神の仲人
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第四章
「そして母を殺したこともだ」
「父親の仇でしたね」
「アガメムノンのな」
「では」
「元々肉親への愛情は強い」
「はい、一族へのそれも」
「そして思いやりもありだ」
異常なまでに憎悪の念が深く執念深いがだ、エレクトラにはそうした一面も確かに存在しているというのだ。
「また人を見捨てない」
「決して」
「血縁の者達はそれを知っている」
「だから彼女の妹もです」
「復讐に燃える姉を気遣っていたな」
エレクトラの妹もだ。
「そうしていた、では」
「そうです、血縁の者の中にいます」
「伴侶となるべき者はか」
「そうなります」
「これまで気付いていなかった」
全くとだ、アポロンはアフロディーテに答えた。
「いや、まさかだ」
「血縁の中にですね」
「そうした者がいるとはな」
「あの復讐を見たのですから」
「血縁の者達が最も恐れていると考えていた」
そうだったというのだ。
「私は。しかし」
「血縁、傍にいる者達だからこそです」
「彼女のその面を知っていてな」
「よい面をです」
「両方をか」
「知っているのです」
「そうだな」
アポロンはアフロディーテの言葉に頷いた。
「まさに」
「それではです」
「血縁の者を探そう」
エレクトラをその恐ろしい面だけでなくよい面も知ったうえで理解している者をだ、アポロンも頷いた。そうしてだった。
彼はすぐにエレクトラの血縁者でるミュケナイの王族達で彼女の理解者達を探した。そしてそのうえでだった。
彼はある者を見付けた、それはピュラデスという者だった。彼はミュケナイの王族の中でもとりわけ学問がありしかも人格円満な者だった。その彼にだ。
アポロンは自ら出向きそのうえで彼にエレクトラのことを話した、彼はエレクトラの従兄にあたる者だった。
そしてその彼にだ、アポロンは言った。黒い髪の毛を伸ばし髭のない整った顔立ちをした青年だった。
「そなたに頼みたいことがある」
「それは」
「エレクトラのことだが」
「彼女のことですか」
「これまで色々なことがあったが」
しかしというのだ。
「貴殿さえよければな」
「彼女をですか」
「受け入れてくれるか」
ピュラデスの黒い深い叡智を讃えた瞳で見つつ頼んだ。
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