビスマルクが話す。
「私はできるだけの助けをしたい」
「左様ですか」
「それではその時は」
「そういうことだ。それではだ」
「はい、それでは」
「次の案件ですが」
 官僚達は話題を変えてきた。それは。
「デンマークのことですが」
「宜しいでしょうか」
「シュレスヴィヒ、ホルシュタインのことだな」
 ビスマルクは官僚達の話を受けてすぐにこう述べた。
「あの二つだな」
「そのオーストリアも介入しようとしています」
「如何されますか、それは」
「今のうちに潰しますか」
 官僚の一人が述べた。
「介入の目は」
「そうしてプロイセンだけで仕切りますか」
「どうされますか」
「いや、それは止めておこう」
 ビスマルクはオーストリアの介入を防ぐことはしないというのだった。その目の光が賢明だがどこか危険な、鷲の様な目になっていた。
 その目でだ。彼は話すのだった。
「ここはできればだ」
「できれば」
「どうされますか」
「それでは」
「共に介入しよう」
 これがビスマルクの考えであった。
「そうすればオーストリアも怒らないだろう。そして」
「そして?」
「それからは」
「それからまた仕掛ける」
 ビスマルクは言った。
「既に準備はできているのだしな」
「左様ですか」
「それでは今は」
「共にですね」
「そういうことだ。あと今日の晩餐だが」
 その時の話もだ。今するのであった。
「参謀総長と共に摂りたい」
「モルトケ閣下と」
「そうされますか」
「明日はクルップ社長と会おう」
 明日の話もするのだった。それもであった。
「わかったな。晩餐と明日はそうする」
「参謀総長とクルップ社長にですか」
「それはまた何故」
「お二人と会われるとは」
「またわかることだ」
 今はこう言うだけに留めるビスマルクだった。
「とにかくだ。今はそうするのだ」
「わかりました。それでは」
「まずは今宵の晩餐ですね」
「そうされるのですね」
「その通りだ。いいな」
 こう話してであった。ビスマルクはバイエルン王を気遣いつつもそのうえで今後の政治を考えていた。ドイツはプロイセンの彼を軸にしてだ。大きく動こうとしていた。そしてその中に王もいるのだった。


第五話   完


                  2010・12・16
 
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