永遠の謎
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642部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその十九
第三十六話 大きな薪を積み上げその十九
こうだ。王の側近達に命じたのだった。
「城や麓の村に集っている民達に伝えなさい」
「何とでしょうか」
「すぐに解散するように」
これが王が彼等に伝えることだった。
「これ以上私の為に動けば危害が及びます」
「軍や警察によってですか」
「そうです。忠義の者の血を謀反人達によって流させる訳にはいきません」
だからだというのだ。
「ですから。いいですね」
「それでは」
「はい、解散させるのです」
またこう命じる王だった。
「宜しいですね」
「ですがそれでは」
「陛下が」
「彼等を私の為に犠牲にしてはなりません」
その忠義の者達を想っての言葉だった。
「気持ちだけ受け取らせてもらいます」
「陛下、では陛下は」
「最早」
「貴方達も私に仕えただけです」
今度は側近達にも言うのだった。
「それだけです」
「いえ、我々はです」
「陛下に対してです」
「あくまです」
「いえ、仕えただけです」
彼等にも危害が及ばない様にだ。王は言うのだった。
「それだけですから」
「それ故にですか」
「我等もまた」
「貴方達は義務を務めているだけです」
王だけがだ。全てを追うというのだ。
「だからです」
「我々に罪はない」
「そう仰って頂けるのですか」
「こう言うのです。問い詰められたら」
その場合についてもだ。王は彼等に話すのだった。
「私が狂気に陥っていたと」
「しかしそれでは陛下だけがです」
「責を問われてです」
「責められますが」
「構いません」
そうなってもいいと言うのだ。そうしてだ。
そしてそれが何故かもだ。王は話した。
「真実は公になるものですから」
「陛下は狂ってはおられない」
「そのことがですね」
「偽りなら進んで受けましょう」
今はそうした考えに至っていた。旅の中で。
「だからです」
「では。我々は」
「陛下に」
「これまでのことで充分です」
自分に仕えて尽くしてくれた。それだけで、だというのだ。
「有り難うございました。それでは」
「我々はあくまで、です」
「陛下のことは」
真実を語ると言うのだ。例え何があっても。
それが彼等の忠誠であった。王もその忠誠を見た。
しかし今は微笑みだ。こう静かに言うだけであった。
「いいのです。これで」
「宜しいのですか、それで」
「陛下は」
「では。ご機嫌よう」
別れの言葉をだ。自分から出した。
「お幸せに」
こう言って彼等を下がらせようとする。だがここでだ。
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