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永遠の謎

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650部分:最終話 愛の死その一


最終話 愛の死その一

                   最終話  愛の死
 ホルニヒはようやく城に着いた。その正門においてだ。
 護りを固めている衛兵達にだ。慌てて問うたのである。
「陛下は」
「これはホルニヒ殿」
「来られたのですか」
「はい、遅れました」
 こうホルニヒが答えるとだ。衛兵達は。
 苦渋に満ちた顔になりだ。そしてこう述べたのである。
「残念ですが」
「一足先にです」
「グッデン博士達が来られました」
「それでは。陛下は」
「はい・・・・・・」
 こうだ。苦い顔でホルニヒに答えるのである。
「既にお身柄を拘束されているかと」
「彼等は玉座に向かいました」
「我々も最早どうすることも」
 それだけ公表されたことが大きかった。彼等にしてもそうなっては動くことができなくなったのだ。それでだ。王も護れなかった。そのことを苦渋に満ちた顔で述べたのである。
 その彼等の話を受けてだ。ホルニヒもだ。
 肩を落としてだ。そして言ったのである。
「わかりました。しかしです」
「もう城に入られてもです」
「どうにもなりません」
 衛兵達は城に入ろうとするホルニヒを止めるしかなかった。そうしてだ。
 そのホルニヒにだ。言ったのである。
「今行っても無駄です」
「かえってホルニヒ殿が危険です」
「どうかここは御自重を」
「お願いできるでしょうか」
「この身のことなぞ。しかし」
 ホルニヒにはわかった。今行ってもだ。
 何にもならない、かえって彼が捕らえられてしまう。それでは何にもならなかった。
 そうしてだ。ここでだった。
 門を馬車が出た。その馬車の窓は見えない。白いカーテンで覆われている。
 しかしそのカーテンの向こうにいるのが誰かを察してだ。彼は言った。
「陛下・・・・・・」
「我々のできることは終わりました」
「どうしようもありません」
 衛兵達もだ。肩を落としてだ。
 そのうえでだ。ホルニヒに告げたのである。
「ですからホルニヒ殿も」
「御帰り下さい」
「そうですか」
「はい、貴方は充分過ぎる程忠義を示されました」
「誰も貴方を批判しません」
 慰めの言葉だった。衛兵達もそうした意味でホルニヒを敬愛していたのだ。
 だがその慰めや敬愛を受けてもだった。今のホルニヒは。
 どうしても諦められなかった。しかしだった。
 最早どうにもならないことは明らかだった。それでだ。
 唇を噛み締めつつだ。衛兵達に述べた。
「わかりました。それでは」
「御疲れ様でした」
「貴方に幸あらんことを」
 兵士達は本心は隠した。しかしだった。
 ホルニヒには心からの敬意と気遣いを以てだ。彼を帰した。その彼等の心を受けてはだ。
 ホルニヒも下がるしかなかった。こうしてだ。
 彼は城の前から去った。そうして馬に乗り項垂れた顔で帰り道を暫く進んでいるとだ。
 その彼の前にだ。黒い服の男達が出て来た。そして彼に問うのだった。
「リヒャルト=ホルニヒさんですね」
「バイエルン王の傍におられた」
「はい、そうです」
 その通りだと答えるホルニヒだった。そのうえでだ。
 彼は黒い服の男達、誰もが帽子を深く被り顔を隠している。その彼等に対してだ。
 警戒する顔でだ。尋ねたのだった。
「ですが貴方達は一体」
「はい、ドイツ帝国の者です」
「ベルリンから来ました」
 まずはこう答える彼等だった。ホルニヒに対して帽子を取らず敬礼で応える。
「バイエルン王を御救いする為に来ました」
「そうした意味で貴方の味方です」
「ビスマルク卿からの御命令でしょうか」
 ビスマルクが王に好意を持っていることはホルニヒもわかっていた。これまでの態度や王への評価でだ。だからこのことをすぐに察して問うたのである。
 
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