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永遠の謎

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588部分:第三十四話 夜と霧とその十一


第三十四話 夜と霧とその十一

「持って来てもらいたい」
「わかりました。それでは」
「花と美酒は似ています」
 ホルニヒに命じ終え彼がその場を去ってからだ。王は皇后に話した。
「心を癒してくれます」
「そうですね。どちらも」
「ではどちらも楽しみましょう」
 こう皇后をその楽しみに誘うのだった。
「是非共」
「はい、それでは」
 こうした話をしてだった。二人は船の中でその美酒と花も楽しむのだった。このバイエルンでの話はウィーンにいるオーストリア皇帝の耳にも伝わった。
 しかし皇帝はだ。こう言うだけだった。
「ではそれでいい」
「皇后様が男性の方と会われてもですか」
「それでもなんですか」
「そうだ。シシィは男性には興味がない」
 自分以外のだ。少なくとも彼女は奔放ではないのだ。
「そしてバイエルン王だからな」
「女性を愛されることはない」
「そうした方だからですね」
「過ちは有り得ない」
 不貞、それはだというのだ。
「だからいいのだ」
「そうですね。言われてみればです」
「皇后様とバイエルン王は従姉弟同士でもあられますし」
「そうしたことは」
「私にはわかるのだ」
 皇帝もまただ。ここでは深い洞察の目になった。
 そうしてだ。周りの者達に話すのである。
「旅はシシィにとって癒しでありだ」
「そしてですか」
「さらに」
「バイエルン王にとって築城もまただ」
「それなのだといいますか」
「そうだ。あの二人はやはり似ている」
 皇帝にもわかってきた。そのことが。
「鷲、そして鴎だったな」
「そう呼び合われているとか」
「御互いのお手紙の中で」
「その様だな。鳥か」
 その鳥についてもだ。皇帝は思索を向けた。
「あの二人は空を飛ぶ鳥なのか」
「自由を求めておられるのでしょうか」
 側近の一人がこう述べた。
「それでなのでしょうか」
「自由か。そうだろうな」
 皇帝は彼の言葉に遠い目になった。
「皇后もバイエルン王もだ」
「御二人共ですか」
「自由を望まれているのですか」
「本質的に自由の場にあるべきなのだ」
 それが二人だというのだ。
「私とは違ってだ」
「確かに。このウィーンはです」
「宮廷は」
「自由はない」
 それはなかった。本質的に宮廷はそうだがウィーンはとりわけだ。
 ハプスブルク家、古くそして栄えているからこそだ。そうなっているのだ。
 それでだ。皇帝も言うのだった。
「私は生まれた頃からその中にいるがだ」
「皇后様は違いますね」
「あの方は」
「そうだ。生まれついて自由の中にいた」
 だがオーストリア皇后になりだ。それでそうなったというのだ。
 
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