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永遠の謎

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659部分:最終話 愛の死その十


最終話 愛の死その十

 ホルニヒに対してだ。こう返したのだった。
「わかった。それではだ」
「はい、お急ぎ下さい」
 王が湖に向けて歩きだすのを見てホルニヒは笑顔になった。
 王はそのまま湖の中に入ってゆく。小舟はさらに王に近付いていく。
 だがそれを見てだ。グッデンは焦ってだ。
 王に駆け寄る。そして何とか止めようとする。
「陛下、お待ち下さい」
「行くなというのか」
「行ってはなりません」
 まさにだ。そうだというのだ。
「行かれては。それは」
「陛下!」
 ホルニヒはそのグッデンを見て焦る。そしてだ。
 ベルリンの者に顔を向けてだ。そのうえで頼むのだった。
「どうか。もっと」
「はい、このままでは危ういです」
「早く。陛下をお助けしなければ」
 こうしてだ。小舟は王を救おうとだ。小舟を急いで岸辺にやる。そうしてだった。
 王まであと僅かの距離にまで至った。王は湖の中に下半身を完全につけていた。そうしてだった。
 小舟に手をやろうとする。しかしだった。
 グッデンはその王の服の袖を掴んだ。その時に言った。
「陛下、失礼します」
 まずは王の服の袖を掴んだこと、そしてだった。
 懐からクロロフォルムを含ませたハンカチを出す。それで王を止めようとすることにもだ。
 謝罪の言葉を述べてだ。王を何とか止めようとする。だがホルニヒも迫る。王はどちらに向かうことができるのかわからなくなっていた。しかしだった。
 この時それまで降っていた雨が止んだ。そのうえで。
 空が青く澄みわたりだ。湖の向こう側から。
 白鳥が来た。その白鳥に曳かれてだ。もう一艘小舟が来た。
 そしてその小舟に乗っているのは。彼だった。
 その彼がだ。グッデンを見た。それだけでだ。
 波が起こり彼はその中に飲み込まれた。そうしてだった。
 騎士を乗せた小舟は王の傍まで来た。そのうえで王に言ってきたのだ。
「陛下、時が来ました」
「そうか。それは今だったのか」
「はい、今です」
 それはだ。今だというのだ。
 そしてそのうえでだ。王に話すのだった。
「今がその時なのです」
「わかった。それではだ」
 王は何時しかだ。湖から出てだ。その上に浮かんでいた。
 水面の上に立ちだ。騎士と向かい合い微笑みだ。彼に言ったのである。
「行くとするか」
「その為にお迎えに参りました」
「では行くとするか」
 王は湖の上に立ったまま足を踏み出す。だがその横からだ。
 ホルニヒがだ。王に必死に言った。彼はそうしたのだ。
「陛下、この世ならざる者の言葉に惑わされてはなりません」
「いや、これは私の運命なのだ」
 そのホルニヒにだ。王は顔を向けて言ったのだ。
「あの城に行くことはだ」
「あの城とは」
「そなたもこの世での生が終わればわかる」
 このうえなく優しく、そして王がこれまで生きた中で最も満ち足りた顔での言葉だった。
「その時になればな」
「その時とは」
「私は今から私の行くべき場所に行く」
 そうしてだというのだ。
「そしてそのうえでだ」
「そのうえでとは」
「王になるのだ」
 その場所でもだ。そうなるというのだ。
 
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