戦国異伝供書
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第二十四話 奥羽仕置きその五
「妙なものがあっても」
「それでもですか」
「妙なものがあっても」
「それでもですか」
「それを退ける」
そうするというのだ。
「必ずな」
「何か近頃時折言われますな」
「天下に何かいるのではないか」
「その裏に」
「気のせいだと思うが」
それでもというのだ。
「それでもな」
「何かがいる」
「天下の裏に」
「そう感じられていますか」
「うむ、だがやはり気のせいじゃ」
またこう言った信長だった。
「このことはな」
「左様ですか」
「何者かがいる様に思うのは」
「殿のですか」
「そうであろう、勘十郎や浅井家、公方様とな」
信長はこれまでの己の周りのことも思った。
「本願寺にしてもな」
「ううむ、そう言われますと」
「妙に気になりますな」
「我等としても」
「何かがいるのでは」
「その様に」
「そうも思うが」
しかしというのだ。
「やはりそれはな」
「気のせいですか」
「勘十郎様を惑わした津々木という者も」
「気になっても」
「一介の妖しき者で天海や崇伝もじゃ」
義昭を惑わした彼等もというのだ、織田家は公儀として彼等の行方を追って処罰せんとしているが見付かっていない。
「妖僧共じゃ」
「それぞれ蠢いていた」
「そうした者達ですか」
「そうじゃ、世の裏に何かおることはな」
落ち着いて考えればというのだ。
「やはり有り得ぬわ」
「世を乱さんとする怨霊でもなけば」
「有り得ませぬな」
「怨霊の類はどうでもよい」
信長はそうした存在は意に介さない、死んで魂だけの者が何故身体もある生きている者に勝てるかと考えてだ。
「それはな、しかし世には裏表があっても」
「裏で何かが蠢き」
「そして何かしておるなぞ」
「やはり有り得ぬ」
「左様ですな」
「そうじゃ、流石にないわ」
「まあそのことはです」
ここで松永が言ってきた、するとここでも多くの者が彼を睨み据えた。
「じっくりと考えられて」
「それでか」
「動くべきならば」
「動くべきか」
「そうしたものかと」
「若し何かがおってもか」
信長がまさかと思い冷静に考えるとないと考える存在がというのだ。
「その時にか」
「対されて」
そうしてというのだ。
「ことを為されるべきかと」
「今すぐでなくてよいか」
「はい、殿は今は東北を手に入れられ」
伊達家を倒してというのだ。
「治めることを考えられるべきかと」
「それがよいか」
「それがしはそう思いまするが」
「その通りじゃな、ではな」
それではとだ、信長は松永の言葉に頷いた。そうしてだった。
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