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永遠の謎

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652部分:最終話 愛の死その三


最終話 愛の死その三

「御気分はどうでしょうか」
「よくはない。とはいってもだ」
「悪くもありませんか」
「この世のことはどうでもよくなっているからな」
 だからだというのだ。そしてだ。
 騎士自身に対してだ。こう尋ねたのである。
「しかし卿はだ。私の前に現れたが」
「まだその時ではありません」
 彼が務めを果たす、その時はだというのだ。
「それはまだです」
「だが近いな」
「おそらくは」
「そうだ。では今私の前に現れた理由は何だ」
「陛下が私と御会いしたいからだと思いまして」
 それ故にだというのだ。そしてだ。
 騎士はだ。王にこのことを話したのだった。
「それでなのですが」
「ホルニヒか」
「皇后様にビスマルク卿もです」
「私を愛してくれている者に」
「そして理解しておられる方々がです」
「私を助け出してくれるか」
 このこと自体には喜びを見せる王だった。しかしだった。
 それと共にだ。王は寂しい顔になりそのうえで言ったのでだった。
「だがそれはだ」
「今の陛下にとってはですか」
「王は差し伸べる手を受けるものだろうか」
「そうした意味でもですか」
「私は。卿の勧めに向かおう」
 従うのではなかった。何故なら王だからだ。
「そうさせてもらおう」
「この世の最後まで、ですね」
「そしてそれからはだ」
「はい、私は陛下にお仕えします」
 そうするとだ。騎士は王に恭しく答える。
「この世では御導きするだけですが」
「あの世界ではか」
「陛下はあの城の王になられるのですから」
「だからそうするか」
「陛下は間も無く陛下の座られる至高の座につかれます」
 王の本来の玉座にだというのだ。そのことを告げられてだ。
 王もだ。騎士に満足している顔で答えるのだった。
「そうだな。しかしだ」
「あの方々のことですか」
「ホルニヒも。ビスマルク卿もシシィも」
 その彼等のことがだ。今も気にかかり言うのだった。
「私を何としてもこの世に留めようとされる」
「ですがビスマルク卿とエリザベート様は」
「わかっておられる」
 王の理解者、それ故にだというのだ。
「私がこの世に留まらないこともだ」
「ですがそれでもですね」
「あの方々は私を愛して下さっている」
 理解してだ。そのうえでだというのだ、、
「だからこそ。わかっておられながらもだ」
「陛下を御救いしようと動かれていますね」
「有り難いことだ。だが私は」
「最早この世には」
「未練はないのだ。完全にな」
「それでは宜しいですね」
 騎士は王のその顔を見て問い返す。
「間も無くです」
「頼む。私を城にまで導いてくれ」
「お任せ下さい。あの城は限られた者しか行き来できませぬ故」
「まずは入りだな」
「左様です。それからです」
「私もまたあの城を行き来できるな」
「左様です。玉座に座られてからです」
 全てはそれからだった。王のはじまりは。
 そのことを話してだった。そうしてだ。
 
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