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永遠の謎

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648部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその二十五


第三十六話 大きな薪を積み上げその二十五

「彼等についてはだ」
「しかしです。彼等は」
「ホルニヒか」
「他にもおられます」
「わかっている。彼等のこともな」
 王の表情がやや変わった。少しだけだが晴れた。
 その僅かな晴れの中でだ。王は騎士に今度はこんなことを話したのである。
「私を理解してくれる方々のこともまた」
「ビスマルク卿、それに」
「シシィだ」
「あの方々は陛下をお助けしようとしています」
 この動きをだ。騎士は既に知っていた。王もまただ、察していた。
 騎士はこのことについてだ。王に問うたのである。
「それについてはどうされますか」
「私に彼等のその差し伸べる手をか」
「受けられますか」
 具体的にはだ。この世の玉座に留まるべきかどうかというのだ。
「あの方々は陛下を御護りしますが」
「有り難いことだ」
 彼等の好意、そのことについてはだというのだ。
 王も感謝の意を述べる。それは否定できなかった。
 しかしだ。それと共にだった。王は騎士に語るのだった。
「だが、それはだ」
「この世に留まられることです」
 騎士もだ。嘘を言わなかった。王に真実を述べた。
「そのままそうなります」
「そうだな。それはだ」
「陛下にとっては最早」
「何の意味もないことだ。私はこの世で果たすべきことを終えようとしているのだから」
「では彼等の手は」
「迷いはある」
 わかっていてもだった。それでもだ。
「私を理解してくれる方々のその手を受けないことはだ」
「それもまた、ですね」
「気が引ける」
「ビスマルク卿は確かに政治的な立場は違います」
 騎士はまずは彼から話した。
「ですがそれでもです」
「そうだ。私を理解してくれてそのうえで助けてくれてきた」
「それは今もです」
「あの方の理解は心からのものだ」
 ビスマルクだからこそできるものだった。それはだ。
「有り難い。それを邪険に思ったことは一度もない」
「そしてですね」
「シシィは。心の奥底から理解し合っている」
 皇后についてはそうだった。御互いにだ。
「鷲と鴎。だからだ」
「そうです。あの方についてはです」
「共にだな」
「はい、御二人は重なり合う部分が多いのです」
「私達は。彼女がいてくれて非常に有り難い」
 しかしだった。それでもだったのだ。
「だがそれでもだ」
「やはりですね」
「私のするべきことは終わった」
 この考えは変わらなかった。そうしてだった。
 王はだ。騎士に話したのだった。
「卿が来たその時にだ」
「畏まりました。それでは」
「今は去るのだな」
 一礼した騎士にだ。静かに述べた。
「そしてだな」
「その時にまた来ますので」
「待っている。それではだ」
「はい、それでは」
 こうしてだった。彼等は今は別れた。王は騎士が姿を消すのを見届けてからだ。そのうえでだ。
 
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