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永遠の謎

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641部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその十八


第三十六話 大きな薪を積み上げその十八

「矛盾していようともそれでもだ」
「ではあの方をですか」
「今より」
「そういうことだ。しかし矛盾か」
 その矛盾自体についてだ。ビスマルクは言及した。
 そのうえでだ。言うことはというと。
「あの方はその矛盾に我慢できない方なのだ」
「バイエルン王はですか」
「そうした方なのですか」
「そうだ。人がどうしても生み出しそれと共に生きる矛盾」
 そうした意味でまさに人間そのものだというのだ。
 矛盾についてだ。ビスマルクは深く考えそのうえで側近達に話していく。王と矛盾、その関係は芸術でありそれと共に哲学だった。
「そのことに純粋であり過ぎるが故にだ」
「耐えられなかった」
「あの方は」
「耐えられるのではないのですか?」
「いや、耐えられなかったのだ」
 言葉は現在形ではなく過去形であるというのだ。
「あの方はだ。しかしだ」
「しかしといいますと」
「神は時として。まことに残酷だ」
 またしても哲学だった。ビスマルクの言葉は。
「あの方に端整な男性の身体を与え御心は女性にされた」
「何度か仰っていますが」
「そうなるのですか」
「そうだ。そして類稀なる王の資質と聡明さを与えられながらあまりにも繊細な御心も与えられた。この世の醜さに耐えられないまでの」
「だからこそ今のあの方があるのですか」
「繊細な女性であるが故に」
「そのことがあまりにもわかりにくい」
 王の心、その本質が女性であることはだというのだ。
「そしてパルジファルもだ」
「あの聖杯の主となるですね」
「そうだ。彼は愛による救済を行う」 
 ワーグナーにおける重要なテーマだ。そしてそれを為すのは。
「女性なのだ。その役割は」
「あっ・・・・・・だからですか」
「つまりパルジファルもまたですか」
「あの騎士もまた」
「そうだ。心は、本質は女性なのだ」
 王と同じくだというのだ。それはだ。
「だからあの方はパルジファルなのだ」
「聖杯城の王となる」
「その英雄なのですか」
「ワーグナーは全てをわかっていた」
 王とワーグナーは離すことができない。どうした状況であっても。
「だからあの方をパルジファルと呼んだのだ」
「そういうことだったのですか」
「今私はようやくあの方が少しだけわかった様な気がします」
「私もです」
「だとすれば有り難い」
 王の理解者が増える、そのことはいいというのだ。
 そしてだ。その話からだった。ビスマルクは確かに言った。
「ではいいな」
「はい、電報を出します」
「極秘に」
 側近達も応える。こうしてだった。 
 彼もまた王を救おうと決意した。その為に動くのだった。王を救う為に王の理解者が動いていた。その救われようとしている王はというと。
 ノイシュバンシュタイン城に留まっていた。そのうえでだ。
 ミュンヘンからの公表を聞いた。それを聞いてだ。
 
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