永遠の謎
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624部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその一
第三十六話 大きな薪を積み上げその一
第三十六話 大きな薪を積み上げ
遂にだ。時が迫ろうとしていた。
ウィーンの宮殿、シェーンブルンにおいてその話を聞いた皇后はだ。黄金がちりばめられたその中においてだ。すぐにその整った顔を強張らせた。
そしてだ。こう周囲に言うのだった。
「旅に出ます」
「今度は何処でしょうか」
「何処に赴かれるのでしょうか」
「バイエルンです」
そこだとだ。周囲に答えたのである。
「そこに向かいます。ですが」
「ですが?」
「ですがといいますと」
「このことは内密です」
公にはしないというのだ。今回の旅は。
そしてだ。皇后はさらに言った。
「公にはザクセンかハンガリーに行ったとでもお話下さい」
「何故公にされないのでしょうか」
何も知らない、皇后から少し離れた位置にいる従者が皇后に問うた。
「それはどうしてでしょうか」
「言えません。ですが皇帝陛下にもお話下さい」
やましいことはない、だからこそ言えることだった。
「鷲を救いに向かいます」
「鷲?」
「鷲といいますと」
「皇帝陛下はこれでおわかりになって頂けます」
夫であるオーストリア皇帝、フランツ=ヨーゼフ帝はだ。そうだというのだ。
「ですからその様に」
「わかりました。では今すぐにですか」
「そうです。今すぐにです」
また言う皇后だった。そしてだ。
前に出ようとするところでだ。ふと足を止めてだ。
周囲にだ。こうも言ったのである。
「ただ。ベルリンのビスマルク卿ですが」
「?ビスマルク卿ですか」
「あの方が何か」
「あの方にもお伝え下さい」
次の言葉はこうしたものだった。
「バイエルンでは。お互いに鷲を救いましょうと」
「あのビスマルク卿ですか」
「その様にですか」
今はドイツとオーストリアは友好的な関係にある。だがそれでも前の戦争の遺恨はある。だから周囲も皇后の今の言葉には理解が及ばなかった。
しかし皇后はだ。まだ言うのだった。
「そうです。あの方にもそれだけをお伝え下さい」
「鷲を救う、ですか」
「それだけを」
「ではお願いします」
ビスマルクのことも話してだ。皇后は足早に宮廷を去り旅道具が揃うとすぐに馬車に乗りだ。ウィーンを後にしたのだった。その行く先はカモフラージュをして。
そして皇后の話を受けたビスマルクもだ。すぐにだった。
側近達にだ。強張った顔で話した。
「ではだ」
「何をされるのですか、一体」
「鷲を救うと来ていますが」
「その通りだ。私は清らかな鷲をお救いするのだ」
彼もまた言うのだった。
「そうする。だからすぐにバイエルンに人を送れ」
「軍の者に官僚をですね」
「とりわけ俊敏な者達を」
「そうだ。そしてオーストリア皇后と必要とあらば協力してだ」
そしてだというのだ。
「あの方をお救いするのだ」
「あの方といいますと」
「まさかとは思いますが」
「今は言わない。このことは内密にだ」
公にはしないというのだ。彼もまただ。
「わかったな。それではだ」
「はい、わかりました」
「それでは」
こうしてだった。ベルリンでも動きがあった。その中でだ。
ビスマルクはバイエルン政府にだ。あることを伝えた。それを受けてだ。
宰相のルッツは困惑した顔になりだ。閣僚達や宮廷の要人達にだ。こう言うのだった。
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