真の学者
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第三章
「あれや」
「ああいうのがあったんやな」
「大阪にもな。それで軍隊にもな」
「ああした場所があったんやな」
「遊郭がな、軍隊は男ばかりやったからな」
余計にというのだ。
「そうした場所がいつもあったんや」
「それで売られた人とかがかいな」
「そうや、当時はそうしたことも普通やったんや」
売春が合法とされていたというのだ。
「そやからな」
「慰安婦は」
「そんなん攫って集めんでもな」
それこそというのだ。
「幾らでも集まった、そら人買いにはタチの悪い奴もおって」
「それが問題やったんやな」
「そうした奴は取り締まられててな」
それでというのだ。
「注意もされていたんや」
「そやったんや」
「軍が関与してたって言うんやな」
祖父からこのことを言って来た。
「そやな」
「大学の教授も言ってたわ」
「それが新聞で載ってたって言うんやな」
「そやねん」
愛衣はその通りだと答えた。
「教授そのことも言ったわ」
「それは悪質な業者がおるから注意しろってことやろ」
「関与でもやね」
「悪質な業者やぞ」
所謂人買いのそれをというのだ。
「そこをわかってないでどうするんや」
「いい関与もあったんやな」
「そや、御前もそうした人買いの話は知ってるやろ」
「ええと、時代劇とかにも出るし」
時代劇ではやたら出て来る連中だ、主人公達に成敗されお白洲では打ち首獄門を言われるのが常だ。
「山椒大夫でもな」
「山椒大夫?」
「森鴎外の小説やけど」
「わしは知らんわ」
祖父も学はない、小学校を卒業しただけだ。この辺り勉強は全く出来なかった愛衣の父と同じだろうか。
「それはな、しかしな」
「悪い人買いがおって」
「それでや」
そのことがあってというのだ。
「軍の方も気をつけてた、娼婦は娼婦やが」
「それでもやったんやね」
「ちゃんとした集め方は気をつけてた」
「軍が無理に女の人攫ったりしてなかったんやな」
「そんな必要ないのは今言うたやろ」
確かにというのだ。
「業者から調達出来るんやぞ」
「それやったら」
「人攫ってまで集めるか」
「そんな必要ないわ」
「そやろ、それに素人さん無理に集めてや」
そうしたらというのだ。
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