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永遠の謎

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632部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその九


第三十六話 大きな薪を積み上げその九

「では。宜しいですね」
「まずいですぞ、これは」
 グッデンがホルンシュタインに囁く。
「このままでは陛下の保護どころか」
「ええ、我々がですね」
「伯爵、どうされますか」
 ホルンシュタインの爵位を出して問う。
「ここは」
「このままでは完全に取り囲まれてしまいます」
 そうなればどうなるか。それは自明の理だった。
「ですからここはです」
「一時にしてもですね」
「退きましょう」
 三十六計逃げるに、だった。
「そうするしかありません」
「そうしてあらためてですね」
「朝まで我慢すればいいのです」
 危機にあるがそれでもだ。時間は彼等の味方だというのだ。
「ですから一旦はです」
「はい、それでは」
 こうしてだ。彼等はまだ空いていた後ろから慌てて逃げ出し馬車に乗り込みだ。城の正門の前を後にした。そうして一旦村に戻った。城の麓の村だ。
 だがそこでもだ。村人に軍の者達、王に忠誠を誓う者達がいてだ。彼等を囲みだ。
「陛下からの勅命です」
「何っ、もうか」
「もうここに手配を」
「貴方達を謀反人として捕らえよとのことです」
 こうだ。将校が彼等に王の令状を見せて告げる。
「何故こんなに早く村に」
「まさか我等が正門にいる時に既に手を回されていたのか」
「陛下がそうされたのか」
「どうやらその様ですね」
 同志達にだ。ホルンシュタインは苦い顔で述べた。
「流石ですね。聡明さは衰えてはいません」
「しかしこれでは我々は」
「捕らえられます」
「ここはどうすれば」
「仕方ありませんな」
 苦い顔だがそれでも何処かに余裕を見せてだ。言ったホルンシュタインだった。
 そしてだ。仲間達にこう告げたのである。
「ここはです」
「撤退ですか、さらに」
「ミュンヘンまで」
「いえ、完全に囲まれています」 
 見ればそうなっていた。彼等は完全に包囲さている。軍人達も村人達も皆それぞれ武器を手にしている。それではとてもだった。
 逃げられない。ホルンシュタインはそう判断して言うのだった。
「ここは大人しくしましょう」
「捕まるというのですか」
「そうすると」
「はい、そうしましょう」
 これがホルンシュタインの言葉だった。
「そうするしかありません」
「ですがそれでは」
「我々は」
「いえ、朝までですから」
 彼等にもこう言うホルンシュタインだった。
「朝までの我慢ですよ」
「朝までとは」
「まさか」
「はい、そのまさかです」
 苦しい中にも余裕を見せたままだ。ホルンシュタインは話す。
「ここはです」
「その御言葉、信じさせてもらいます」
「では」
 彼等も逃げられないことはわかった。それではだった。
 下手に歯向かうことを止めた。そうしてだ。
 彼等は捕らえられ村の宿の一室に集めて監禁された。その報はすぐに王の下にも届けられた。
 将校がだ。明るい声で王に告げる。
 
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