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この世の最後に

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第二章

「だからだ」
「ここは、ですか」
「私達に任せることだ」
 こう医師に言うのだった。
「必ず彼女の沈んだ気持ちをだ」
「それをですか」
「笑顔に変えてみせよう」
「具体的には」
「それはこれからだ、だが私のやることに口出ししないでもらいたい」
 室生が出す条件はこのことだった。
「いいな」
「それでは」
 医師も少女が助かるのならと約束した、こうしてだった。
 室生は落ち込んでいる少女、田沢ウメのその心を笑顔が出るものにすべく立ち上がることにした。だが。
 その彼にだ、坂口は二人で夕食の鱈鍋を食べている時に尋ねた。
「なあ、おみゃあさん言ったぎゃな」
「彼女を笑顔にするとか」
「言っただぎゃな」
「言った」
 その通りだとだ、室生は坂口に陸奥の酒を飲みつつ答えた。
「それがどうした」
「おみゃあさんお笑い出来るだぎゃ」
「出来る様に見えるか」
「見えないから聞いているぎゃ」
 鍋の中の白菜や葱を食べつつだ、坂口は答えた。
「そうだがや」
「そうだな、しかしだ」
「安心していいだがや」
「そうは見えてもな」
 それでもというのだ。
「私は彼女を笑顔に出来る自信はある」
「そうだがや」
「一枚の木の葉の話があるな」
「ああ、アメリカの話だがや」
「あの物語でヒロインは画家が描いた木の葉に励まされて生きた」
「それでだぎゃ」
「医師とも話したが病は気からだ」
 身体もそうだが心からなる部分も多いというのだ。
「だからだ」
「落ち込むより笑顔だぎゃな」
「元々助かるというしな」
 それならというのだ。
「ここは是非だ」
「一肌脱いでだぎゃか」
「助ける、ではな」
「これからだぎゃ」
「私は彼女を救う、おそらくこれが神託だしな」
 このこともあってとだ、こう話してだった。
 室生はこの日は鍋と酒それに風呂、温泉のそれを楽しんでだ。この日は寝た。そして翌朝にだった。
 坂口と共にウメの病室に来てだ、こう言った。
「私達は旅の冒険者だが」
「冒険者の人達がどうして私のところに」
「君の話を聞いた、胸の病だな」
「そのせいで間もなく」 
 自分が思っていることをだ、ウメは室生に話した。
「死ぬんですよね、私」
「いや、君は死なない」
 室生はウメの枕元で答えた。
「安心しろ」
「そうでしょうか」
「私は嘘を言わない」
 決してという言葉での返事だった。
「君の寿命はあと九十年はある」
「けれど寿命も変わりますよね」
「そうだが君は違う」
 今のウメはというのだ。
「気をしっかりと持つことだ、それでだ」
「それでとは」
「君はこんな話を知っているか」
 ここでだ、室生は。
 一つの話をはじめた、坂口はその話を聞いて言った。
「おい、その話は」
「落語だ」
 室生は坂口に淡々とした顔で述べた。 
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